束の間の休息
「みんなのとこに飲み物いったー?」
「うん。全員まわったよ」
「じゃあ、お疲れ様! 乾杯‼︎」
カラオケ店の一室に事件メンバーが揃い、それぞれ飲み物を持ったコップを当てて、飲み始めた。
「はぁー、ここならゆっくり出来る」
「ほんとだな。マジで疲れる」
「何度も同じ事を言い続けないといけないし、うんざり」
「しかも星矢に色目を使ってくる奴もいるから、本当ムカつく!」
石井がガンッと持っていたコップを机に叩きつけるように置いた。他の子も鬱憤が溜まっているのか、愚痴を言っている。
「まあまあ、何か歌ってストレス発散すれば?」
わたしがマイクを石井に差し出すと、機嫌を良くした石井がマイクを受け取り、中川に擦り寄った。
「そうする。星矢、一緒に歌おう?」
「しゃーねぇな。どれにする」
タブレットを持ちながら中川と石井が選曲を始める。
「どこも大変そうですね。たまにこうしてガス抜きが必要ですね」
「そうですね。しばらくは事件を理由に学校を抜け出してもいいと思います」
「それにしても意外だな、羽間が学校サボる提案をするなんて。俺はてっきり新田の提案かと思った」
「ちょっと、それどういう意味?」
玉木の言葉にわたしが突っ込んで聞くと、玉木は悪い顔をして口角を上げる。
「新田の方が遊び慣れてるだろ? サボるのもよくやりそうだと思って」
「う、あんまり否定できない」
玉木の言葉に何も言い返せないわたしは、乾いた笑いを漏らす。
「そう言われると、確かに意外かも。羽間さん、実はよくサボっていたりするの?」
この話に興味を持ったのか、田山が羽間に尋ねる。それを聞かれた羽間は持っていたジュースに視線を落とし、少し困った表情をしながら静かに語り始めた。
「……恥ずかしい話なのですが、この事件が始まる前はイジメられていたんです。それから逃げるために時々仮病を使って出ていました」
「そうだったんだ」
羽間の告白にわたしは学校での態度に納得した。もしかして、あのクラスメイトたちが羽間をイジメているのかもしれない。……これからも羽間の様子を見に行こう。この事件で出会ったのも何かの縁だし、わたしだったらあんな恐い目に遭ったのに、日常でも不幸でいるのは辛すぎる。
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