第92話 魔人の根城は
僕は歓楽街を歩いていた。
よく弟子が、ここに集金の仕事で出向くんだけど。
そのお陰で、気づけたんだ。
ウィルソーの奥さんが売り飛ばされているということに。
10才の娘さんはどうなんだろうか?
……裏の売春宿に売られていないと良いんだけど。
一般的な売春宿は、14才からだからね。
身体で稼ぐのは。
10才くらいなら、洗濯ものを運んだり食事を運んだり。
そういう肉体労働が基本だ。
……14才以降は身体で稼ぐことになるんだけど。
そこを思うと、嫌な気分になるよ。
そうならないように知恵を絞ったのに。
助けられたと思った人を。
よくも地獄に堕としたな。
そんなことを考えていると
「なぁマギ」
「なんだい?」
金髪ヒューム男性の聖騎士……エゼルバードが僕に話し掛けてくる。
僕の視線を受けて彼は
「……本当にやってしまって良いんだな?」
「このクラスの敵は、問題が起きない場所に誘導する余裕は無いよ。これは大事の前の小事だから」
僕の立てた計画に、多少躊躇してるのかな?
ここは覚悟を決めるときだと思うのに。
向こうはまず、いきなり場所を選ばず襲って来るとは思ってない。
そこが隙になる。
……そんなのメチャクチャだ?
違うね。
余裕が無いだけだよ。
手加減できる相手じゃ無いんだ。
手加減なんて戦力の逐次投入だ。
何が何でも倒すんだ。
だから、現行僕が揃えられる戦力は全部揃えた。
ここで一緒に歓楽街を歩いているメンバーは……
元仲間の
エゼルバード、マオ、リア
そして僕の旦那のモロス。
そして
ネコ、ガイザーさん、ベネットさん、そして僕の後釜の子。
大所帯で突き進む。
そこらじゅうに売春宿が立ち並び、娼婦たちが木製の真っ赤な檻の中で、客引きとして男を誘う布地の少ない衣装を身に付け
「お兄さん、私を買って下さい」
「料金は良心的です」
「性病は気にしなくて良いですよ。月イチで病気治療の魔法を受けてますから~」
色々な誘い文句を通行人の男たちに掛けている。
檻の中から手を伸ばしながら。
そんな光景を目にしながら歩いていると。
エゼルバードがさっきの僕の言葉に難色を示したようで
「大事の前の小事って……それはお前の判断するところでは……」
そう言うんだけど。
そこに
「ああ、聖騎士の旦那。そこはまあ、女房の要請で既にオレが上に通してますから。さっき、ですけど」
横から僕の旦那の援護射撃。
彼には事情を話して、襲撃直前に盗賊ギルドに申請を出しても通る様に根回ししてもらっておいた。
時間を掛けると敵に伝わる可能性あるしね。
半分賭けみたいなところあったけど、旦那の発言権思ったより強くてさ。
ありがたいよ。
で、やってきた。
目的地。
売春宿・サキュバスの楽園。
かなり高級な売春宿だ。
娼婦は技術、外見、共にレベルが高い。
かなり稼いでいる男しか、遊びに来れない高い店。
ドピンクの内装で、美女の像が店先に置かれている。
僕は躊躇なく店に入った。
旦那の手を引いて。
「ちょっと待って下さいお客様。会員証をご提示を」
すると高級な黒い服を着用した若い男が、僕たちの行く手を阻んで来た。
僕は旦那に目配せする。
彼は頷いて
こう言った。
「本店の大旦那に話は行ってる。モロスだ」
本店とは盗賊ギルドのこと。
そして大旦那とはギルドマスターのことだ。
この隠語を聞き、若い男の顔が強張る。
そして旦那はこう続けた。
「ここの一番の娼婦、アケミの部屋に案内しろ」
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