第13話 頭だけ異世界だ
作戦決行当日。
「頭だけ異世界だな」
「言うな」
マジで異世界な恰好をしているのは熱血衛士長だ。
機動力を重視したからか胸当て以外はかなり軽装なのだが、頭にV字アンテナ付兜を付けて、腰に二振りの剣をぶら下げている。
ピカピカの機動戦士兜がミスマッチ過ぎて逆に怖い。しかも魔力が流れているのか光ってるし。
「で?作戦は?」
「目撃者は残さないだな」
「はぁ…また俺の
「では‥‥とっかんー!!!」
西の盗賊団の拠点を今まさに強襲する所だ。
(ともあれいつも通り片っ端から排除していって最後にお宝をかっさらうだけなので逃げられる前に仕留める!)
拠点を巡回している兵士を一人ずつ遠距離から仕留め死体を隠しながら拠点に近づく。
西の盗賊は2階建ての屋敷を拠点としていてそこそこ広い庭には大勢の見張りが居るので流石に忍び込むのは無理だ。
なら正面突破だ。
「とりあえず目立ってくれ。その間に遠距離から仕留める」
「判った」
そう言うなり屋敷の入り口から派手な音を立てながら熱血衛士長が乗り込んだ。
「そこまでだ!社会のクズども!この聖剣エターナル・デスで貴様らを浄化し魔剣エターナル・デス・ツヴァイで地獄に送ってやろう!いくぞー!」
(いやー意外とノリノリですねぇ~)
物陰に隠れながら変態博士の極めた魔力制御力を遺憾なく発揮し彼の動きに合わせてピアノ線を操る。
「こ、こいつは首切りだぁ!!!」
「オイオイ!聞いてねぇぞ!うあぁ!!!」
「くっそ!やっぱり魔剣だ!見えない斬撃が来るぞ!」
「ギャァァァァ!俺の腕がぁ!!!」
「早くぼ・・・・・す・・・・・に・・・・・」
「オイオイオイ!後ろにも飛ぶのかよ!!!バケモンだぁ!!」
基本的オーキスの仕事は援護だ。
前衛で熱血衛士長が敵を引き付けている間に不意打ちを仕掛ける。
また彼の死角をカバーする様に後ろや横の敵を優先的に排除する事でバックアタックを防ぐ。
「っふ!・・・・っはぁぁ!!」
「お見事」
「ふーーーいやお前さんの援護のお陰だ。後ろを気にしなくて良いのはかなり楽だ」
「それは良かったよ」
見える範囲の賊の最後を切り伏せた熱血衛士長が息を整えていると屋敷の中から首に金属製の筒を付けた大男とその取り巻きが出て来た。
すると取り巻き達は首に金属製の筒を取り付け勝ち誇った顔をしていた。
「クハハハ!てめぇが『首切り』か!」
「いかにも」
「残念ながらこの首輪が有る限りオレの首は狩れないぜぇ?」
自分の首に付いた首輪をコツコツと叩きながらあざ笑う大男に続く様に取り巻きのチンピラが「残念だったなぁ!」とか「お前の快進撃もここまでよ!」とか安全圏からあざ笑ってくるので、ちょっとカチンときた。
(フハハハハハ!首輪一つで勝った気でいるのは大間違いだ‥‥結構制御が難しいが超高振動で切り裂く!)
「クハハハ!この特注のぼうぐ・・・・・」
「「「「‥‥え?」」」」
熱血衛士長さんを含めたその場の全員が呆然としていた。
金属製の防具ごと真っ二つに切り裂かれたので当然の反応と言えば当然だ。
「ククク…俺の剣を金属ごときで防げるとでも?」
「な!?」
「え?あ、ちょ!」
(こういう場合『誰が言ったか』は重要ではない!『何を言ったか』なのだ!なので後ろに居る俺がそれっぽいセリフを言って混乱させればいい!)
「こ、コイツは!ぎゃぁぁぁ!」
「く、来るな!来るな!来るな!」
「く、首輪が役に立たないのかよ!!!」
「ギャァァァァ」
「なんでぇぇえ!!!!!」
金属製の防具の上から遠慮なくスパスパする。流石にピアノ線に超高振動を再現するのは骨が折れるので半分くらいは顎した当たりから飛ばしてしまった。
なんて簡単な仕事でしょう!と思っていると熱血衛士長が腰に下げた2本目の剣を抜いた。
「ヤバそうなのが来るぞ!」
熱血衛士長の緊張した声は初めて聴いたのかもしれない、しかも二刀流でかかる相手って事はそこそこ弱いのかな?
ここに来る途中で聞いたが流石に剣2本を自在に扱うのは難しいらしく、今も訓練中だそうだ。
なのでその訓練中の二刀流でヤバそうな奴の相手とか完全に舐めプじゃん。
(まぁいよいよヤバくなったら不意打ちで仕留めるけど‥‥一旦は様子見だな)
すると屋敷の扉が開いて、三人の男が姿を現した。
「てめぁが噂の『首狩り』か?その派手な兜は余裕の表れか?」
「あんたは?」
「俺はこのブラッドペインのボス、『狂犬のハウンド』だ」
「ところで魔女は何処に居る?」
「ガキもいるのかよ…おい、ガキの始末は任せたぞ」
「了解っすアニキ」
そう言うなりお供の二人が腰の剣を抜くきながら一歩踏み出した所でごとりと首が落ちた。
その様子にボスは溜息を付いた。
「まさか見えない斬撃を飛ばすとは‥‥お前も魔剣持ちだったか」
「‥‥‥」
「まぁいい…この魔剣の餌食にしてやるぜぇぇぇ!」
魔剣を腰だめに構え走り込んで来るハウンドが熱血衛士長に近づき横薙ぎに剣を振るう。
それに合わせる様に右手に持った聖剣エターナル・デスで斬撃を受け止めるとガキン!金属同士がぶつかり合う音が響く。
「っく!」
「やるじぁねぇか!まだまだいくぜぇ!」
「っち!」
スピードはハウンドに分があるのかヒット&アウェイでなかなか狙いを付けさせないハウンドに辛抱強くカウンターを狙う熱血衛士長、それを観察するオーキス
(全然知らなかったけど‥‥以外に強いんだね!熱血衛士長さん!)
「おら!おら!どうした!?ご自慢の斬撃を見せて見ろよ!!!」
「っく!速い!」
(流石にこのままじゃ埒が明かないし・・・・とは言え動きが早いから広範囲に網を作ると味方も巻き込む可能性があるし)
どうする?と考えているとハウンドの攻撃を利用して距離を取った熱血衛士長は右手の聖剣エターナル・デスを鞘に納め細身の魔剣エターナル・デス・ツヴァイ一本を構えた。
「諦めたかぁ!!しねーーーーーーー!!!!」
二刀流で互角だったのに一刀になった熱血衛士長の不利を見てハウンドは悟った。
(流石に剣二本は重いよなぁ~!ククク!やっぱり俺様は強い!)
ハウンドは目で追えない速度で熱血衛士長に切りかかる。対する熱血衛士長は両手に持ったエターナル・デス・ツヴァイを構える。
「ッハ!!」
「っふ!」
一瞬の交差のあと
「がは!・・・・・おれの・・・・まけ・・か」
ハウンドが崩れ落ちた。
「貴様も強かったぞ」
「首を取らないのか?」
「お前には聞きたい事がある、魔女はどこだ?」
「‥‥2階の奥だ」
「OKOK」
俺は知らない!と言いそうな人なのに意外と素直だな。
「俺はこいつの見張りをしてるから行って来い」
「ありがとう!あ、拘束はしておくよ」
ハウンドの手足を拘束して屋敷のドアを開け内部に突入した。
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