第40話 女神様との日々
そして翌日学校に行くと、みんなから驚かれる。
真里が歩いて登校している事に。
「真里ちゃん。歩けるようになったんだね」
百合が早速真里に話しかけてきた。
「うん。なんでかわからないんだけどね。お医者さんも奇跡って言ってた」
「そりゃ奇跡だよ。驚いた……」
「しかも、俺の親父も逮捕されたしな」
そんな会話をしていると、先生がホームルームをやるぞと言ってきた。それでみんな「やべ」などと言いながら席に戻る。
「今日は転校生を紹介する。三木谷弘美さんだ」
弘美は頭を下げる。それを見て一部の男子が「うお、可愛い」などと口々に言った。
「みんな三木谷さんと仲良くするんだぞ。何しろイギリスから来て日本のことはまだよくわかっていないんだから」
それを聞いて、みんな「帰国子女?」などと騒ぎ出す。
「先生が今言った通り、イギリスから来ました。なので日本人なのにこの辺りの事はよくわからないので、色々教えてもらえると嬉しいです。特に、真里さんと正晴くんには」
それを聞いてクラスの目が一気に二人に向く。
「真里ちゃん。知り合いなの?」そう訊くのは百合だ。
「知らないよ。ねえ、正晴くん」
「ああ」正晴は肯定する。
「まあ、覚えていないのも無理はないと思います。だって会ったのはだいぶ前ですから」
嘘は言っていない。だって、ティアとルティスと雅夫が共にいたのは十七年も前のことなのだから。
「そういうわけで、席は長谷川の隣に言ってもらう」
「わかりました。先生!!」
そして、席に近づくや否や、「よろしくね。あと、今日来たのは仕返しだから」と、弘美は二人に言うのだった。
その後、三人は仲良くなる……訳がなかった。正晴と真里にとって弘美はあくまでもミステリアスな存在だ。それに奇跡が起きた翌日に転校してきたこともある。
弘美も弘美で、積極的に話しかけるような事も無かったので、結局昼休みまで一言も会話が生じる事は無かった。
「ねえ、」だが、そんな中、先に仕掛けたのは真里だ。
「あなたが来たのって、私の足が治ったのと何か関係がある?」
真里は思っていたことを口に出した。
「ええ、もちろん。だって、その足を直したの私だもん」
あっさりとそう口に出す弘美に対して真里は「え?」と、驚きの言葉を口に出す。
「ごめんごめん。でも、嘘じゃないわ。だって私女神なんだもん」
さらなる発言に真里は信じられないって顔をする。
「待て待て、」正晴が机を手でバンッと叩く。
「それが本当だとして、なぜこんなところにいるんだ?」
「それはティアの真似がしたかったのよ」
「ティアの真似? ティアって誰だ?」
「私の友達、もういないけどね」
そう、悲しそうな顔をする弘美を前に少しだけ悲しい顔をする真里と正晴。
「でも大丈夫。ずっとそばにいるから」
本当に今まさにそばにいる。
しかし、弘美にはそれは言えなかった。真里は今はティアとは別の人生を生きている。本来は関わること自体禁止みたいなものだ。だから天空法ギリギリの行為をしているルティスには真実が言えるはずがない。
「まあでも、そんなものは置いといて、私はあなたたちと友達になりたいの。だからお願い」
「まあ、それはいいけど」
「ああ、俺も」
「じゃあ、真里と行きたいところがあるの。この前は脱獄囚の処理とかで、ティアとはあまり遊べなかったから」
「脱獄囚?」
真里は聞く。
「いえ、こっちの話。早速ゲームセンター行きましょう」
そして、弘美は真里の手を掴み、教室の外に連れ出そうとする。だが、それを止めるのは正晴だ。
「今は昼休みだぞ」
その言葉にして、「そう言えばそうだったわ」と、弘美は小声で呟いたのであった。
そして放課後。三人は歩いてゲームセンターへと向かう。
「私も暇じゃないのよ。だって仕事があるから」
「それは天空の?」
「そう、だから働きながら学校に行くって言う感じね」
もう、放課後には前日の奇跡もあって、弘美の女神設定も信じた二人。前世での因果も関係しているのだろう。
「ちなみに私の本名はルティスだから、そう呼んでくれればいいわ」
「わかった!」
そう元気よく言う真里、そんな会話をしているうちにゲームセンターへと到着した。
「さて、私はティアじゃないから、ズルはしないでやりましょうか」
「ティア?」
「こっちの話」
早速、三人は太鼓の名人の前に来た。
「これが、太鼓の名人ね」
弘美はそう呟き、お金を入れる。ちなみにこのお金は女神の力で製造したものである。
ズルは嫌いな彼女だが、これは下界で生きるためには仕方ないのだ。
「行きますよ」
弘美はそう言って真里に「あなたと対戦したいわ」などと言う。
「私太鼓の達人やったことないんだけどなあ」
そう呟きながらも、前に行く。
流れる音楽は大ヒットアニメソングだ。二人ともいい感じで叩いている。
「お、いい感じじゃねえか。二人とも」
正晴はそう呟く。実際二人ともフルコンボなどではないが、十分の九は叩けているように見える。
難易度は中くらいとは言え、なかなかのもんだ。
しかも真里は車椅子を脱却したばかり。正晴はそのうまさに感心した。
結果は真里が僅差で勝った。
「うぅ、悔しいわ。次はこれで勝負よ」
キングカートだ。
二人でマシンを決め、走り出す。
それを見て正晴は「完全に観戦役に回されたな」と呟く。二人が次々に色々なゲームで遊ぶせいで、仲間に入れない。
その後も二人で色々なゲームを次々にやっていく。その姿はまるで久しぶりに会う親友のようだった。
「はあ、楽しかった」
「ええ、楽しかったわ」
二人はそう言ってハイタッチした。
「お前ら絶対今日昨日会ったような仲じゃねえんだよな」
「言ったじゃない。私と真里は昔会ってるって」
「私はそれ知らないんだけど……」
「ふふ、それは当たり前ね。さて、今日はもう遅いから帰りましょうか」
「そうだな」
「ええ」
「「「また明日」」」
三人はそう言って分かれた。
この日々が続くことを確信しながら。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
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女神様との日々 有原優 @yurihara12
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