第31話 ……いる!? アオイ視点

「ふわぁ〜!」


 朝起きると、妙に視線を感じた。背中に感じるゾワリとした感覚。なんだか無意識に体がブルブル震える。


「え?」


 部屋の中を覗いてみても誰もいない。


「気のせいか。ま、いいや♪ ふふ♡ 昨日買ったの食べちゃお!」


 棚にあったチョコチップクッキーを取り出す。昨日買ったちょっと良いクッキー。早く食べたいから味見しよっかな?


 朝からお菓子って実家なら怒られるかもしれないけど、一人暮らしだから問題無しだもんね〜。




 —— ビタミンが不足するわよ。ビタミン不足はお肌の敵。今度注意しなくちゃ。




「……え?」


 声が、聞こえた。女の人の声。


「え、え、なに? 怖いんだけど……」


 しばらく耳を澄ましてみたけど、それらしい声は聞こえなくなった。


「もしかして……部長かなぁ〜」


 なんか、そう考えたら怖く無い気がする! うん、怖く無い!



 だけど、部屋中を探すけど部長はいない。



 怖くない怖くない……。



 自分に言い聞かせながらさらに探すと、代わりに部長から貰った魔法少女コスが目に付いた。


「あ、これ」


 ヒラヒラしたパステルカラーのカワイイ服。それを見た瞬間胸がときめいてしまった。


 辺りを見回しても誰もいないし、やっぱり気のせいか。楽しいこと考えよ!


「ちょっとだけ、着よっかな。今日の講義は10時半からだし」


 朝アニメの魔法少女コスを着る。髪を直して鏡の前に飛び出すた、大きな瞳にサラサラの髪。ヒラヒラしたパステルカラーの魔法少女が現れた。



「こ、これが……オレ? 何回着てもカワイイ〜♡」


 せっかくだから写真いっぱい撮っちゃお♡



 ポーズを決めてパシャパシャ写真を撮りまくっていたら、ふと時計が目に入った。


 今は…8時か。



 ……8時!?



 マズイ! もうすぐシズが来ちゃうじゃん!!




◇◇◇



 シズが来て、バタバタしていると、すぐに学校に行く時間になった。講義を受けて昼ごはんを食べて、部室で寝たり、カードをしたりしていたらさらにあっという間に夕方になった。


 でも、1つ気になることが。


 それは誰かから見られてること。何をしていても、ずっと感じる視線。オレは段々怖くなって、シズに泊まって貰うように頼んだ。



 そして……。



 22:00


「アオイ? 同じ布団で寝なくても……」


「お願い! 一緒に寝てよ〜! オレ怖くて……」


 ブルブル震える体を止めたくてシズの体に抱きついた。


「うわ!? ……はぁ。よしよし」


「う〜! シズ〜!」


 シズが背中を撫でてくれる。それがすごく気持ち良くて、体の奥がジンジンする。


「シズ……」


「ん? どうしたの?」


 シズに抱きしめられると怖いのが無くなっていく。すごく安心して、このまま抱きしめられるだけなのは嫌になって来る。


「ねぇ……キスしたい」


「い、いいよ」


「ちゅ……んん」


 はぁ……気持ちいい。キス好きぃ♡


「ん、ん……シズぅ……好きだよぉ」


「ちょっ!? アオイ? なんか変じゃない!?」


「んちゅ……はぁ♡ もっとしよ? もっとしたい」


 体がドンドン熱くなって。頭がボーっとして来て、なんだか全身がウズウズする。止められなくて、何度もキスして、でも……それでもっとウズウズする。



 止まらない。熱い。シズのことしか考えられない。



「ね、ねぇ? このまま……」



 体が熱すぎてパジャマのボタンに手をかけた。


「え、えと……アオイ?」



 戸惑うシズの顔。それがたまらなく可愛く思える。



「はぁ……はぁ……」



 止まらない。オレ、おかしくなって……。



 —— ええ!? 幼女ちゃんそんなことまで……? はぁ……はぁ……女神を興奮させるなんて、やるわね。2人とも……っ!? ちょ、ちょっと私も……。



「ん?」

「な、なに?」


 急にハイテンションの声が聞こえた。



 シズと2人で辺りを見回す。


「え? なんか声が聞こえた?」


「シズ! こ、この声だよ! 朝からずっと聞こえてるの!」


 怖くなってシズに捕まる。すると、部屋の壁から女の人がズヌヌッと出てきた。


「ひぃ……っ!?」

「ひっ……!?」



「も〜! いい所だったのになんて急にやめるのよぉ〜!」


そこから出て来たのは、願いの女神ディーテだった。


「ディーテ!? なんで!?」


「そんな顔で見ないでよ〜! 今日ずっと一緒に過ごした仲でしょ?」


 過ごした?


「も、もしかしてオレのことずっと見てたの!?」


「そうよ〜! 貴方は可愛い我が子みたいなものだもの。たまには見なきゃいけないと思ってぇ」



「帰ってよ!」



「え〜!? 続きはぁ!?」


「する訳無いじゃん!? ディーテがいるのに!」



「ちぇ〜残念。じゃ、また今度の楽しみにしておくわね〜!」



 そう言うと、ディーテは何もない空間に溶け込むように消えてしまった。


「な、なんだったんだ……?」


「さ、さぁ? シズが分からないならオレも分からないや……」


 オレとシズでしばらくディーテの消えた付近を見つめる。




 というか!? ディーテそんなことできたの!?


 じゃ、じゃあ……オレの魔法少女コスも。


「あ、あああああ……」


「どうしたのアオイ? 頭なんか抱えて」



「見られてたぁ〜!」


 オレは、しばらく頭を抱えた。

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