第2話 黒い気配

ある日の夜、もう既に10時を

時計の針が回る頃の時刻であった

だろうか。


プロボクサーを目指す一人の

青年が、とある公園に続く雑木林の一本道をランニングしていた時の事である。


公園に差し掛かる林の中から

何やら奇妙な音が聞こえてきた。


「ドックン…ドックン…」


「何だ、この音…!?」


青年は被っていたフードを

背中にスッと払いその音の場所へと

それほど警戒も怖がりもせず

興味本位で近づいて行った。


するとそこには、割とガタイの

いいサラリーマン風のスーツを

キッチリ着こなしている一人の

男性が暗がりの中、自分の胸の

あたりを庇うかのように何やら

うずくまっている。


「あっあの…どっどうしました?」


と青年はそのサラリーマン風の男性

に思い切って声をかけてみた。

すると彼はこう言った。


「見えませんか…?」


サラリーマン風の彼はこう言う。


「なにがです?」


青年がその問いに答えると

サラリーマン風の彼は徐ろにムクッ

と立ち上がりとある方向へ人差し指

をさした。


青年は彼の言うがままにその方向へ

顔を向けて見た。

青年は一体何の事かと問う。


「 何かあるんですか?」


その問いにサラリーマン風の彼は

こう言う。


「 真っ黒モノが見えませんか?

あの方向から… 」


「 真っ黒いモノですか?」


青年はその時、このオッサン

頭がイカれてんじゃないか、

もしくは、わざわざ親切ついでに

声をかけてしまった自分をただ

オモシロ半分にからかっているんじゃ

ないか、きっとコイツ関わったら

ヤバい奴だ !!


と思った瞬間青年はその

ヤバそうなサラリーマンをほっといて

サッサとランニングの続きをしようとした時の事であった。


「 ドックンッドックンッドックンッ

ドックンッドックン… 」


といった今さっきまで聞こえていた

音が更により大きく聞こえてきた

その瞬間、青年は咄嗟に思わず

サラリーマンが今さっき人差し指を

さした方向に振り返ってしまった。


「 うわーあァ~!!」


何を青年はその時見てしまったのか

彼の叫び声はその場所の闇夜の空を

裂くようなほどに公園の方に

まで響きわたった。


その日は珍しく全く公園に人通りも

無く青年の叫び声は誰の耳にも

届く事はなかった。



夜の10時半を時計の針が回る

出来事であった。


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