第10話 病は心から


 私って、ほんとに病気なのかな?

 なんかよくわかんないけど、病名をつけられて、なんかよくわかんない薬を出された。

 青い、猫型ロボットみたいな色のカプセルを毎日きちんと飲むように、なんて言われてしまった。わあ、なんだか未来っぽい、と思ったのだが、口には出さなかった。

 そうそう、こんな風な青い色を使った薬とかって、未来っぽいよなあ。出された薬を袋から出して、眺める。そういえば、あのロボットはどら焼きが好きだった。私も好きだし、買っていこうかな? とりあえず、学校からの帰り道である病院の通りから一本外れ、近道をすることにした。

 おっと、子供とぶつかっちゃう。抜け道にでも使っているのかな? 楽しいよねえ、鬼ごっこ。わ、鳥が飛んでる。つばめかなあ、すずめかなあ。小さくてかわいい。小さいっていえば、昨日のお味噌汁に入っていたしじみも小さかったな。もっと食べられる部分があったら、もっともっと美味しいのになあ。でもそれじゃしじみじゃないのかも。ちぢみ、が語源だっていうもんね。辞書で調べたんだ。この薬も小さいし、なんだかしじみっぽいかも。名前はなんかプラネタリウムみたいなんだけどな。

 あー、なんかこんな思考がむちゃくちゃなのが病気のせいなんだよ云々、みたいなことを言われたような、気がする。先生のメガネがちょっと不思議な模様だったから覚えてないや。テレビの接続端子みたいな名前だったよね、たぶん。たしか。たぶん。あ、和菓子屋さんってこっちじゃなかったっけ。こっちに向かったらケーキ屋さんじゃない? じゃあどら焼き買えないなあ、ショートケーキでも買って帰ろうかな。いや、ここはパイナップルのケーキがいいかもしれない。

 ……? ここ、いつの間に喫茶店になってたんだっけ。『喫茶ひとひら』っていうんだ。あっ。

「きみ、この間の猫ちゃんじゃない?」

 私が話しかけると、思い出したのかどうか、にゃーん、と鳴いた。そっかあ、ここの子だったんだね。

「どうせケーキ食べるなら、喫茶店で食べよっ」

 私が病気かどうかなんて、どうでもいいや。病は気から。気分まで沈んだら、心まで病気になっちゃうもんね。

「すみませーん、固めプリンひとつ」

 というわけで、今日のおやつはプリンになった。

【了】

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