第10話 奇襲(4)
『こちら第7区間!敵兵と交戦中!至急増援を!』
『第25区!もう保たんぞ!撤退する。』
『第45区間敵に占拠されました!』
次々と上がってくる報告を聞きながら中央モニターに表示されている徐々に赤く塗りつぶされていく艦内図を睨みつける。
「チッ!第45区間、隔壁板閉鎖!執行機関は第25区から撤退する部隊の援護に周りなさい!救出後は速やかに隔壁を閉鎖、敵を閉じ込めなさい!第7区間守備隊に死守命令を発令!」
そう言い放ち、この数秒間で一回りほど広がった敵制圧エリアを睨みつける。
「キリア局長!フェリス艦長より緊急連絡です!」
部下の一人がそう言い内線電話を回してくる。
「展開中のPMTF各小隊を呼び戻せ!『こちらCIC。艦長どうぞ。』」
そう言い内線電話を肩で支えながら手元の端末を起動しCIC直轄部隊の移動指示を出す。
『キリヤ局長!敵を第7~第45区間に隔離して下さい。』
端末を操作していた手が思わず止まり眉間にしわが寄る。
『いったい何をなさるおつもりですか?』
そう言い放ちった直後、一つのプランが脳内を駆け抜けたが直ぐさま振り払い、端末を操作し先ほどとは別部隊の指示だす。
『キリヤ局長は害虫を効果的に駆除する方法はご存じですか?』
電話越しではあるがどうやらかの彼女の決意は固まっているようだった。
『もちろんぞじておりますよ艦長殿。火炙りですね』
『そうです。今から15分後に艦を右に90度傾けます。焼却処理は貴方に任せます』
艦長はそう言って内線電話を一方的に切る。
内線電話下部のつまみを回転させ内線回線を切り替える。
『キリヤ局長だ。内務局に繋げ!』
そう言って内線電話を肩で押さえ端末から目を離し正面を向く。
「臨時混合大隊長に繋げ!」
そう言って内線電話を片手に持ち、端末を操作して艦内で戦闘中の全部隊の直接指揮を開始する。
『私だ。第7~第45区内部の酸素濃度を最大にしろ』
そう言って内線電話叩きつけ息を大きく吸い込む。
「第7~第45区間とそれに繋がっている通路全ての隔壁を閉鎖、敵を当該区間に閉じ込めろ!」
そう言って再び内線電話を取り上げる。
『CIC局長のキリヤだ。シュラッグだな。緊急指令を送信した確認しろ。』
そう言って手元の端末からデータを送りつけ画面を戻し再び指揮を開始する。
『シュラッグ確認しました。速やかに実行します。オバー』
そう言ってシュラッグはこちらの返答をうかがう事も無く回線を切られた。
「まったく。」
そう呟き内線電話を下ろし被っている帽子を深く被り直す。
真っ二つに裂けた鍔の間から彼女の白銀の瞳孔がCICのモニターの淡い光を反射する。
「全戦闘部隊の回線を開け!」
そう怒号に近い声がCICの隅々まで響き渡る。
「回線接続しました。」
通信官の一人がそう言って回線を開く。
CIC内部が不気味なほど静まりかえる。
「全戦闘部隊に通達。15分でいい、現状の防衛ラインを維持せよ。繰り返す現状の防衛ラインをなんとしてでも守り抜け!」
ーーーーーー$”$ーーーーーー
「チッ!簡単に言ってくれる!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
乾いた音と共にマズルフラッシュが輝き薄暗い通路を照らす。
「まあまあまあ、落ち着きましょう。小隊長。文句ばっかり言っても敵は殺せませんよ」
カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ
大量の空薬莢が辺りに飛び散り地面に衝突し軽い金属音を奏で副官の声を掻き消す。
「敵に頭を出させるな!」
怒号と共に副官が声を荒げMP400の弾幕を通路端から身を覗かせていた敵兵に撃ち込み射殺する。
コロンコロンコロンコロン
「!フラッシュ!」
部下の誰かが声を上げ咄嗟に視線を下げる
ピーーーーーン
激しい閃光が薄暗い通路を異常なほど照らし聞いたことのない音が通路内部に木霊する。
激し耳鳴りに耐えながら視線を銃口の先に戻す。
「来るぞ!死守命令だ、一匹も通すな!」
そう言って照準を敵味方関係なく盾にし突撃してくる敵に向ける。
「躊躇するな!死ぬぞ!」
副官の怒号と共に部下たちも何かが吹っ切れた様子で射撃を開始する。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
嵐のような弾雨が敵兵を引き裂きバタバタと敵兵が倒れていく。
それでも敵兵は突撃を辞めない、自身の前で死んだ兵士の体を、まだ息のある兵士を後送もせず盾にしこちらとの距離をジリジリと縮めてくる。
「怯えるな!ドンと構えて射撃をk『ぐちゃぐちゃ』」
生々し音が響き、音源の方を咄嗟に振り向き首から上が無くなった副官の死体と全身血塗れな不気味な兵士が立っていた。
「うわ!全身血塗れじゃん。でもこれで一生トマトケチャップには困らないね!」
突然、敵兵がフードの下から覗いているガスマスク越しに曇った声で喋り始める。
「大丈夫だよ。トマトって赤いから共産主義でしょ。私、共産アレルギーあるから摂取できないんだよwww!」
そう言って敵兵は不気味に笑いだす。
「狂人が!死ね!」
そう言って銃口を敵兵へ向けるが銃身を蹴り飛ばされ手から銃が抜け、飛んでいく。
「チッ!」
懐からD4を抜き出し慣れた手つきでセレクターレバーを『safety』から『full auto』に切り替える引き金に指を掛け照準を合わせ引き金を引く。
刹那、敵兵が腕を伸ばしスライドカバーをつかみ射線をそらす。
パン
乾いた音が一発だけ響き薬莢が排莢されずD4内部で弾詰まりを起こす。
「痛すぎでしょ。これじゃあ空港の身体検査に引っかかるじゃんwwww。」
そう言って敵兵はホローポイント弾で引き裂かれだらりと垂れ下がった左腕を何事も無かったかのように笑いなが誰に向かってか話しかける。
「分かった、分かったてば。」
敵兵がそう言い放った直後、D4を手前に引き寄せられる。
「!」
踏ん張るも力の差がありすぎ軽々と体勢を崩され鳩尾に膝を叩き込まれる。
ゴキパキ
ライフル弾ですら受け止める硬炭素複合ボディープレートが乾いた音をたてながら粉砕する。
バン
衝撃に耐えきれず体が宙を舞いまい狭い通路の天井に叩きつけられる天井を構成していたアルミプレートが大きく歪む。
「グッドナイト!言い夢を!」
嬉しそうな声を上げながら重力に引かれ無様に落下している体に対し蹴りを入れられ壁に叩きつけられる。
意識が薄くなっていき、まるで夢を見ているような感覚に襲われる。
敵兵がゆっくりと懐からハンドガンを抜き出し照準を合わせる。
ふとぼやけた視界の焦点が通路、先程まで一緒に戦っていた部下の死体に群がる化け物に合う。
「ハハ、ハハハハハハハ」
弱々し乾いた笑いが通路に木霊する。
敵兵がハンドガンの引き金に指を掛け一切躊躇する事無く引き金を引く。
ババババババババババババババババババババ
連続した射撃音と共に敵兵の体が引き裂かれ地面に倒れ伏す。
「チッ!間に合わなかったか・・・・・・・・・」
全身を強化戦闘服で身を包んだ女性がそう吐き捨てる。
その戦闘服は返り血で真っ赤汚れたており肩には「頭に麻袋を被って天に祈りを捧げる聖女」その趣味の悪い部隊マークが刻まれている。
『各員に通達。死守命令だ。執行部隊としての意地と存在意義を見せつけろ。』
パン
女はそう吐き捨てハンドガンを射撃する。
乾いた音と共にホローポイント弾が放たれ銃弾で引き裂かれてもなお息がある敵兵の後頭部を吹き飛ばす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます