第6話 良戦甘闘

魔物化…ね。


正直聞くには聞いてたけど初日に出てくるような安っぽい敵じゃなかったはずなんだけど。まぁでてきたんだからしょーがない。


僕とデカブツ...(いや、くまの方がかわいいか)

僕とくまとの距離は離れている。


僕は投擲できるような魔法をもって無いが向こうはどうだ。

いや、魔物とはいえ所詮動物。使えたとてろくに扱えやしないだろう。


警戒すべきはあのパワーだな。一振り…それも僕をなめてかかった軽めの殴りで大木が数本逝った。

食らうと面倒だ。回復なんてその術がないしぃ。

攻撃はよけて近接に持ち込み、できれば一発で…


「「ぶっとばす‼」」


 僕は迷わず走りだす。くまも同様に走って向かってくる。

 くまさん、大きく振りかぶって、殴りました!

 僕は立ち止まらず向かってくる拳をかわすことに専念する。


「ガキが調子に……」


くまさんお怒りの様子。


「ぅのるなぁあああああああ‼」


あこれラッシュだわ。うわぉ。こりゃあもう…






《-神術-》





―――――――――――――――――――――







なぜ俺様の図体に穴が開いていル...


 一秒も満たない前。俺様はあのガキに向かって乱打を繰り出しタ。到底避けられるスピード、手数、威力じゃなかったはずダ。

 だがあのガキが何かつぶやいた瞬間、その姿を消し、後ろから声がすると思った時には、俺様の腹は、ぶち抜かれていタ。






――――――――――――――――――――――



解説いたしましょうー


僕はあの時…うん無理だと思った。避けらんない。

あと唯一残された僕のアドバンテージ。


《-神術-》もとい《万象途絶》


ラッシュを前に、防ぎようも避け様もなかった僕はこの御業を使用した。


ちなみ、僕はこれを使うとき、「《神術 万象途絶》」とつぶやくことにした。

なんか無詠唱感もあっていいでしょ。


はなから「《万象途絶》」とはつぶやくつもりだったんだけど、なんだか物足りなくて、《-神術-》ってのを追加した。

どう?かっこいい?でしょでしょ。


この"神術"ってのは僕の技の総称にしようと思ってる。神ってのはGODなぴかぴかじゃなくて、僕の前世の、いわば旧姓からとった。だから……


 





くまはおろか、僕と僕の持ちモノ以外の万象が全て静止、ないしはされた。


地面を蹴ってくまを跳び越え1回転して背後に着地する。

残りは52秒。

僕はたっぷりと魔力を拳にこめていく。


のこり15秒。のこり10秒。のこり7秒…そろそろだ。


僕は悠々飛び上がる。


のこり3秒。




「溜まったね」











…だから、万象途絶を用いた攻撃の型はこう呼ぶことにしたんだ。











―応用神術―


光芒貫穿こうぼうかんせん





くまさんに触れるやいなや、僕は溜まった魔力を開放。

同時に万象途絶が終了する。




―――――――――――――――――――



結果、今に至る。

 くまさんの胴体はドーナツと化し、その穴から覗くに先とは比べ物にならないくらいの量の木が倒れ、地面にはクレーターみたいなのができている。


「ありゃま」


この世界って温暖化が深刻な問題として取り上げられたりしてないよね?

してたら僕もう歩く環境破壊じゃん…


「これ何発もやったらいつかこの星が月になるな」


さてと、くまさんの方は大丈夫でしょうか。なんかギリまだ息があるな。


「まぁ森歩いてただけで殺された旅人が何人もいるって話だし。奇跡的な生還者が書いた本に載ってたやつか?もしかしてお前って有名なのか?」


くまさん、沈黙。


「まぁ無理もないか。ポンデリングになってるし」


すると、くまから魔力が目に見えて抜けていった。なんかしぼんでいく。


どしーん、とくまが倒れる。

魔物化しなけりゃただの熊として生きてたろうに。

知性ってのはなかなかどうして…




――――――――――――――――――



くまを倒した方角に向かって全力でRunninng now.


そして、やぁっと出ましたSOGEN‼

いやぁ良戦甘闘を繰り広げたあとだからか開放感が違うねぇ。


やっぱ旅と言ったらこうでしょ!

僕は全速力で草原を駆け抜ける。

青い空、日差しに照らされ風が吹き、自然を僕は抱いている。


まぁどっちかといえば風をおこしているのは僕なんだけど。

僕が走った軌跡は雑草とかが全部抜けて、遠くの鹿みたいなのがめっちゃ驚いてる。

目をかっぴらいて。口をあんぐり開けて。うぇって。


多分だけど、この走りは当分続く。だって果てが見えないんだもん。

え、いつまで走りゃいいの?

なんかいまさら止まるの恥ずいんだけど。

え、なんかかっこよくナレーションつけとこう。


彼は走り続ける。

地平も、水平も、その彼方さえ、いずれ越すに違いない。

何人なんぴとたりとも、たとえ一分だって彼を止められやしない。

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