第19話 覚醒

「すげえよなぁ、本当。まさか警察なんかよりも先に、お前らが答えにたどり着いちまうんだからなぁ」


 肩を揺らし、「まいった」と言わんばかりに笑う純。その笑みはどこか力無く、虚しいものであった。

 普段のそれと変わらずに笑う彼を見ていると、なぜか複雑な気分になってしまう。それは、目の前の男性の過去と正体を、この場にいる誰もが知り得ているからに他ならない。


 そこに立つのはクラスメイトの一人・狩屋純であり、村で数々の命を殺めてきた“殺人犯”・春日純でもある。

 光と闇、二つの素顔を持つ彼に向けて、この場では最も付き合いの長い優司が先陣を切った。拳を握り締めたまま、真正面に純を捉える。


「否定しないんだな。自分が“タケ爺”だった……ってこと」

「こんな格好して大暴れしておいて、今更、なんともなりゃあしないからなぁ。それに、俺の爺ちゃんのことまで調べ上げられてるんだ。どんな言い訳したところで、焼け石に水ってもんだろうよ」

「そうか。じゃあやっぱり、“タケ爺”はお前の――」

「ああ。お前らが考えている通りだよ。ガキの頃、“鬼”って忌み嫌われていたのは、俺の爺ちゃん――春日岳道なんだ」


 改めて明確に告げられた事実に、息をのむ一同。優司のすぐ前に立つ真琴が、たまらず問いかけた。


「それじゃあ、あなたは……子供達が“タケ爺”を忌避する中、その正体を知っていたの?」

「もちろんだよ。まぁ、いい気分じゃあなかったさ。どいつもこいつも、人の爺ちゃんを“鬼”呼ばわりだからなぁ。とはいえ、だからといって俺が爺ちゃんの孫だってことは、俺自身も黙ってたんだ。もしそれがばれれば、それこそ今度は俺自身が石田なんかにいじめられかねないだろ? 結局、俺も爺ちゃんの存在を、心のどこかで疎ましく思ってたのかもしれねえよ」


 そう語る純の眼は、周囲を取り囲むクラスメイト達を見てはいなかった。彼はどこか遠く――小学校の外に広がる、見慣れた田舎の風景を眺めているようだ。

 

 真琴からこの“事実”を聞いた段階で、誰しもが確信していた。証拠こそなくとも、この一連の事件を引き起こしている“殺人犯”の正体が、皆がよく知るクラスメイトの一人なのだ、と。

 だからこそ、こうして彼と対峙し、事実を告げた後の展開に身構えてしまう。突きつけた事実を否定するのか、はたまたすべてを曝け出し最後の抵抗に出るのか。


 一同の予想に反し、純の態度は穏やかだった。“殺人”という凶行に手を染めてもなお、彼の表情に凶暴な色は微塵も見えない。

 ただ一つ、どうしようもない虚しさのようなものが、見慣れた純の表情にうっすらと張り付いている。


「でもなぁ……どれだけ狂ってても、正気じゃあなくなっても、俺の前では爺ちゃんは――いつもの優しい爺ちゃんだったんだよ。わけの分かんねえことは言うけど、それでも俺のことを優しい目で見てくれて、笑ってくれたんだ」


 それはきっと、純だけが知る春日岳道という老人の素顔だったのだろう。どれだけ子供達に忌み嫌われようとも、純だけは唯一、“タケ爺”という存在と共に暮らし、家族として接し続けた。

 誰しもが純の言葉に、じっと耳を傾ける。わずかに――ほんの少しだけ、純の眉間にしわが刻まれた。


「あの日……同窓会で石田から話を聞くまで、俺も半信半疑だったんだ。爺ちゃんは池に落ちて、“事故”で死んだ。親族だってそう、各々の中で“決着”をつけて生きてきた。だからこそ、俺の中ではっきりさせたかったんだ。石田が否定してくれたら、俺はきっと、今回の件に勝手に決着をつけれただろうさ」

「石田から話を……じゃあ、お前はあの日――同窓会の日に、石田に直接話を聞いたってことなのか?」

「ああ。優司と別れてすぐ、その足で石田に会いに行ったんだ。あの野郎が二次会に行ってることは知ってたからな。出てくるところを待ち構えて、一人になったところで声をかけたんだよ」


 優司はしっかりと覚えている。あの同窓会の日、ほろ酔いのまま二人並んで田舎道を歩いて帰った時のことを。星空を見上げ語り合う純の、その何気ない姿を。

 あの時からすでに、純は決意していたのだ。酒が入っていてもなお、自身がこの後にやるべきことはしっかりと理解していたのだろう。


 夫・学の影に隠れつつ、それでも凛音は眼鏡を直し、いつもの冷静な口調を取り戻しながら問いかけた。


「そこであなたは、石田君から事の顛末を聞いた。そして、衝動的に彼を殺めてしまったのね?」

「衝動的……いや、石田に会いに行く段階で俺は、どこかそうなることを理解していたんだろうよ。家にずっと置かれていた爺ちゃんの“草刈り鎌”を隠し持って、家を出たんだ。石田がなんて言うかも、その後、俺がどうするかも、きっと分かったうえで行動してたんだと思うぜ」


 あくまで純は自身の行いを否定などしない。語れば語るほどに、彼がこれまでやってきた“殺人”の証言が飛び出す。


「石田の野郎、酔っていたってのもあって、随分と饒舌に話してくれたさ。永友と田畑をたきつけて、“鬼退治”にいったこと。しかもそこに委員長が――しずかが加わって、本格的な“武器”まで用意したこともな。石田が金属バット、永友はボウガン、田畑は槍、委員長は薬品を入れた瓶――手製の“凶器”を使って、爺ちゃんを痛めつけたことを、嬉しそうにあいつは語ったんだ」


 あまりに悲痛な真実に、誰しもが歯噛みしてしまう。純の表情は揺らがなかったが、優司らの胸はただただ痛々しく締め付けられていった。

 純がやったことは、許されざることだ。だがしかし、だとしたら石田達が行った“鬼退治”は、どうだというのだろうか。

 気を病んだ老人を“鬼”と称し、わざわざ武器まで揃え、容赦することなく凶刃を突き立てる。春日岳道の死因はあくまで池に足を滑らせたことによる溺死だが、そのきっかけを作ったのはかつてのクラスメイト達が行った、それこそ“凶行”が原因なのではないか。


 “タケ爺”は――春日岳道は確かに、正気ではなかった。

 だが、彼は誰かを殺したわけでも、それこそ噂通りに子供を喰ったわけでもない。

 そんな一人の“人間”を痛めつけた四人の所業こそ、“鬼”そのものではないか。


 復讐が正しいと言うつもりはない。だがそれでも、突きつけられた事実の数々に、優司らはただ打ちひしがれてしまう。

 子供は純粋だ。そして、純粋だからこそ――どこまでも“残酷”に染まれるのかもしれない。すべてはあの日、人としての道を踏み外した子供達の手によって、始まっていたのである。


 肩の傷を押さえながら、それでも大柄な学が前を向く。彼は悲し気なまなざしを純に向け、言葉を絞り出した。


「だ……だから……お爺さんがやられたのと、お、同じ方法で……皆を殺していってたんだね……」

「ああ。俺も最初は、そんなこと考えてなかったんだよ。けれど、石田を殺したあの日――血に濡れた鎌を持って立ち尽くしたあのあぜ道で、俺の中の“なにか”が壊れたんだ」


 “ぶーちゃん”こと学が「なにか?」と口走り、純は大きくうなずいた。


「俺の中に最後に残っていた、“理性”みたいなものだと思う。それがあの日、楽し気に過去を語る石田を見て、砕け散ったんだ。それからかな……他の三人のことを考えると、どうしようもなく体の奥がうずくんだ。そうして、頭の中が“復讐”のことでいっぱいになる。普段の俺とは違う“なにか”が、俺の肉体を突き動かすみたいにな」


 純は己の手のひらを見つめる。指先が開いた軍手の上に、自身が行ってきた“復讐劇”の数々を思い描いているのだろう。

 そんな彼の横顔から、真琴は決して視線をそらさない。


「それが、あなたにとっての“原動力”だったのね。かつてのお爺さんと同じ姿をして、彼がやられたのと同じ方法で“実行犯”達を殺す――それが亡きお爺様を思う、あなたの“復讐”だった」

「そのとおりさ。だから今更、否定も、言い訳もする気はねえよ。どんな理由があろうが、過去に何があろうが、そんなことは関係ないんだ。俺は俺自身の意思で、法律を破って、人としての一線を越えた。どんなお膳立てしても俺は――ただ、恨みを晴らすためだけに人を傷つけた、“殺人者”なんだよ」


 誰しもが分かっていた、覚悟していた事実だった。だがそれでも、改めて本人の口から告げられたそれは、重々しく一同の胸をえぐる。

 事実にたどり着くということは、この一連の事件が終わるということ。そして、その中心にいた一人の人間が、ただのクラスメイトではなくなるということなのだ。

 どんな理由があっても、どんな痛みを追っても彼は――許されることなき、“殺人者”でしかない。


 そんな覆ることのない屈強な真実を前に、優司は体が打ち震えた。拳を強く握り、たまらず視線を伏せる。納得しようとすればするほどに、肉体の奥底からどうしようもない悲しさが湧き上がってきた。

 嘘であってほしかった。ただの勘違いであってほしかった。

 そうすれば明日からも変わらず、純は優司にとってのまっとうな友人であり続けられたのだから。


 感情に打ちひしがれる優司の姿を、純も悲しげに見つめていた。だがなおも彼は困ったような笑みを浮かべる。


「すまねえなぁ、優司。お前にまで、ひどいことしちまってよぉ。心のどこかで、怖かったんだ。お前らがいずれ、俺の所までたどり着くんじゃあないか、ってな」


 優司はようやく顔を持ち上げる。涙をこらえ、どうしようもない熱を帯びた眼差しを、彼方の純に向けた。

 かつて、純と共に過ごしてきた日々が、フラッシュバックする。思い返せば、この場所で――小学校で初めてできた友人が、偶然、隣の席になった純だったのだ。


 何をするにしても、二人はいつも一緒だった。勉強するときも、遊ぶときも、馬鹿をやらかすときも、そこには気が付けば純の姿があった。

 中学、高校と進み、その先で互いの進む道が分かれたとしても、同窓会で再会した二人の間に、それほどの違和感はなかったのだ。それほどまでに、知らず知らずのうちに互いの中に、見えない強い繋がりが芽生えていたのだろう。


 意識などはしたことがなかった。それでも優司にとって、純は他の友人よりも一歩先の存在――“親友”と呼べる間柄になっていたのだろう。


 そんな彼と、こうして対峙することがただただ辛い。優司は肩の傷跡をわずかに触り、あの時の痛みを思い出しながら言葉を絞り出す。


「あれから何度も考えたんだ。石田達四人がやったことは、決して許されることじゃあない。もし、俺も同じように家族が痛めつけられ、その果てに誰かが死んだとしたら、どうするんだろうって。もしかしたら俺だって同じように、“復讐”を考えたんじゃあないかって思う」


 ゆっくりと、少しずつ心境を吐露する優司を、純のみならず全員が見つめていた。優司は言葉と共に足を前に出し、純との距離を詰めていく。


「お前や、お前のお爺さんがやられたこと……それを考えたとき、ふと思う時がある。石田達が死んだのは、正しいことなんじゃあないかって。あいつらの“罪”は、こうしなければ消えないんじゃあないかって。けれど――」


 気が付いた時には、優司と純の距離はあと数歩の所まで詰まっていた。至近距離で二人は互いを見つめ、真正面から対峙する。

 目の前にいるのは、いつも通りの“彼”だ。慣れない農作業着こそ着込んでいるが、それでもその上にある表情やまなざしは、同窓会の日に再会したばかりの“彼”のものである。


 そんな純に向けて、優司は告げる。姿形は変わらずとも、人としての一線を越えて立つ彼に向けて、はっきりと言い放った。


「どれだけ考えても、やっぱり駄目なんだ。何があろうと、どんな理由があろうと――人が人を殺して良いはずがない。結局それは、誰かが犯した“罪”を、別の“罪”で上書きしてるだけなんだ。このままじゃあ本当に――お前のお爺さんは、人殺しの“鬼”になっちまう」


 わずかばかり、純の表情が揺らぐ。彼の目が丸く開かれた後、すぐに物悲しく歪んでいく。

 純もきっと、どこかで理解していたのだろう。“復讐”をしたことで、純の心が救われることなどない。かつての祖父と同じ姿をして振るう凶刃は、どんな大義名分があったところで、ただの人殺しの道具にしか成り果てないのである。


 人を殺せば殺すほどに――過去から蘇った“タケ爺”は、本物の“鬼”に近付くだけなのだから。


 ほうと純の口からため息が漏れる。それを受け、優司はなおも真っすぐに告げた。

 友人として、気の知れた親友として、言わなければならないと決めていた一言を。


「頼む。もう、やめてくれ。もうこれ以上、“鬼”になんてならないでくれよ――純」


 優司の言葉が、周囲の面々にもはっきりと届いていた。真琴は口元を力ませ、学は悲しげに目を細める。凛音は冷静さを取り戻し、眼鏡越しに対峙する二人を俯瞰から見つめていた。


 純は何一つ、抵抗しなかった。あまりにもあっさりと、あまりにも柔らかに、彼は親友の言葉を受け入れる。


「本当にすまなかったなぁ。ずっと、ずっと、怖い思いばかりさせちまってよぉ。今更、逃げやしないさ。ちゃんと、“人”としてお縄につくからよ」


 親友からのその一言が、優司の心に深々と突き刺さる。ついに彼は耐え切れず、目から溢れ出た熱い雫を、腕で拭ってしまった。

 もう、戻ることはできない――そんな当たり前の現実は、優司の心を容赦なく締め付ける。


 どんな“罰”を受けたところで、純が犯した“罪”は消えることはない。

 かつての“タケ爺”がそうであったように、彼が奪った無数の命が戻ることなど、ないのだから。


 吹き付ける生暖かい風が、周囲の木々を揺らす。その熱波を受けながら、純はことさら悲し気に微笑んだ。


「どうやったところで、許されることなんてないって分かってる。それでもせめて、自分がやったことから目は背けないよ。お前が言うように、しっかりと“人間”として裁かれてくるからさ」


 それは純からクラスメイト達への、別れの言葉だった。彼が法の下に裁かれ、刑を終えたとして、二度と互いの関係性が戻ることはないのかもしれない。

 その事実に打ちひしがれる優司の肩に、真琴がそっと手を添えた。クラスメイトの体から伝わる震えに心を締め付けられるが、やはり彼女は“警察官”としての強さを捨てはしない。


「警察にはもう連絡してるの。もうじき、応援が駆けつけてくれる。今回の事件はこれですべて――終わりになるわ」


 純はやはり、動じることなどなかった。すべてを受け入れ、「ああ」と力なくうなずく。


「ああ。もうこれ以上、“鬼”は暴れたりしねえよ。真琴が言うように、全部終わり――これで本当に――」


 純はしずかに目を閉じた。暗闇の中で、これまで自身が刈り取ってきた“命”の数々に思いをはせる。

 許すことなどできない。だが一方で、それを切り裂いた自分自身をも、決して許すべきではないと理解している。


 遠くからカラスが鳴いていた。

 茜色の中に夜が濃く混じり、村が影で覆われる。


 瞬間、どこか今まで以上に強く風が吹き付け、校舎の前に立つ一同の周囲を渦巻いたようだった。

 今までと同じ、自然の――住み慣れた田舎の音。

 その数々の日常的な音色の中に一つだけ、明らかな異物が混じる。


 どくん――と、大気が揺れた。


 その明らかな鼓動の音を、その場に立つ誰しもが明確に耳にする。

 優司はようやく、目を見開いた。涙が頬を濡らすが、かまうことなく顔を持ち上げ、すぐ目の前の“異変”に気付く。


 眼前に立つ農作業着の純が、頭を抱えてもがき苦しんでいる。体を曲げ、「ぐう」と低くうなり、荒々しく呼吸を繰り返していた。


「――純?」


 返事はない。先程まで、どこか涼し気な表情を浮かべていた彼は、もうどこにもいない。純は何度もうなりながら、がくがくと体を痙攣させ始めた。

 明らかな異変に周囲のクラスメイト達も息をのむ。純が体を揺らすたび、肌の上から滑り落ちた汗の雫と、口の端から漏れる唾液が地面に飛び散り、雫となって砕ける。


 何が起こっているのか、まるで分からない。そんな一同に向けて、純が苦痛に耐えながら必死に言葉を振り絞った。


「――だめ――だ――そんな――そんなこと――は――」


 どくん――と、またしても鼓動が跳ねる。

 それが目の前でもがき苦しむ純のものだと、誰しもが直感的に理解した。


 彼はまるで自身の内側で暴れる“なにか”を抑え込むように、強い力で頭を抱え込んでいた。指の先が強く皮膚に食い込み、わずかばかりの血がしたたり落ちている。

 その痛々しい姿に、ついに優司も意識が覚醒した。


「おい、どうしたんだよ。純!?」


 何かの病の類か、突発的な現象か。そう予測しながらも、手を貸すためにたまらず優司は彼に駆け寄っていた。

 優司は至近距離で、苦しむ純の顔を覗き込む。だが、顔を押さえる指のその隙間に見えたものに、戦慄せざるをえなかった。


 純は左目をぎゅっと、苦しそうに閉じている。しかし一方で、右目だけは大きく見開かれ、その瞳がぐりぐりと凄まじい勢いで動き続けていた。異様な光景に息をのんでしまう優司だったが、さらなる“異変”の正体に気付いてしまった。


 純の瞳が“黄色”に染まっている。血走った眼球のその中心で、満月のような黄色い瞳が、優司を中央に捉えた。


 周囲の音が遠ざかる。覚醒した意識のその中に、確かに彼の――“鬼”として人を殺め続けてきた、クラスメイトの声が聞こえた。


「――頼む――逃げろ――優司ぃ!」


 唐突に純の右手が伸び、呆けていた優司を一気に突き飛ばす。軽く手を伸ばしただけだというのに、優司の体は凄まじい衝撃で真横に吹き飛び、尻もちをついてしまった。

 胸板に刻まれた激痛を押さえながら、それでも前を向く優司。真琴、学や凛音も、地面に倒れ込んだ優司を目で追った。


 だが、一同の視線はすぐにまた“彼”へと戻る。

 苦しんでいた純の喉元から、凄まじい絶叫がこだました。


 それはどこか、聞き覚えのある雄叫びだった。先程まで喋っていた友人の声色ではない。これまで優司や真琴が対峙した、あの存在が発していたのと同じ波長なのである。


 明らかに先程までとは異なった声色で、途切れ途切れに“それ”が歌う。


「わぁるいこはみな――でておいで。よこにならんで――くらべぇな。“しおき”のかわりに――おやまいこ――」


 頭を抱えたまま、獣のような慟哭を放つ純。

 その農作業をまとった姿の上に、多くの命を奪い取ってきた“鬼”の姿がかぶり、一同の細胞を震え上がらせていた。

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