むしのしらせ
むしのしらせ
男が仕事帰りに夜道を歩いていると、一匹の虫、緑色で金属光沢があるむし虫、カナブンが一匹、道の上でひっくり返って死んでいるのを見た。
普通のことだ。
虫が道の上でひっくり返って死んでいるだけだ。
何のことはない話だ。
だけれども、男にはそれがどうしても気になって仕方なかった。
なぜだか、妙に印象に残ってしまったのだ。
翌日、男が仕事で会社に行くと妙に慌ただしい。
話を聞くと社長が急病でなくなったということだ。
体調が悪いとは言ってたが、昨日は普通に出社していたし、話もしていた。
男も随分と目をかけてもらっていただけに男はショックだった。
慌ただしい一日が終わり、その日は男も家に帰る。
社長がなくなったことも確かにショックだが、社長のワンマンで動いていた会社だ。
これからどうなるのか、それは男も不安だった。
自然と暗い気持ちになり、ため息も出る。
そこで気づく。
昨日、カナブンがひっくり返っていた場所に、今日は蝉がひっくり返っている。
男は猛烈に嫌な予感がする。
道の端を通り男は蝉をよけ、帰路を急いだ。
家に帰ってすぐに電話がかかってくる。
男が電話に出ると、男の母親からで親戚のおじさんが死んだと教えられる。
そこで、男は気づく。
虫だけに、虫の知らせだったのでは、と。
何をバカなことを、と男は自分で思いつきはするものの、二度も続くと何とも言えない気持ちに男はなる。
次の日、会社に行くと週末に社長の御通夜があるから、と言われるが、その日は親戚の御通夜でもある。
流石に親戚を優先すべきだが、お世話になった社長でもある。
長居は出来ないだろうが顔だけでも出していこうと男は思う。
その日の帰りだ。
カナブン、蝉と続いて落ちていた場所に、大きなカブトムシがひっくり返っている。
男はそれを見た時、ゾワゾワとしたものを感じる。
次は誰が、と男は不安に思う。
やっぱりこれは虫の知らせなんだ、と男は確信する。
虫の知らせで、実際に虫が死骸で知らせてくれるとは思いもしなかったが、きっと近いうちに誰かが死ぬ。
男はそう確信していた。
次は誰だ、次は誰だと、男が心配していると、男の目の前が急に明るくなる。
それは飲酒運転をしていた車のライトだった。
次に死んだのは……
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