エピローグ

目を覚ますと、いつもの臭い排水溝の中だった。体を動かすことはできなかった。鳴くこともできない。やっぱりもうだめだ。と思った。

あたりは真っ暗な闇だった。

不思議と闇は怖くなかった。

夜空が見たい、と思った。


「こっちこっち!最近この辺から仔猫の声が聞こえるのよ。」


声が聞こえる。


「まだいるかなぁ?逃げちゃってないといいんだけど。」


「あっ!あの奥に白いのが見えるよ!!あー!いるいる!!!」


鼻先になんだかいい匂いのするものを近づけられた。

舐めてみる。うまい。


うわ、なんだこれすごいうまい。

うまいうまいうまいうまい。


「うわぁ〜、お腹へってたんだねぇ。凄い勢いで舐めてるよ。」


「うみゃうみゃ言いながら食べてる…可愛い…。」


うまいものを夢中で食べているうちに引きずりだされた。ふわふわの温かいものに包まれて、心地が良かった。なんだかこの感触を覚えている気がする。お腹がいっぱいになって安心したら眠くなってきた。


見上げた空には、まばらに静かに瞬く星たちと、一際強く輝くひとつ星が見えた。


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極夜 猫目じろ @polarnight

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