3章

第一被害者

 次の日、また今日も騒がれるのかと憂鬱になりながら、学校へ向かった。相変わらず周囲の視線が刺さるが、気にせず進むと待ち合わせ場所にあかねと桃香を見つけて手を振った。

「あかね、桃香、おはよー」

 わたしの姿を見ると、二人は血相を変えてわたしの側に近寄った。

「明良! ニュース見た⁉︎」

「ニュース? ああ、犯人の素性と犯行理由のやつ? 腹立つよね、あれー」

「違う! 昨日、明良と同じく誘拐された子が殺されたんだよ‼︎」

「……は?」

 あかねが何を言っているのか分からない。誰が殺されたって?

「ほら、これ見て!」

 桃香が自身のスマホをわたしに見せた。

『昨夜未明、路地裏で男子高校生が倒れているのを近所の方が発見しました。男子高校生は市内に住んでいる玉木剛毅と分かり、頭を拳銃で撃たれたことが致命傷となり死亡が確認され──』

 淡々と語るニュースキャスターの隣には現場であろう映像と、玉木の写真が映されている。

「嘘、どうして玉木が?」

 わたしがそう呟くと、スマホから着信が鳴り始めた。慌てて確認すると、そこに田山の名前が書かれていて、わたしはすぐに通話をオンにした。

「もしもし、田山?」

「ねえ、新田さん、ニュース見た⁉︎ 嘘だよね、玉木が死んだって……」

 わたしが尋ねると、田山は泣いているのか、上ずった声で聞いてきた。

「本当だと思うよ。これ全国ニュースだし」

 わたしが桃花のスマホのニュースを見ながら告げると、田山は声を上げてさらに泣き出した。

「何で? 昨日普通に話してたじゃん。それに頭を拳銃で撃たれたって」

「考えるだけでもキツイね」

 わたしの頭の中で仮面の男の死に顔が玉木にすり替わり、唇を噛みしめる。

「……ねぇ、ちょっとあのメンバーで集まらない? わたし、気になることがあるの」

「うん。羽間に声を掛けてくる」

 田山の提案に頷くと、スマホの通話を切って、学校へ走り出す。

「ちょっと、明良! どうしたの⁉︎」

「急用を思い出したから先に行くね! あと今日は休むから、先生に適当な理由言っといて!」

「はぁ⁉︎」

 学校に向かって走っているのに、休むという矛盾な事を言っているわたしに、あかねが意味が分からないと素っ頓狂な声を上げた。

 わたしらあかねたちに心の中で謝罪しつつ、羽間のスマホに電話する。数コールの後、羽間が出てきた。

「はい、羽間です」

「羽間、今どこにいる?」

「今は学校の教室にいますけど、何かありましたか?」

「玉木の事、知ってる?」

「あ、ええ。朝のニュースで見ました」

「それなら話が早い。田山が誘拐メンバーを集めて話がしたいって」

「田山さんが?」

「羽間を連れてくるって言ったんだけど、行くよね?」

「は、はい。なんとなくですけど、田山さんが言いたいことが分かりますし」

「言いたいこと?」

「行けば分かりますよ」

「よく分からないけど、わたしも学校に行くから合流しよう」

「分かりました。校門前で待っています」

 そこで羽間との通話を終えて、わたしは学校へ走って行く。学校に到着すると、約束通り羽間が校門前で待っていて、わたしに気付くと頭を下げて挨拶をした。

「おはようございます、新田さん」

「おはよう。じゃあ、行こうか」

「行こうって、集合場所は聞いているのですか?」

「……あ」

 そういえば田山から集合場所を聞いていない。すぐに田山に連絡して羽間と合流したことと、集合場所を聞き出すことにした。

「もしもし田山。羽間と合流したよ。どこに集まればいい?」

「分かった。じゃあ、昨日遊んだカラオケ店に集合でいい? わたしの名前で予約するから」

「うん、すぐに行くね」

 田山との連絡を切ると、わたしは羽間に集合場所を伝えた。

「昨日行ったカラオケ店に集合だって」

「分かりました。行きましょう」

 わたしと羽間はそのまま昨日遊んだカラオケ店に向かった。

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