第131話 血の更新
「勿論彼一人が頑張っても意味はない。エヴァも彼のために公爵家の家政、社交を熟すと気丈に宣言してくれたよ」
「エヴァが?」
そういえばお母さんに家政の内容を教えながらやけにキリッとしていた。お母さんに教える立場なのに、一緒に内容を確認して…。
…将来この家に降嫁するなら、将来的にそれはエヴァの仕事になるわね…?
お母さんに仕事内容を教えながら公爵家の事情を把握しようとしている…!?
「ちょっとこれピーター様には確認とってるの!?」
もしや勝手に色々決めていないでしょうね!?
「先日の夜会で話を通してきたよ」
「私を助ける前に決まってる!?」
公爵の詐称がばれる前から蹴落とす気満々じゃない!
「そのときはこれとは別の事情で、公爵とも交渉する予定だったんだけど…その必要がなくなってとても楽になったよ」
「ねえこいつがしていることこそ悪事じゃないの? そのあたり私わからないんだけどどうなの」
「乗っ取りとは違う…からな。エフィンジャーの血筋は本当に【王家の血の存続】を目的とした一族だから、王家の血を継ぐ者が跡取りとして認められる。今回はイヴァンジェリン王女の生んだ子供を次期当主として据える、という形での中継ぎだ。メルヴィン子爵令息はイヴァンジェリン王女と婚姻できるならと、トリスタンに忠誠を誓った。まだ若いが優秀そうだし、これから、これから騙されないよう心がけたらなんとかなるだろう」
「ねえ、これからって強調した理由は? ねえ」
私の質問に答えてくれたモーリスだけど、次の質問には答えてくれなかったわ。
ねえ、本当に悪事じゃないの? 乗っ取りに値しないって信じていいの?
エヴァが降嫁するなら許されるって暴論じゃないの? ねえ。
「ちなみに夫妻で決めて欲しいことは、離縁するかしないかだね」
「娘としては離縁して欲しい」
スタンの判決がとても気になったけどそれより気になる話題に食い付いた。
娘としては離婚して欲しいけど、足が不自由なお母さんが生活するには人の手が必要だ。このまま公爵夫人として使用人の世話になった方がお母さんは楽だろう。楽だけど、あの男の妻として傍にいるのは不安だ。
でもお母さん、公爵のこと許しちゃってるし…逃げた負い目があるから。
そう言う関係性ってよくないと思うのよ。確かに若い頃は公爵の存在に救われたのかもしれないけど、それ以上に傷つけられたなら一緒にいても負担じゃないの。
私は別れて欲しいけど、お母さんの気持ちが一番。別れて欲しいけど。別れて欲しいけど。
「離縁してもしなくても夫人の生活は保障するよ」
「何でスタンが保証するのよ」
私の疑問に対し、スタンは意味深に微笑むだけで答えなかった。
笑顔で誤魔化すのやめてよね。
「それから公爵から辿って魔女に接触した」
こいつ無理矢理話も終わらせやがったわ。
「今までまったく捕まらなかったけど、公爵との連絡用の【名前を呼んだら色が変わる呪い】のかかった花で呼んだらすぐ来たよ」
そんな呪いもあるわけ?
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