第5話 宅飲みとお布団は人間関係をぶっ壊す

(天井に向かって缶ビールを持った右手を掲げて)

「宅飲み、さいっこう!」


(テーブルをコンコンと指の関節で軽く叩いて)

「はい、もう一回。乾杯っ!」


//SE 缶ビールどうしがぶつかる音


(酔ってることをアピールするように)

「――これで何回目の乾杯かって、そんなの覚えてなーい」


(男の肩をバシバシ叩きながら)

「良いの良いの、今楽しまないと明日からの仕事なんてやってられないから」


(ちょっと湿っぽく)

「こうやって、君と一緒に飲めることが私の生きがいだからさ」


(ツッコむように)

「――私が酒以外の飲み物を飲んでるところ、見たことない?

 おいおい、それは部署が違うからであって、私だってお茶ぐらい飲むわ」


(思慮深い顔をして)

「……しかし、会社で緑茶ハイを飲むのも悪くはないか」


「――分かってる分かってる。私も立派な大人だからな。

 そこらへんはちゃんと線引きしている」


「……」


(二人がぐびぐびとビールを飲む音)


「――そういえば、同期が全員今回の宅飲みを断ったのが本当かって?」


(必死に隠そうとして)

「あぁ! そうだ! いやぁ、ぜひとも私と一緒に酔いつぶれていただいて、明日のお仕事に支障をきたしてほしかったが、残念だ。あぁ残念だ」


//SE お布団に顔をうずめる時の布擦れ音


「ば、バレてないよな~?」(お布団で声量を吸収)


(突然の奇行を誤魔化すように)

「――いやぁ~まだ酔ってないー。

 あっ、冷蔵庫に入ってる炭酸水取ってー」


//SE 冷蔵庫が開く音


(固唾を飲んで)

「よしよし、ここから作戦開始だ」(囁き声)


(コップと炭酸水を持ってきたのを確認して)


(棒読み)

「あーっ、なんか身体が熱くなってきたなー。

 ねぇねぇ、このコート脱がしてよー」


(ニヤニヤしながら)

「――なんでそんなことって?

 おー、この前データ入力ミスって、手伝ってあげたの忘れたのか~?」


(男がごそごそと立ち上がる)

(背後に回って、コートを脱がせる)


//SE 布擦れ音


(思った以上に自分が緊張していて)

「さ、さんきゅー、……脱がせたからって、私の身体をジロジロ見ちゃだめだぞっ☆」


「……」(気まずい)


//SE お布団に顔をうずめる時の布擦れ音


(ジタバタしながら)

「おーい! 私のGカップワイシャツが効かないだとっ?

 さらにワイシャツから透けて見える、女の子らしいピンクのブラジャーが気にならないのかっ!」(囁き声)


(胸を張って)

「――やっぱり酔っているのか?

 ふふん、私を舐めるなよ。私はやるべきことをやるまでは絶対に酔いつぶれない!」


(手をわなわなさせながら)

「やるべきこと? いや、それは、なんでもない!」


(棒読み)

「……わ、私もう眠いから寝ちゃおうかなー」


(ちらっ、ちらっ)


「……」


(ベッドに飛び込む)

//SE ベッドがきしむ音


(棒読み)

「あーこのまま寝たらシャツがしわしわになって、お風呂にも入ってないから女の子として終わるな~」


(ちらっ、ちらっ)


(結構ショックを受けて)

「――もう友達としては見れない?

 え? ちょっとひどくない?

 ……まぁ、こんなだらしない姿見せたらそう思うのも無理はないけどさ」


(慣れていない誘い方で)

「――だから、お風呂だけは入ってほしい?

 そ、それじゃあ、一緒には、入るか~」


(ベッドから飛び起きて)

「――い、良い!? えっえっ?

 冗談……だよね?」


(手を伸ばされる)

(その手を……つかむ)


(焦って)

「……いやいや、ちょっと順番がちが――」


(その手を引っ張ってしまう)

(男性が女性に乗っかる)


(両腕を顔の近くに持ってきて)

「――だ、ダメだよ。こんなことしちゃ」


(キス音)


(ぶんぶんと首を横に振って)

「――私が、君のことを誘った?

 い、いやいやいや、全然そんなことないし。いたって普通だし」


(キス音)


(顔をリンゴのように真っ赤にして)

「――男なんてデカい胸見せとけば、いいと思ってるだろって?

 ち、違うもん。そんなこと思ってないもん」


(キス音)


(目を見開いて)

「――自分は変態ですって言え?

 そ、そんなの言えるわけ――」


(キス音)


「そんなにチューされても……」


(キス音)


「言わな……」


(キス音)


「……はい、私は君に好きになってもらおうと必死になっちゃった変態です」


(布団に流れる、汗と唾液)



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