3 空しさ

 時々、「ああ、自分には何もできないんだなあ」と思うことがある。ただの発作のようなものだ。何かに失敗した時、アイデアが湧かなかったとき、何かが自分の思い通りにならなかった時。ああ、空しいなあ、生きているのも空しい、などと思ったりする。そう考えていると、時々吐き気がする。体がそれを考えることを拒絶しているのだろうか。まあ、そうだよなあ。自分の体だって、自殺なんてされたら目も当てられないからなあ。それでも、いくら死にたくなっても、時間がたつとすべて忘れてしまう。生きていくうえで必要のないことだから。それでも、一つ思い出してしまうとこれまでの空しさがどっと襲ってきて、濁流にのまれそうになってしまう。好きな言葉、好きな音ではかき消せない、こぼれたタールのようにもっと根源に染み付いてしまった、恐怖とはまた違う何か。のまれてしまうと、「今私が死んだらだれか悲しんでくれるだろうか」だとか、「私が生きる意味なんてあるのだろうか」だとか考えてしまう。そう考えている間は何も感じることはない。実際に自殺をした人の思考もこんなものなのだろうか。実際のところはわからないが、彼らが正気?に戻ったとして自分がその時考えていたことを振り返って、ぞっとするのだろうか。それともやはり何も思うこともできないほど壊れてしまっているのだろうか。何もわからない。心に染み付いた何かとは違って、分からないことは怖い。実際に誰かの死に直面すれば何かわかるのだろうか。いや、何もわからないだろうな。きっと、その時に感じたことも、自殺した人の思考ではないかもしれないし、よしんばそうだったとして、その感覚も、あの時考えていたことも、きっとすぐ忘れてしまうのだろうから。そう、こうして書き綴ったことさえ、全部忘れてしまうのだ。それに気づいて感じた空しさも、全部。

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備忘録:記憶 秋雨 @akisame-autumnrain-

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