第6話 お布団の中の上下関係

//SE ドアを開ける音


(完全に酔ったおじさんのように)

「たっだいまぁー! ふぅー着いた着いた」


//SE ドアを閉める音


(両手を大きく広げて)

「ひとり身の私が、ついに戻ってきたぞーってな!」


(足場がないほどごみが散乱している)


//SE ごみを踏んだり、蹴ったりする音


(ごみを避けようとして)

「お、おおぉっと!」


(よろめいたところに肩を借りる)


//SE 肩にどしりともたれかかる音


「――いやー、間一髪助かった助かった」


(酔いはそれでも冷めず)

「やっぱりできる後輩は違うなぁ!」


//SE 後輩の背中をバシバシたたく音


(全く反省の色を見せず)

「んー、でもさすがに酔いすぎたなー。

 課長はいっつも酒を飲むスピードが速いから、私もつい加減を忘れてしまう」


(後輩が水を飲むことを提案する)


「――あぁ、水なら冷蔵庫にある。

 あと、お酒もな」


//SE 冷蔵庫を開ける音


(手をひらひらさせて、適当な感じで)

「――分かってるよ。ありがたくお水をいただく」


//SE コップに水を注ぐ音


(ちらっと後輩を見て、わざとらしく)

「――あぁ~、口まで水を運ぶのめんどくさいなー。

 後輩、私に飲ませてくれ」


(ニヤニヤしながら)

「――そんなことできない?

 おいおい、先輩の言うことが聞けないとは悪い後輩だ」


(思い出したかのように)

「確か野球部だったか?

 義務教育でも習ったんじゃないのか?

 先輩の命令はだって」


(勝ち誇った表情で)

「――ふふん! 分かればよろしい」


(コップを口に先輩の口元に近づけて)


//SE 水がのどを通る音


「——はぁー、もしもこれにお酒が入ってたら、完璧だったんだが」


(大きく伸びをしながら)

「酔いが醒めてきたな~」


(ベッドにもたれかかって、天井を見上げる)

「私って、ダメな先輩だよなー」


「——そんなことない?

 いやいや、そういうのいいから」


(少し声のトーンを下げて)

「私、会社の中であんまり喋らないだろ?

 饒舌になるのは酔っているときか、……酔っているときだけか」(苦笑)


(真面目に)

「だから後輩君の教育係になった時は、もうこの会社をやめようかと思った」


「……」


(空気感に飲まれそうになって、慌てて)

「……あぁー! でも今もやめてないのは!

 後輩君が私の教えた一から十を理解する能力があったおかげだ!」


「そのくせ、ちゃんとしっかりできるのに、いっつも『それは先輩のおかげです』って言うんだから」


(人差し指を突き出し、くるくると回しながら)

「私の評価が高いの、後輩君のせいなんだぞ?」


「——私はやればできる人?

 ……あぁ、この前のプレゼンの話か?

 あれこそ、後輩君のおかげだ」


(胸を張って)

「私は社会にまみれた社会不適合者だから。

 プレゼンの資料はつくれたけど、原稿を考えたのは君」


(嬉しそうに)

「——つまり私たちは最強?

 ふふっ、そうだな。……もしかして、後輩君も酔ってるんじゃないか?」


(後輩が立ち上がって)

「——このままだとここで寝てしまうから帰る?」


(頭をフル回転させて、大声で)

「……ダメ!」


(やってしまった醜態をごまかすために)

「……いや、そのなんだ。そんな酔っぱらっている後輩を一人で帰らすわけにもいかんだろ」


「かと言って、送れる体力が私にはない。

 だから……」


(ごそごそと後輩に迫る)


(上目づかいで)

「今日は泊まっていけ」


(ちょっと怒ったように)

「——自分何かがそんなことできない?

 何を言っているいるんだ後輩、私は、こんなこと誰にでも言うわけじゃないんだぞ」


(迫られた後輩はベッドへと逃げる)


「なんだ、追いかけっこか?

 ……それならば、先輩命令だ」


(低音ボイス)

「そこから動くな」


「私はダメな先輩だが、君の先輩は私だ」


「つまり私の言うことは絶対だよな?」


(ベッドにゆっくりと上がる)


//SE 布擦れ音


(男っぽく)

「忠実な後輩君なら、動かないでくれるよなぁ?」


(後輩に馬乗りする)


「さぁて、命令の時間だ」


「私を、好きになれ」


(キス音)

 


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