第95話 だせぇ

 しばらく待っていると、バラバラとみんなが集まってきた。


 筑間先輩は、全体的にダボッとしたストリート系ファッション。さすがにバスケットボールは持ってきていないが、ボールを小脇に抱えていても違和感がない。むしろ、ボールがない方が違和感があるくらいである。

 吉祥院さんは、水色のキャミソールに白いミニスカート。髪もサイドテールにまとめており、夏らしい爽やかな印象だ。


 そして、越後さんは――


「「だせぇ……」」

「いきなり酷くない!?」


 つい漏れてしまった本音に越後さんは涙目で抗議する。

 白地に小さなイチゴが散りばめられたよれよれのTシャツに、色落ちして白くなったジーンズ。ボロボロのスニーカーはブランドのロゴが剝がれかけという始末である。


「恵まれたプロポーションの無駄使い」

「これで外に出る勇気」

「突然成長した女児」

「こいつら容赦なさすぎる!」


 だって、本当にダサいんだもの。

 顔も美人系で胸がないこと以外はスタイルも抜群なのにこれはないだろう。

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだ生徒会長。いや、姉に対して反発している越後さんじゃ生徒会長のすすめたファッションは受け入れないだろう。


「リラ、一億歩譲って服はいいかもしれないけどノーメイクはないでしょ」

「メイク?」

「火を始めて見た原始人みたいなリアクションやめて」


 英さんはため息をついてこめかみを抑えた。

 これが未来じゃ人気のモデルの姿か……。


『ちなみにリラにメイクやファッションを仕込んだのはあたしよ』


 唖然とする僕にモモはそんなことを囁いてきた。ナイスだモモ。さすがにこれはそのままにはしておけない。

 今回の時間軸でも英さんにそこら辺は任せるとしよう。


「凛桜ちゃんは相変わらずだなぁ」


 僕達のやり取りを見て筑間先輩は苦笑していた。

 相変わらず、ということは以前にも越後さんの私服を見る機会があったのだろうか。

 

 それから筑間先輩は話題を変えるように告げる。


「にしても、何だかんだでお台場は久々だな」

「意外ですね。筑間先輩ならしょっちゅう来てると思いましたけど」

「バカだな、ツクモ。筑間先輩がいるとしたら原宿っしょ?」

「驚くほどしっくりきた」


 確かに筑間先輩なら原宿にいそうだ。私服もストリート系だし。


「白君、筑間先輩。ちょっと待っててもらえます?」


 英さんはそう言うと、越後さんの手を引いて歩き出す。


「吉祥院さんもついてきて!」

「もちのろーん!」


 そして、吉祥院さんを含めた三人でショップの中に入って行く。

 あの中で越後さんは二人の着せ替え人形になるのだろう。


 僕と筑間先輩は三人が戻ってくるまで、しばらく暇を潰すことになった。

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