31:デートなのか、デートじゃないのか。

 



 調理器具を買い揃えるならやっぱりおじいちゃんのいるお店!ってことで行ったら、おじいちゃんに怪訝な顔をされた。


「……バレバレでないか?」

「なにが?」

「いや、嬢ちゃんはアレだから、まぁいいとして。魔…………アンタ……なにやっとんじゃ?」

「デート」

「え、これデートだったの!?」


 買い出しかと思ってたよ。


「「……」」

「「わふぅ?」」

「駄目だ。主人を咬むな」


 おい、フォン・ダン・ショコラ、咬もうとしたのか。今日から餌は野菜だけにするぞ。

 野菜をクタクタに煮ただけのスープにするぞ。


「「キャゥゥン」」


 野菜だけは嫌だったらしい。物凄い勢いで伏せをされた。


「ふっ。ケルベロスが服従しているのが面白いなと思っていたが、ここまで反抗するのも面白い。お前たちはいったいどういう関係なんだ?」


 魔王がまたもや薄らっと微笑みながら、仁王立ちする私と伏せるフォン・ダン・ショコラを見ている。何が面白いのか全くわからないけれど、魔王には面白いらしい。


「んで、何しに来たんじゃ?」

「買い出し!」

「…………まぁ、そりゃ、デートじゃないと言われるだろうな」


 おじいちゃんがなぜか憐憫の目で魔王を見ていた。なぜに?




 色々と買い足して、魔王とまた手を繋いで店に戻った。なんで手を繋いでるんだっけ? ま、いいけど。エスコートみたいなものよね?


 色々と散財してしまったけど、必要経費だしオッケーということにしておこう。


「棚はここにいいな?」

「うん! あ、料理はこっち側!」


 広くなったおかげで、色々と場所を揃えて置けるようになった。

 流れ作業で取れるようになってると楽よね。


「んあー、でも広すぎて一人で動くの大変そう。お店も忙しくなったし、お手伝いさん雇おうかなぁ」

「「ワフゥワフワフ!」」

「自分たちが手伝うと言っているぞ」

「毛、モサモサじゃん」


 フォン・ダン・ショコラに突っ込んだら、ショーンボリされてしまった。

 しかも、それは流石に酷いぞ、とか魔王のくせに正論ぶち込んでくる。


「衛生管理! 店内はギリセーフにしてるけど。そういう種族もいるから」

「あぁ、そういうことか。ならばこれを使え」


 魔王が私の手のひらにトンと置いたのは、深紅でつるんとした色以外は何の変哲もない指輪だった。

 それをフォン・ダン・ショコラの手に嵌めろと言われて、素直に従ってみる。フォン・ダン・ショコラには指輪というより腕輪になったけど。


「取り敢えず、フォンでいいか。人型になりたいと考えながら指輪に魔力を込めてみろ」

「「ワフゥン?」」


 足元で、ぽふん、と軽い音がした。

 すると、足元にいたはずのフォン・ダン・ショコラは消えていた。その代わりに、私の腰よりちょっと上くらいの身長の、イヌ耳男児が全裸で立っていた。


 ――――はいぃぃ?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る