第29話 何かがあった2人 シズ視点

 週明けの月曜日。


 オカルト研究会の部室。



「あれ? 2人ともどうしたの? 今日はなんか雰囲気違くない?」


「いつも通りですよ」


「変わんないよ〜」


 上機嫌なアオイ。部長は怪訝な顔をしていたがパソコンに視線を戻した。


「ふ〜ん。そういえば静樹くん。また機関誌の印刷頼める? 今週どこかで印刷室使えるよう申請しておくからさ」


「あ、木曜以外にして貰えますか? 木曜はバイトがあって」


「オッケー。また決まったら連絡するよ」


「今回はオレも印刷手伝おうかなぁ」


「蒼ちゃん大丈夫なの?」


「平気平気。誰かと一緒なら誤魔化せるって。ね? シズ?」


 アオイが部長に見えないように僕の膝に手を置いた。彼女の手が触れた瞬間身体中に電気が走ったみたいに上手く話せなくなってしまう。


「あ、アオイはいいの?」


「うん。シズと一緒にいたいし」


「お〜〜〜? なんか怪しいなぁ? やっぱりなんかあったんじゃない?」


「何も無いですよ。それより記事の見直しするんじゃないんですか?」


「ぎゃー!? そうじゃん! 誤字めちゃくちゃあってさぁ〜!


 休み中にアオイとあんなこと・・・・・があったなんて、口が裂けても言えない……。


 あの後・・・提案して来たのはアオイの方だけどさ。流石にな……アレはまずかった。


 というか、思い出すとヤバイかも……。


 アオイの顔をチラリと見る。


 サラサラした髪に大きな目。言動は幼くなってるけど、僕と同い年でちゃんとしっかり考えも持ってるし……あぁなんか混乱する。


 そんなことを考えていたら、アオイが耳打ちして来た。


「もしかして思い出してた?」


「そんなこと、ななないよ?」


「嘘だ〜顔赤いし。またしてあげる・・・・・からね?」


 イタズラっぽくだけど、でも優しく微笑むアオイ。そんな姿にドキリとした。


「ま、まぁ……」


「嫌なの?」


「いや、はい。またお願いします……」


「カワイイ〜♡」


 マズイ。最近アオイのペースに飲まれっぱなしだ。


「……なんかさぁ。さっきからなにを内緒話してんの さ。私だけ仲間はずれみたいな感じなんですけどぉ?」


「ごめんって〜!」


「もう! そんなんじゃお姉ちゃん新しい服買ってあげないよ!」


「誰がお姉ちゃんだよ!」


 部長と話すアオイ。その姿はいつもと全然変わらない。


 アオイは緊張しないのか? なんか僕から見るといっつも落ち着いてるように見えるんだけど……。


「あ、そう言えばもう一度女神探さなきゃだよね♪ 2人が付き合った訳だしぃ? 女神も願い聞いてくれそう」


「あ、そっか。すっかり忘れてた」


「すっかりって……舞い上がりすぎだよ蒼ちゃん……」


「へへ……それは否定できないかも」


 笑いながら、アオイは僕を見た。


 ……まぁ、いいか。


 アオイのペースに乗せられるのも、悪くないかもなぁ。


 でも、今度アオイから甘えられた時は、もっと上手くやろう。このままだと悔しすぎるから。



「静希くん? なにニヤニヤしてるよ?」



「全っ然! ニヤニヤしてません!」

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