第14話 魔女
ハウンドの言うとうり二階の奥に行くと檻に入った小柄で銀髪の女性がいた。
こちらに背を向けて蹲っているので顔は見えないが、体格的には小さくて好みだ。
「うーん見た目はOKだが肝心の中身はどうかな~?」
超高圧ウォーターカッターで鉄格子をカットするとこちらに気が付いたのかゆっくりと顔を上げた。
こちらを見る目はとても綺麗だった。
アメジストを思わせる紫色の目魅入られた様に見つめていると小さい口が動いた。
「アナタは?」
「俺はオーキス、魔女のハートを射止めに来た男だ」
我ながらもうちょっとマシな言葉を掛ければ良かったかな?と思ったが、今更言い直せない雰囲気だしこのままで。
「そう‥‥でもムダよ、私の近くに居ると不幸になる」
「そうか?」
先程は気が付かなかったが彼女が動く度に両手を拘束する真っ黒の枷から延びる鎖が音を立てるので取り合えず拘束を壊す為にピアノ線で破壊としようとしたが、ピアノ線が切れた。
「おや?その枷…特別製?」
「そう、魔力を拡散させてしまう魔法の枷」
「ぬぅ…」
魔法を拡散させるのは厄介だ。
枷に魔法や魔法で構成した物を当てると魔法を構成する魔力が拡散されて魔法が維持できなくなるのだろう。
「鍵はあるのか?」
「無いわ」
「それは紛失したとかの意味?」
「違うわ、この枷を外す鍵自体存在しないの」
「は?」
「大分前に死んだ性根の腐った神官が特別な儀式で付けた枷だから一生取れないの」
「‥‥そうか」
なんとまぁ酷い話しだ。
もしかしたら彼女がそれ相応の事をしたのでこういった処置になったのかもしれないけが‥‥にしてもやり過ぎな気がする。
とは言え、今その神官に文句を言っても仕方ないので当時の状況を聞けば何かヒントになるかもしれない。
「この枷を付けられた時の事は覚えてる?」
「かなり昔の事だから忘れたわ」
「どのくらい前の話し?」
「多分1~200年前」
なぬ?
1~200年前だと?
これはもうビンゴなのでは?
彼女こそ探し求めていたロリババアで間違いないのでは?
落ち着け俺‥‥確認すれば済む話しだ!
「ゴホン‥‥‥ところで君何歳?」
「多分200歳くらい…」
「家族は?」
「とっくに死んでる」
「そうか‥‥」
ありがとう熱血衛士長さん!
貴方のお陰で俺は運命の相手と出会う事が出来ました。
お礼は期待しててください。最高の魔道具を進呈します!
「それで君の名前は?」
「私?私は『サイサリス』」
「核かよ‥‥」
「かく?」
「なんでもない、サイサリス。君をこの薄暗い世界から解放するよ」
「無理よ」
「やってみてからのお楽しみだ」
「そう‥‥‥ならもし自由になれるなら私は貴方のモノになるわ」
「それは嬉しい誤算だ、じゃぁ始めるよ?」
さて‥‥ここからは本気モードだ。
まず状況の整理をしよう。
あの枷は儀式によって付けられた枷で魔力を拡散させると言った。
つまり魔法無効化だ。そうなると物理で破壊すれば良いと考えるからそこを補う為に儀式を行い物理攻撃に対する守りを高めているのだろう。
つまり物理耐性付きという訳だ。
物理耐性、魔法無効の枷‥‥確かにサイサリスが諦めるのも判る。
だが!彼女とお近づきになる為にはここで頑張らないといけないので諦める気はない!
いくら拡散すると言っても一度に拡散出来る量には絶対に上限が有るしいくら耐性が有ると言っても枷の構造を破壊できる程のエネルギーを充てれば耐性を抜いて壊せるはずだ。
なので取り得る方法は一つ。
ありったけの魔力をピアノ線に押し込んで枷に触れた瞬間に解放する。
そうすれば圧縮→解放で生まれる莫大なエネルギーで枷を破壊できる。
がしかし制御を間違えるとここら辺がクレーターになる。
「まさに一世一代の大仕事だ」
「何をするの?」
「莫大なエネルギーを一点に集中させて枷を破壊する」
「‥‥出来るの?」
「やるさ」
ニヒルを気取った顔でピアノ線を生成し魔力を込める。
そしてその魔力を圧縮して更に込めるを繰り返す。
「これは‥‥きついな」
どのくらい込めたか判らないが、段々と制御が出来なくなってきた。
反発する磁石を力で押し付けている感覚でちょっと力加減を間違うとはじけそうになる。
(そろそろ制御が出来なくなってきたな…これでイケるか?)
とは言えこれ以上は暴走するだけなので一抹の不安が頭を過るが、ヤルしかない!と気持ちを鼓舞し彼女の枷に狙いを付ける。
「いくぞ…枷を外に向けてくれ」
「‥‥うん」
サイサリスが窓に向かって枷を掲げた瞬間に魔力を圧縮したピアノ線で切断する。
すると
パキンと乾いた音と共に枷が壊れた。
「賭けは‥‥俺‥‥の…勝ち」
そして意識を手放した。
★★★★★★★★
「‥‥‥っは!!!」
「はぁ、はぁ酷い夢だった‥‥」
お気に入りの少女が一瞬で大人に成長して自分に迫ってくる‥‥悪夢だ。
なぜ少女のままで来ない!?
しかもどうせ大きくなるなら熟女まで成長して欲しかったのに20代とか‥‥お呼びじゃないんだよ!!
もっと熟れてから来いよ!!!
とまぁ酷い夢だった。
「そう言えばサイサリスは?」
「私ならここよ」
「?」
声のする方向を見るとシーツに包まったロリが居た。
「夢?」
「夢じゃないわ‥‥‥ん」
これは夢だろう‥‥運命の女性に出会い、ピンチを救い、意識を飛ばし、目覚めのチュー。
「我が人生に一遍の悔いなし」
「もう‥‥」
月明りに照らされた頬が少し赤いのは気のせいだろう。
「…月?」
あれ?何で屋根が吹き飛んでるの?しかもいつの間にかベットインしてるし!
なにがあった!?
サイサリスに聞いた所、枷が壊れて俺が意識を失って倒れた瞬間にピアノ線から空に向かって物凄い魔力が放出され屋根を消し飛ばした。
その直後、様子を見にきた熱血衛士長さんとひと悶着あったが事情を話すと納得した様で言伝を残してハウンドを連れて帰って行った。
そして気絶した俺をベッドに運び添い寝してくれたそうだ。
「成るほど、まぁ無事でなにより」
「全く‥‥そうだ、衛士長さんから伝言「こっちは2日後に調査に来るからそれまでには用を済ませてくれ」だそうよ」
「了解~」
「ところで用って何?」
「それはお宝を頂くのさ。彼らは俺のお財布だもの」
「そ、そうなんだ‥‥」
「まぁね‥‥」
ぼふっと体をベッドに倒し、夜空に浮かぶ月を眺める。
「ねぁサイサリス?君はこれからどうするの?」
「私?なんで?」
「故郷に帰るのかなって思って」
「?貴方はそうして欲しいの?」
「ん?」
「え?」
「だって自由なんだよ?」
「言ったじゃない、もし解放出来たなら貴方のモノになるって」
「それって本気だったの?」
「もちろん。正直解放できるとは思って無かったし、もし解放出来たならこの命を懸けて尽くすって決めてたし」
「そうか‥‥」
(俺としてはお近づきに慣れればイイなってくらいにしか思ってなかったけど‥‥理想のロリババア様だしな。一緒に居るのも悪くないかもな)
「なら今日からは一緒だ」
「はい、貴方」
「それは別の意味に聞こえるよ?」
「別の意味?」
「夫婦って夫の事を『アナタ』って言うよね」
「結婚するの?」
「それはおいおいで今はお互いを知る所から始めようよ」
「判った。貴方がそれでいいなら」
そう言って笑うサイサリスの顔はとても美しかった。
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