第11話:蛇の道は蛇、クソガキVS猫
「でもバスター、ダークウォッチャーを探すってどうやって? 国? 聖騎士にダークウォッチャーとして目覚める前に潰されるのだとしたら、そもそも殆どいないんじゃ……」
「そりゃああれよ、蛇の道は蛇じゃねーけどよ。後ろ暗い奴らの集まる組織、それか聖騎士と敵対する組織にいるんじゃねーの? 可能性が高いのは聖騎士と敵対してる組織だが……そっちはあんまし気が乗らねぇな」
「気が乗らないのはわたしも同じだけど、どうして?」
バスターとカトリアだと基本的にバスターが方針を提案し、カトリアが続くという感じになるのだが……最近ではそれについていくカトリアもカトリアだなと思い始めた。カトリアは自分の意思が希薄だとかそういった感じではなく、危険を承知で着いていっているだけに思えるからだ。
「明確に聖騎士と敵対してる連中と話しても客観的な話が聞けそうにねーだろ? まぁ、本当の所を知ろうと思ったら、聖騎士にも敵対者にも、第三者的組織にも聞かないとだが……とりあえずは第三者組織っつーか、しがらみのねぇ奴に話を聞きたい」
「なるほど! でも後ろ暗い人たちが集まる組織って犯罪組織っていうか、闇の仕事をする人たちのギルドとかそういうのでしょ? 危ないから嫌だなぁ~」
「おう、だから闇ギルドに正式に加入するぜ。正式加入すりゃ、露骨に敵対行動取るやつもいねーだろ。貴族でも入ってる奴らがいるって聞くしな。おそらく闇ギルドが放置されてんのは、貴族っつーか、ウレイアの上層部がよく利用してるからだ。オレは元から評判悪いからな、多分闇ギルドに入りたいつっても怪しまれねーと思う。つーわけで、早速闇ギルドと接触だな!」
◆◆◆
「お、いたいた! ありゃスリグループだぜ!」
帝都でも観光客の多い芸術品を取り扱うバザー街。バスターとカトリアはそこで獲物を待っていた。
獲物は観光客を狙う犯罪者集団。単独のスリではなく、集団で策を用いる、組織だった犯罪を行う者。そういった者達は、必ず闇の世界で目立つ。つまり、闇ギルドにお伺いを立てている、闇ギルドの一員か、許可を得るために接触している可能性が高い。
そしてバスターの狙い通り、バスターは目的の獲物を見つける。一人が観光客に話しかけ観光客の注意を引く、その間に一人が観光客の視界外からスリを行う。そして盗ったモノを回収役の者に手渡す。回収役は複数の者、今回で言えば4組の実行犯から盗品を回収している。つまり……このスリ集団は、少なくとも9人以上のグループであることがわかる。
「よしカトリア、あの回収役の後をつけるぞ」
「う、うん!」
バスターとカトリアはスリ集団の回収役の男の後をつける。回収役の男は、裏路地の寂れた酒場前で足を止めた。
「おい、テメェらさっきから何、つけてきてんだァ? あぁ!? ッチ、貴族かよ。おれ等に手ぇだしゃ火遊びじゃすまねーぞ?」
「お、後つけてたのバレてたか……やるなぁおっさん」
「てめぇ素人だな? 自分の状況が分かってねぇみてーだな! 自分が猛獣の巣に飛び込んじまったって分からねぇか? 気づかなかったか? おれの仲間に囲まれてるってよォ!」
「ああ、囲まれてるのは気づいてたぜ。でもよぉ、それがなんで猛獣の巣に飛び込んだことになんだ? テメェらみてぇな雑魚がいくらいようとオレからすりゃあゴミ同然なんだぜ? っとよくねぇよくねぇ、別にオレは喧嘩しにきたわけじゃなかったな」
「あぁ? 強がりもそこまでいくと度胸だな兄ちゃん。喧嘩しにきたわけじゃないってんなら何のようだ、貴族のぼっちゃんがよ。そんな上等な服を着て裏側にやってくんのはバカ貴族しかいねぇ」
回収役の男が顎髭をいじりながら、値踏みするような目線をバスターに送る。
「おお、結構話が通じるんだな。助かったぜ、オレはよ、闇ギルドに入りてーんだ。だからお前らみたいな、闇ギルドと関わりのありそうな奴を探してた」
「闇ギルドに入りてぇだ? まぁ……そうか、おめぇさん、見るからにガラが悪そうだ。貴族の社交の世界は肌に合わねぇだろうな。不良なら闇ギルドに憧れもするか、いいぜ付いてきな。渡りをつけるまではやってやる。入れるかどうかはお前次第だがなぁ」
態度で納得されてて草。いいのか……? お前一応勇者なんだぞバスター。田舎のヤンキーみたいな扱いされてていいのか? いや、よくよく考えると、オーグラムってど田舎だし、ガラも悪いから……田舎のヤンキーっていうのはあながち間違ってないのか? ともかく、バスターはすんなりと闇ギルドとの接触の機会を得ることに成功した。
◆◆◆
回収役の男のあとに続き、バスターとカトリアは先程回収役の男が足を止めた寂れた酒場の中、そのさらに奥へと入っていく。そこには地下へと続く通路があり、ぶどう酒の匂いが充満していた。通路を渡り、行き着いた先、鉄製の分厚い扉がバスター達の前に現れた。
回収役の男が鉄の扉についたノッカーを三回鳴らし、手を三回叩き、足で扉を三回蹴ると、鉄の扉はゆっくりと開いた。
「
「ふぅ~~ん? こんな貴族のガキが向いてるのにゃ? まぁいいにゃ、試してあげるにゃ」
扉の奥の部屋、そこには猫耳のついた獣人の女がいた。背は小さく、白髪で幼く見える。回収役の男に三腕と呼ばれた女は見下したような目つきでバスターを見た。
「あぁ!? 何が”にゃ”だふざけてんのか!? ぶっとばずぞ!!」
「はにゃあああああ!? んだとテメェ! 喧嘩売ってるのかにゃッ!?」
バスター、キレる。どうにもこの三腕の語尾の「にゃ」が許せないらしい。闇ギルドに入りたいとお願いする立場で喧嘩を売ってしまう。
「ば、バスター! もう失礼でしょ! 謝りなさいよ!」
「うるせぇ! オラぁ納得いかねぇ! 見た目が猫っぽいからって、安易に語尾をにゃにしてキャラ付けしようとする奴が、許せねぇんだ!! なんだよにゃって、ふざけてんのか? 喧嘩売ってんのか? いや売ってるなこれは、つまり、お前が先に喧嘩を売ったんだからな! この猫!!」
「キシャアアアアアアアア!! もういいにゃ、こいつ殺すにゃ! 貴族だかなんだか知らねーけどにゃ、こりゃ死で償うしか──」
──ドガボカ、ドンガッシャラララーン!!
「はにゃ~~~……????」
「よし、これでわかったか。オレが上でお前が下、よく理解しておけ猫」
「な、なにーーーーーーー!? 三腕さんが一瞬で倒されただとおおおッ!? お前、いやあんた何者なんだ……」
「オレか? オレはオーグラム領主の息子にして、真なる勇者! ドランボウ・サイモア・グラム・バスターだぜ!」
お、終わっとる……猫ちゃん可哀想に……理不尽な理由で一方的に喧嘩売られて、戦いとも言えないレベルで瞬殺されて、しかも生意気なガキがドヤ顔で勝利の名乗りを上げている……最悪だ。これが勇者のやることか!? バスターよ……
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