第44話 野外調理
俺たちのグループが集合場所に戻るとすでに
「おお大量だね・・・ってどうしたん悠真!?」
「え、服ずぶ濡れじゃん。大丈夫そう?」
「怪我は無かったし大丈夫。俺の運動神経が高くないのが原因だから」
「え、違う・・・」
「そうそう、高橋が調子乗ってドジしたのが悪いんだから」
「普段から運動しとかなきゃいかんよ高橋」
「運動部に入ってるわけでもないから習慣化してないんだよね」
美由と一緒にいた人たちに濡れた原因を話した。正直に話すと朝凪さんが気まずくなりそうだったし少し嘘を交えながら。当然朝凪さんは否定しようとするが、事前に
「とりあえず風邪引く前に着替えてくるから山菜は先生に確認してもらっておいてくれないか」
「もうしてるよ」
「じゃあ、魚と山菜を水で洗っておいてくれ。着替えて来るから頼んだ」
そう言って俺はみんなから離れて合宿所に入っていった。もちろん先生に許可をもらってからだ。着替えに行くときに朝凪さんが落ち込んでるような顔をしているのが見えた。しょうがないだろ、だってこうじゃなきゃ朝凪さんが悪者になってしまうんだから。
濡れた着替えを脱ぎ、軽く脱水した後にビニール袋の中に入れてカバンの中にしまった。そして明日着る用に持ってきたジャージに着替えた。今からは料理をするだけだし明日も着れるだろと踏んだからだ。そしてカバンからあるものを取り出した。
急いで着替えて戻ると既に魚と山菜が洗い終わっていて、魚に関しては内蔵を取り出しているところだった。
「お、高橋が帰ってきたぞ。お前が遅いから内蔵まで取ってたけど大丈夫か?」
「ああ、助かる」
「あんた勝手にやってたのかよ。ん?ねえ悠真くん、その手に持ってるのは何?」
「後でこれを使った料理を作るんだよ。楽しみにしといてくれ」
美由と
処理が終わった魚の数匹を串に通して塩をまぶす。そしたら小栗たちが起こした火を囲うように挿して火を通していく。小栗と木下にはその魚の焼き加減を見てもらっておく。
山菜の筋をある程度取り魚を三枚おろしした後、戻ってきた朝凪さんたちから鶏卵を受け取りボウルで溶き始めた。そして山菜と魚の切身の水分をしっかり拭き取った後、天ぷら衣にくぐらせた。そう、今回は天ぷらをメインに作ることにしたのだ。
支給されている鍋の中に油を注いで火にかける。少量の天ぷら衣を鍋に垂らして温度を確認した後に魚と山菜を揚げ始める。油が跳ねると危ないので高尾には離れてもらった。
揚がった天ぷらの油を切った後、軽く塩をまぶして盛り付けた。ちょうど木下がやってきて魚がいい感じに焼き上がったと伝えに来た。米が炊きあがるまでもう少しかかるそうなので皿などを準備して待っていることにした。
「なあ、さっきなんで嘘ついたんだ?」
「え、ああ、あのときか。簡単なことだよ、あのまま話してたら朝凪さんが大変なことになるだろ?だから俺が馬鹿にされれば済むんだったらそのほうがいいだろ」
小栗にさっきのことを詳しく聞かれたのではぐらかすわけにもいかないのでしっかりと答えた。真面目でしんみりした空気にならないようにちょっとふざけた口調をはさみながら。
「なんか高橋って損な性格してるよな」
テーブルを拭きながら小栗がボソッと言った。たしかにそうなのかもしれない。でもそれでことが円滑に進むのならこれでいいんだ。
「しっかしこのグループの女子は当たりだよな」
「そうそう、あの氷の令嬢の冬城さんにの紗倉までいるんだからな」
「他の女子もめっちゃ可愛いし」
「ほんとそれな。あ、冬城さんといえば高橋、実際どうなんだよ」
「は?」
高尾たちがグループの女子たちがどうだの言って盛り上がっていた。実際四人とも顔が整ってるしあいつらの意見には賛成だ。そんな中、急に話題を振られて素っ頓狂な声が出てしまった。そのまま高尾が問い詰めて来た。
「とぼけんなって。運動会であんな事があったんだ、もう付き合ってるんだろ?あの氷の令嬢とどこまで進んでるのか気になるじゃんかよ」
「あ、その事か。悪いがそんな想像通りじゃないぞ。前提として俺たちはまず付き合ってないからな」
「「は?」」
高尾と小栗の声が重なった。木下は普段からよく喋る性格では無いため反応しなかったのだろう。いや、動揺して完全に固まっていた。
「いやいや、完全にあの後告白して付き合う流れだったろ」
「告白もしてないし付き合ってないぞ」
「え、あの後何もしてないのか?」
「特には。家に呼んで一緒に夕飯食べたりとか、今回の林間学校のための買い物を二人で行ったくらいだな」
「「「それでなんで付き合ってないんだよ!!」」」
「うわぁ!急に大声出すなって」
意味がわかんないというように詰めてくる高尾。本当に何もなかったのか事実を確認してくる小栗。普段は静かなのに大声でハモった木下。三者三様(?)のリアクションをとった。
「なんだかお前が臆病なのか大胆なのか分からないよ」
「僕も同感だ。まぁ、ここまで拗らせてるとは思わなかったけどな」
俺がずっと避難されている間にどうやらお米が炊けたらしい。炊きあがりを待っていた女子たちが炊きたてのご飯をお椀によそって持ってきた。
「さて、そろそろ食べますか」
「さんせー。早く早く」
「それじゃ、いただきます」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
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