第43話 突然ですがどうですか?
私が転移した先は校門の目の前だった。やっぱ学校といえばとなると、校門前を想像しちゃうんだよなー。あと春の桜。
「あ、さっきドーラさんたちに『付与・治癒再生』かけとけばよかったな……まあでもドーラさん準備いいから大丈夫でしょ!」
治癒再生をかけに戻るか考えたけど、ドーラさんの準備の良さを信用してコーギー達を探しに行く。ドーラさん回復ポーション持っていそうだもん!(※大正解)
あ、コーギーのどの子がいないか確認すればよかったー!
戻るか戻らないか……いや、普通に声かけたらこっちに来るから大丈夫か。
「おーい! コーギー達ー! どこー?」
下駄箱であまり迷惑にならないように考慮しながら声を出して探す。周りの集中力をなくすような行動はしたくないからね!
カチャカチャ……
コーギー達につけていた首輪が少しながらこっちだよと私に教える。これどっちの方向だ? ……左後ろ! ……でもそっちって確かダンジョン攻略部の部屋……。もしかしてそこで待ってたのかな?
まずは靴入れて……しっかり中履き用ローファーに履き替える。所々から部活中の人たちが笑いあっている声が廊下に楽しさを響かせて活気を廊下に響かせる。
ほかの部活も見てみたいなーなんて思いながら私はダンジョン攻略部の部屋に着く。あれ? 電気ついてる。ドーラさんが消し忘れたのかな?
ガラッ
「キャン!」「ワン!」「ワン!」
扉を開けるとプリッとしたお尻をフリフリさせながらコーギー3匹が向かってきた。やっぱいたー! ここにいたー! その時少しばかり違和感が生じる
ん? 転移するとき扉しまってたよね? どうやって入ってきたんだろう?
だけど、そんな疑問は周りを見てすぐに納得する。
「こんにちは、ユイ・アマミズさん。ダンジョンはどうでした?」
と、近くの椅子に腰を掛けていた校長先生が言った。もしかして校長先生がコーギー達を部屋に入れさせてくれたのかな?
私は一旦校長先生の問いにどう答えようか考えたが、一番先に出た答えが……。
「あー、ドーラさんのパーティーが半壊しているところに私が行って、変な蛇を倒しましたね。校長先生はどんなモンスターかわかりませんか?」
質問を答えてすぐに質問しちゃった……。
その言葉に校長先生は反応して少し険しい顔になる。
「なんと!? 生徒達が死ぬような状況になってしまうになるのはこちらの不手際……。あとで案内よろしくお願いします。それで……そのモンスターはどんな見た目ですか?」
真剣な表情で私にしっかり目を合わせて質問をしっかり答えやすいように投球してくる。えーと見た目……確か、
「赤と白と黒のブチですね」
だったはず! 見間違ってない! ……ちょっと描写が雑だけど。
そんな自信満々な答えを返したのちに聞こえた返答は困惑物だった。
「? そんな見た目のモンスターはいませんよ? 似た見た目のモンスターならいますが……」
え? いない? もしかして相手が幻覚を使ってくる……いや、だったら手ごたえは感じないか。え? でも確かに赤白黒のブチだったし……。
んー……。いったん先生に似たモンスターを聞いてみるか。
「似たモンスターってどんな見た目ですか?」
「わかりました。少し待っててください魔写を持ってきま……」
校長先生が椅子から立ち上がると同時にどこからか、とろけるように可愛すぎて天使のような……破壊力の高い声が聞こえてくる。
「「みゃー!」」「みゅぅー」
「にー」
え? どこどこどこ!? この声って子猫だよね!? モフりたい! あばよくは持ち帰りたい! るーちゃんと並ばせたい! ……いや下手に触ると親猫が育児放棄するからやめた方がいいか? いややめた方がいいな! でも親猫がいないなら……。
私がそう頭の中で考えながら周りを確認していると、コーギー達が部屋のはじっこにあった合計3つの毛玉を持ってくる。んー? これって……
コーギーたちが持ってきた毛玉は私の想像通り子猫だった。三兄弟かな? いやこれ、それぞれ品種が違う!
まず一つ目の毛玉(子猫)。まん丸の顔。ちょんと生えた小さな耳は少し垂れている。淡さもありながら少し暗い青の瞳はパッチリしていて、おなか側が白で背中側がクリーム色の毛と若干オレンジ色ののハートがある可愛い模様だった。これは……スコティッシュフォールド?
「にぃ~」
か……可愛い!!!!!! スコは一回飼ってみたかったけどこんな流れでか……は! この子は子猫で親猫がまだいてもおかしくないから我慢我慢。
次の毛玉(子猫)に目を移す。もさっとした灰色が狩った白の長毛。この子もしっかり目が開いていてそこからアクアマリンのような目が私を見上げている。これはラグドールっぽさがある。でもラグドールとは断言できないのがな……。
「みゃー!」
「「カワイイ」」
校長先生と「カワイイ」がシンクロする。わかりますよ……この幼いような感じ。大人の猫もとってもかわいいけど、子猫にしかない可愛さがあるもん……。
なんて、頭の中で考えていると、コーギー達が子猫を床に降ろす。
「にぃ」
「みゃー?」
「みー……」
最後の子猫はマンチカンかな? ……ん? この子猫……目が開いてない……結構生まれたての方なのかな? ……迷子のお知らせでーす。
「いいこですねー。いつから飼い始めたのですか?」
????? え? 私飼ってないよね……?
! この子たち絶対まだ親猫がいる。その直感が私に校長先生に触らせるなと警告を出す。だが、
トン……
私の目の前で校長先生が無垢の表情で子猫に触ってしまう。……終わった。もうこれ引き取るしかないじゃん.。そして、虚無感をかみしめながら先生に事実を述べる。
「校長先生。その子を私はテイムしていません」
先生の顔が完璧で究極の宇宙猫になる。? ここは宇宙……? は! ここは教室だ! ……これもう一種の幻覚攻撃でしょ。
まあ、そんなことは置いて、様子からして完全に私が飼っている子たちだと思ってたらしい。
子猫をどうしようか考えながら見ている私の脳裏に、1年F1組のみんなが言っていたことがよみがえる。
ここは今休憩時間の1年F1組。周りの人と雑談する人、空をぼんやりと眺めている人、五分休みなのにスヤスヤ寝ている人……いや、よくこんな短い時間で寝られるな! 国民的アニメに出演している眼鏡をかけた5年生もびっくりするよ!?
周りの人たちの行動に少し目を向けていると、コーギー達をなでていたクラスメイトがあまりのモフモフさに
「ん~! みんなもふもふだねー!」
と、完全に心を射抜かれた高めの声で言う。そりゃあ! 毎日とってもいいシャンプーで洗ったり、
なんて、言えないけど……。言えない悔しさを味わいながら頭の中で努力に気づいてもらったことで少し喜んでいると、モンブランに抱き着いてモフモフを堪能していた他のクラスメイトが急に絶望の表情をして、
「私達はこれから冒険者になってこんなかわいいモンスターを倒す事になるのか……」
モンブランのおなかに顔をうずめながら、そうつぶやいた。それを聞いて周りの人たちはピタ〇ラスイッチのドミノを立ててやっと最後だというときに全部倒れてしまったような絶望顔と凍り付いたような空気が、しずくが落ちた水面の波のように広がっていった。ウグッ……! た、確かに……! ライにテイムのスキルつけてもらって精神的に助かった!
「嫌だ! 冒険者だから仕方ないけど、依頼以外の可愛いモンスターは育ててみたい! みんなで育てたらとっても楽しそうでさみしくないと思う!」
モフモフのたまり場に突如消えたゆるゆる雰囲気を、じんわりと塗り替えした静寂を突き破ってそんな声が上がった。
「……確かに、貴族は常にたくさんの書類が精神をすり減らしにきたり、他の貴族同士敵対しあう時間が多いです」
そう言ったのは、貴族であるレイアさんだ。うん。言葉の重みがめっちゃ違いすぎて一瞬重力魔法がかけられていたのかと思ったわ!?
「なので、心の癒しとしてモンスターを飼おうとする貴族も少なくはないのですわ。……大半の貴族は食い殺され、モンスターは処分されてしまうけど」
ちょっと!? なんで最後の最後に核爆弾発言を投下するの! うちの子たちはそんな子じゃないもん!
「それでも、少しは飼ってみたいのです……。なので、ユイさん! 1ヵ月だけ! 1ヵ月だけでいいのでコーギー達を学園で飼ってみてもいいですか!」
そうクラスメイトにねだられていたことがある。あの後しっかり断ったけど……。
それに、モンスターをお世話する機会なんて、この世界の人たちからすると、あまりないんじゃないかな!
「校長先生! 突然ですが提案があります!」
校長先生が私の声ではっとして宇宙猫の顔をやめる。いや、そんなずっと宇宙猫するくらい衝撃だったの!? あ、もしかして宇宙猫の顔をした瞬間に思考停止してしまったり?
「……この子たちを学園のみんなで育てるのはどうですか?」
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