第19話 オレ、幼女友達ができる アオイ視点

 休みの日。


 シズのバイトが終わるまで暇だったので何となく散歩に出た。


 休日の昼間、子供の多い時間帯。これなら危ない目に遭わないだろうということで。何より、体を動かさないとダメだ思ったからだ。ずっと家にいるのは流石に良くないかなって。


 川沿いを歩き、図書館に行ったりスーパーに行ってみたり。結局最後はやることが無くなって公園に行ってみる。


 ブランコが空いていたので何となく座り、揺られていると、この前のことを思い出した。


 この前、ヤバかったな……。


 シズの手を握って眠るまで顔を見てて……あ〜思い出しただけでニヤニヤしてしまう!


 オレって四六時中シズのこと考えてるよな……オレって変なのかな? 変じゃないよね?


 ボーっと公園の様子を見る。そこでは大勢の子供がグループごとに遊んでいた。


 ん?


 何だか公園の端っこで男子グループが何かやっていた。気になって様子を見に行くと、小学校中学年くらいの男子グループがカードゲームで遊んでいた。


 うわ、懐かしい。オレの子供の頃からあるヤツじゃん。すごっ! 今でもあるんだ。



「おい! 何見てんだよ!」



 グループの中の1人、太った子供が急に怒って来た。


「何って。カード見てたんだけど?」


「女が寄って来んなよ!」

「カードなんて興味ないくせに!」

「そうだそうだ! 邪魔すんな!」


 子供達が一斉に威嚇して来る。


 なんだよコイツら……どうせ数年後には女子に好かれるかどうかで散々悩むくせに。調子いいんだよなぁこのくらいの時は。


 ブーイングを浴びながらカードを見ていると、不思議なことに気が付いた。


「あれ? それじゃ無効にできないぞ」


「え?」


 太った男子が顔を真っ赤にして怒り出す!


「ウソつくな!」

「ケント君はオレ達ん中で1番詳しいんだぞ!」

「あっち行け!」


 すごい怒って来るなぁ……そんなにプライド傷付けちゃったんだろうか?


「だってそれ速攻魔法じゃん? 伏せてあるカードは破壊できるけど、もう使っちゃった罠カードは発動しちゃってるよ」


「はぁ……っ? そんな訳無いだろ!」


「いや、ホントだって……ええと」


 ポーチからスマホを取り出してカードゲームのルールを調べる。


 お、公式サイトにもちゃんと書いてあるじゃん。


「ほら、速攻魔法で消せるのは盤面に残る永続罠だけ。それ以外はカウンター罠じゃないと無効にできないって」


「ぐぬぬ……っ!!」


 ケントというヤツは怒りのあまり足をバンバンと地面に叩き付けた。


「ははっ。怒り方が子供すぎて可愛い〜!」


「何だと!? お前も子供じゃねぇか!!」


 あ、つい心の声が出ちゃった。


「そんなサイト偽物だ! 嘘が書いてあるんだ!」


 ああ……自己保身に走ってついに意味不明なことを言い出してしまったな……。


 ケント見てみろって。取り巻きも「えぇ……?」って顔してるぞ。


「誰が何の為にそんなサイト作るの? 作る意味は?」


「うっ!?」


「ほら、答えられないじゃん。誰だって間違う訳だしさ、そんな怒んなくても」


「俺は間違ってないもん! みんな速攻魔法で消してるし! 間違ってるのはお前だ! 嘘つき女!!」


 ダメだコイツ……怒りすぎてもう何言っても伝わんないや。


「はいはい。じゃあ君たちは一生そのルールで遊んでれば?」


「何だよその言い方はよぉ!!」


「だって認めたくないんでしょ? 自分が間違ったこと。だったらずっと間違ったままやってればいいじゃん。それで大会でも出た時初めて恥かけばいいんじゃない? 恥かくのはケントだし」


「気安く名前呼ぶなあ!! うるさい女だなぁ!!」


「さっきからうるさいのはそっちじゃん」


「きいぃぃいいいい!!」


 怒りで顔を真っ赤にしたケントは地団駄を踏んで暴れ回った。


「もういいや! 家で遊ぼうぜ!」

「覚えてろよ!」

「クソ女!!」


「お〜! またな〜!」


 すごいなぁ。漫画みたいなセリフ言って帰っちゃった。そこまで怒んなくていいじゃんか。


 ちぇっ。ちょっとプレイしたかったのに。


 今度シズとやろっかな……構築済みでも買って……。



「すごーい!!」



 振り返ると、小学生女子が立っていた。小学校中学年くらい、赤いメガネにショートカットの女の子。その子が目をキラキラさせながら駆け寄って来た。


「ケント君に勝っちゃうなんて!」


「勝つ? あの子が勝手に怒っただけでしょ?」


「ううん。みんなケント君には何も言えなくなっちゃうから。追い返すのって中々できることじゃないよ」


 何も言えなくなる?


 あぁ……気が強そうだったしな。オレも子供の頃なら怖かったのかも。


「ね、そのポーチ可愛いね。どこで買ったの?」


「あ、これはぶ……お姉ちゃんに貰ったんだ」


 言いながら部長に貰ったポーチを隠す。


 危なかった……普通に話しそうになってた。説明するの大変だし女神の話とかは黙っていよう。


「私、白水しらみず小学校の犬山優奈いぬやまゆうなて言うの。名前教えてよ」


「オレ? オレは内川蒼うちかわあおいだよ」


「オレだって! カッコいい〜!!」


 優奈が目をキラキラさせる。


「い、いや癖だから……気にしないで」


「ねえお友達になろうよ! メッセアプリ持ってる?」


 言いながら優奈がキッズスマホを取り出す。


「う、うん……」


 ポーチからスマホを取り出すと、優奈は目を丸くさせた。


「大人のスマホだ! すごっ!」


「え? あ! お下がりなんだ……これ」


「そうなんだぁ。いいなぁ私も大人のスマホ欲しいなぁ」


 そう言えば、子供の頃って自由にスマホ持たせてもらえなかったもんな。オレの場合、親が勉強に厳しかったから特に。


 その時、シズから「バイト終わった」とメッセージが届いた。


「あ、オレもう行かなきゃ」


「そっかぁ。メッセージ送るね。また遊ぼうね!」



 優奈が元気そうに笑う。



 なぜかオレに小学生の友達ができた。

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