たなばた

たなばた

 七夕の由来は「棚機」。

 古い日本の禊ぎ行事だ。

 乙女が着物を羽織り、そなえ、神様を迎えて秋の豊作を祈ったものだったそうだ。

 それが彦星と織姫の伝承と交わり今の形になったのだとか。


 では、それまで迎えられていた神様はどこへ行ったのか。

 忘れ去られた神様はどこへ行くのか。


 今回の話はそれとは全く関係がない。


 短冊に願いを書いて笹に飾る。

 夏祭りの日に飾る。

 今回はどっちかと言うとそんな話だ。


 少女は好きな人と一緒になれますように、と短冊に書いて飾る。

 笹に括りつけて飾る。

 浴衣を着て友達と夏祭りを回る。

 楽しい日常だ。


 問題は祭りの帰り道だ。

 友達と別れ、暗い夜道を一人下駄を鳴らして歩く。

 空を見ると天の川が綺麗に見える。

 彦星と織姫もこれなら会えたことだろう、と少女は思い笑顔で暗い夜道を歩く。


 少女の手には金魚すくいで取った金魚。

 水風船などが握られている。

 少女は家に水槽あったかどうか、心配しながら暗い夜道を歩く。


 ふと気が付くと、少女の後ろから少女の物とは違う下駄の足音が聞こえてくる。

 少女は何の気なしに振り返ると黒い人影が見える。

 少女はその人もお祭りの帰りかな、ぐらいにしか思わなった。その時は。


 少女が呑気に歩いていると、すぐ真後ろから下駄の音が聞こえてくる。

 少女は気になり振り返ると、そこには誰もいない。

 首を傾げ少女は再び歩き出す。

 そうすると、少女の耳に息がかかる。

 生暖かい息がかかる。

 流石に少女も驚く。


 すぐ後ろに何かいる。さっきまで何もいなかったのに何かいる。

 少女が恐怖で硬直していると、一緒になりたいのかい? と声をかけられた。

 少女もすぐに七夕の短冊のことだと思いあたる。

 少女に後ろにいる存在は更に声をかける。

 誰と一緒になりたいのかい? と。

 少女は、好きな人の名をあげる。

 そうすると、すぐ後ろから笑い声がして、残念だけどその願いは叶わないよ、と告げられる。


 少女は泣きながら、なんで、と聞き返すと。

 後ろの声の主には、だって…… と言ったところで、後ろの気配が急に消える。

 

 気配が消えたので少女が後ろを向くと数人の集団が歩いてきているのが見えた。

 それは少女の知っている顔で、言うならばクラスメイトの男子達の一行だった。

 その中には少女の想い人もいる。


 ただ、少女の想い人の隣には少女の知らない女子が親しそうにしていた。


 それを見た少女は泣きながら走って家に帰った。

 家に帰るとさっきまで元気だった金魚がなぜか水に浮いていた。




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