てんじょうのすみ

てんじょうのすみ

 女は猫と共にマンションの一室に住んでいた。

 時より飼い猫のが部屋の天井の隅を凝視していることがある。


 猫が見ているのは、いつも同じ場所だ。


 女は気になりながらも猫ならよくあることだと、それほど気に留めなかった。

 その日も女の飼い猫は天井の隅を見ている。

 少し、普段よりも気になってしまった女は、猫の目線を追い天井の隅を見る。

 

 目が合う。


 女が猫の目線を追った先、天井の隅には目が合った。

 正確には人の顔の目元の部分だけあった。


 よく黒塗りで目元を隠すことがあるだろう?

 その隠している部分だけが、逆に天井の隅にあったのだ。


 女は悲鳴を上げる。

 そうすると天井の隅の目は壁に溶ける様に消えた。

 猫は女の悲鳴に驚いて逃げていった。


 それから女も天井の隅をよく見る様になる。

 自分の部屋だけではなく、どこへ行ってもビクビクし、まず天井の隅を確認する。

 ついでに、女自分の部屋の天井の四隅には布で覆い見えないようにした。


 それで女の飼い猫も天井の隅を見ることはなくなった。

 それでも、たまに猫は天井を見るのだ。

 凝視するように。




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