第11章 一緒に
112話
「リューズナード・ハイジック……何故ここに……!?」
広い建物の中央部で、ロレッタを迎えに来ていた兵士が声を上げた。確か、アドルフと呼ばれていたのだったか。名前など、どうでもいいが。
王女はどこだ、と。テロリストさながらの台詞を吐いて警備兵から聞き出した
そんな建物の最奥。出入口から最も離れた隅の所で、一小隊ほどの人数の兵士に囲われながら、ロレッタが驚いた表情を浮かべていた。兵士たちと揃いの装束を着ているし、なんなら怪我をしているようにも見える。本当に、戦場へ放り込むつもりで準備を進めさせていたのだろう。ああ、嫌だ。
真っ直ぐ彼女の元へ向かいたかったが、そうするには、自分を取り囲んでいる目の前の兵士たちが邪魔だった。
「どけ。お前たちに用はない」
「……目的は、ロレッタ様か? 絶対に通すな! 殺してでも止めろ!」
以前、ミランダはリューズナードについて、殺すことも考えた、と話していた。その為、兵士たちの間でも「最悪の場合は殺しても問題ない」と認識されているらしい。どこの国の王族も、役に立たないと見切りをつけると、最後には決まって命を奪おうと画策してくる。まったく、迷惑極まりない。
ロレッタだけだ。奪うどころか、無償でたくさんのものを与えようとしてくる王族は。
アドルフの号令を受け、目の前の兵士たちが一斉に動き出した。出入口を背にするリューズナードを取り囲むように陣形を作る。全員、無闇に近付いては来ない。一定の距離を保ったまま、両手を前に突き出して狙撃の構えを取っている。リューズナードには遠距離攻撃の手段がないのだから、当然だ。
やがて兵士たちの手が輝き出し、青く色付いた衝撃波が放たれた。一人ずつ微妙にタイミングをずらし、絶え間なく次々と発射してくる。魔法同士が衝突して打ち消し合ったり、味方に当たって同士討ちになったりするのも防げる位置取り。しっかり訓練されていて、舌打ちしたくなってくる。
それでも、リューズナードは冷静に、全ての攻撃を視界に捉えて順番に躱していった。同時に少しずつ間合いを詰めて、適当な兵士の一人へ切り掛かる。相手の兵士はすぐさま魔力で槍を生成し、応戦してきた。同士討ちを避けるべく狙撃が中断され、周囲に居た複数人の兵士たちも槍を構えて攻め込んでくる。
振り下ろされる攻撃を一度刀で受け止め、すぐに体を捻って往なすのを繰り返した。静止するわけにはいかない。一つの攻撃にばかり構っていると、四方から繰り出される別の攻撃であっという間に串刺しだ。
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