第4話 新必殺発見
(ああ、これがスランプというやつか。)
コージは、ライバルの石原との戦いの後、何作か投稿したが読者の反応は
皆無だった。
コージはstory.comの投稿作品を読み漁った。
しばらく読んでいくとあることに気が付いた。
(内容自体はそれぞれバラバラだけど、読みやすいと思った作品は行間が結構空いて、また改行も意図的に短めにやっているなあ。そうか、行間は開ければ開ける程
読者に想像させる時間、というより『間』を与えるので読み易く感じるのかあ。)
(なるほど『行間を制する者は小説を制する』ということか。。。。)
(よし早速試してみるか。えーと今日のお題は、、)
『めっちゃ恥ずかしかった体験をかっこつけて話してみる。』か、
(お題が文章やん!まあいいか。)
いつものように軽くボヤキながら、執筆を始めた。
(行間もただ空けるだけじゃダメなんだよね。あくまでも読者が心地良いと感じる
スペースを空けれるのかがポイントだな。俺のセンスなら問題ないな。)
コージはこの日は珍しい順調に作業が進んで行った。
投稿した内容↓↓
『俺の名前は、島木。しがない探偵事務所をやっている。最近仕事が忙しくなってきたんで助手を雇うことにしたんだ。そう今日がその面接日だ。
面接に来た男は、ナカタと名乗り25歳で一見高校生にみえるマジメそうな男性
だった。一通りの説明や確認のやりとりをした後、
最後に質問ありますかと尋ねたら、ナカタは
「今までで最大のピンチはどんな時ですか?」
なかなかいい質問だ、俺は迷わずあの件を話した。
「ある大富豪婦人から、飼っている猫を探して欲しいとの依頼があった。期間は1週間 種類はロシアンブルーのオスで名前はジュリー。着手金は50万円、成功報酬は更に50万円と高額な依頼だった。」
「猫探すのは大変じゃないですか。」
「いや、猫は次の日にあっさり捕まえた。どうせ遠くには行かないはずだから、依頼者の豪邸の裏に公園があって、そこでチュールを持って張り込んでいたんだ。するとすぐにグレーの猫が近寄ってきたんだぜ。依頼者からピンクの首輪を着けてると聞いていたんですぐに首輪を見たらピンクだった。チュールを食べさせた後、依頼者から預かっていたジュリーちゃん用のキャリーバッグを見せたら、自ら入って来て
無事確保‼すぐに写メを送って確認してもらったら
『間違いない。ジュリーちゃんよ。ありがとう。』とすぐに返信がきた。
ここまでは良かったんだが。。。。。。。」
「どうなったんですか?」
「実はその時、依頼者は旅行に行っていて引渡しは6日後になって
しまったんだ。結果それまで預かることになったんだが、、」
「問題は俺は猫を飼ったこと、いや動物を飼ったことが無かったんだ。
当然猫が何を食べるかもわからなかったから、最初なんとなくごはんを
あげたんだが全然食べなかった。仕方ないので夕食の残りのハンバーグを
あげたら喜んで食べたので、俺もよかったあと思ってついでに昼に食べ損ねた
チョココロネあげたら更に喜んで食べてたんだよなあ。。。その時までは」
「どうなったんですか?」
「次の日の朝、様子を見たら天国に行ってたんだ。後で調べてみたら
ハンバーグに入っていた玉ねぎは猫の赤血球に良くなくて、ダメ押しはチョコに入っているテオプロミンと呼ばれる物質が嘔吐や下痢、高体温、筋肉の震え、不整脈、
腹部の不快感やその他諸々。猫に与えちゃダメな食べ物だった。」
「どうなったんですか?」
「それから、また猫を探したよ。でもロシアンブルーの野良猫なんて
いるわけないよなあ。」
「どうなったんですか?」
「結局、引き渡し日の前日に捕まえた黒い野良猫にピンクの首輪をつけて、
当日にかわいそうだったけどグレーのスプレーをかけて婦人の所に
行ったのさ。ジュリーちゃんのキャリーバッグに入れたから、この猫
シャーシャー言ってたぜ。多分ジュリーちゃんの匂いがあったからだろう。
それでも気にせず引き渡した。」
「婦人は『ちょっと太ったのかしら?』と言いながらキャリーバッグを空けた瞬間、猛ダッシュで玄関から外へ逃げて行った。まあ当然玄関は俺が
あらかじめ開けっ放ししてたんだがな。」
「報酬はどうなったんですか?」
「もちろん、着手金のみ受け取ったぜ。成功報酬は辞退した。プロだからな。婦人からはまた探してくれと依頼を受けたがスケジュールの都合という理由で固辞したよ。」
「ちょっと、お聞きしたいんですが。」
「うん?」
「どうして、ジュリーちゃんにチュールをあげなかったんですか?それで捕まえたんでしょう。」
「運命だったんだよなあ。。。。。」』
コージは内容よりも行間を何箇所も空けたことに満足し投稿ボタン押した。
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