第57話 オレ、のじゃロリの家に行く アオイ視点

「ほぇ〜……」


「すごい……」


 シズと2人、和風の門の前で立ち尽くす。


「こ、これがヒビキさんの……家? シズ? オレ達騙されてるんじゃ……」


「そうだよなぁ……こんな所、知り合いが住んでるなんてとても思えないんだけど」


「失礼じゃなぁ2人とも」


 小さなモコモコ上着を着たツリ目の幼女……ヒビキさんはタタタッと門の中へ入ってクルリとこちらを向いた。


「遠慮することないのじゃ。早く入って来るのじゃ〜」



 今朝、ヒビキさんが「家に泊まりに来い」と誘いに来た。なんだか急な誘いでビックリしたけど、準備してお邪魔することにした。


 シズのバイトも来週まで無いし、何よりずっとヒビキさんの家の住所知りたかったし。



「ま、まぁ入ってみようよ……」


 シズに促されて門を通り、なんか砂利が敷き詰められた高そうな庭を見ながら家に入る。すると、エプロンを付けたディーテがパタパタと出て来た。


「あらあら! いらっしゃい幼女ちゃんに彼氏くん♪」


 ヒビキさんが家に上がるとディーテが彼女の頬に手を添えた。


「のじゃロリちゃんほっぺがキンキンよ!」


「寒かったからの〜」


「先行ってコタツに入ってなさい♡」


「のじゃ〜」


 家の奥に入って行くヒビキさん。ディーテは、俺達を見てニコリと笑った。


「2人も入って入って」


 ディーテに案内されて、廊下を進むずーっと続く廊下をずーっと歩く。


「ここ広過ぎない?」


「そうよねぇ。ここにのじゃロリちゃんが1人で住んでたと思うと胸が張り裂けそうで……」


 ディーテがなぜか涙を流す。


「ディーテさんってこんな感じだったっけ? もっと奔放そうな感じだった気が……」


「彼氏くん。私はね。半端な気持ちでのじゃロリちゃんのママをやってる訳じゃないのよ?」


「は、はい……すみません……」


 ディーテの圧がすごい。シズちょっと引いてるじゃん。


「じゃあディーテはどんな覚悟でやってるのさ?」


「それはもちろん。のじゃロリちゃんを幸せにするのが今の私の願いよ? だって、私……ママだから……」


 なぜか頬を染めるディーテ。本当にこんな感じだったつけ? この前ウチに来た時から変わりすぎじゃない?


「はい。ここが今日の2人の部屋♡」


 案内された和室。そこは広い庭が一望できる旅館みたいな部屋だった。


「へ〜!! すごい! 池もあるじゃん!」

「小さい橋まで付いてる……」


「気に入ってもらえて良かったわ♡ それじゃあ荷物を置いて? 居間に行きましょう」



 またずーっと続く廊下を歩く。



 ずーっと続く。



 ずーっと……長いな!



 そして突き当たりの部屋まで来るとディーテが立ち止まった。


「ここが居間よ♡」


 ディーテがふすまを開ける。そこはコタツにデカいテレビのある居間だった。


「あれ? ヒビキさんは?」



「ここじゃぞ」



 コタツの中からニュッと現れるヒビキさん。目を細めて猫みたいにコタツに潜っていた。


「極楽じゃの〜。ホラ、アオイもシズシズも入って来るのじゃ〜」


「じゃ、じゃあ失礼して……」


「オレも……」


 2人でコタツに入る。中に入るとあったかい空気に体が包まれる。寒さを一気に忘れていく。


「は〜あったか〜」

「確かに極楽かもしれないなぁ……」


「はい。お茶どうぞ♡」


 ディーテが湯呑みを並べて緑茶を入れてくれる。


「ほい。茶菓子もあるのじゃぞ」


「うわぁ〜どら焼き美味しそ〜!」


「こんなの見たことないよ」


 シズが出されたのを手に取る。


 それはちょっと小ぶりなどら焼き。でもなんだかまんまるでなんだか甘い良い匂いがする。


 一口食べる。生地がふわふわであんこも上品な甘さ。どら焼きというよ和風ケーキみたいな味がするり


「美味し〜〜い!!」


「ヒビキさんのくれるお菓子っていつもセンスいいですよね」



「にゃはは……ママがいつも良い感じのを選んでくれるのじゃ♪」


「こういうの選ぶの好きなの♡」


「食べたら何かして遊ぶのじゃ〜」

 


 こうして……オレとシズはヒビキさんの家にお泊まりすることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る