第20話 須藤桂吾 3

 「彼女は、もともとロック系とかは聴かない人なので、Realの曲も全然聴いてないです。

俺のいない時に聴いているのかは、わからないですけど」


「そうなんだ!残念!

そいや、昔もライブハウスに誘っても興味ないって、1回も来てくれなかったな。

じゃ~彼女に向けて出したラブレター、本人には届いてなくて、旦那に読まれてたってことか!

恥っず!!めちゃくちゃハズいやつじゃん!!

ごめんね!旦那さんとしては気分悪いよね!

でも、こう思ってもらっていいから!

Realの曲、架空の人物 Aさんへのラブレターだって。

元々、言われてる ‘’余韻の人‘’ ってのが、空想上の人物で、全部妄想で書いてるんだって!

キミと一緒のところを見たのだって、もう10年前で、そこで彼女のデータ止まっちゃってて、

更新されねぇまんまだから。

実際、彼女を今も好きかどうかなんて、確かめようもないからさ」


この人は、かっこよくて、素直で正直で優しい人だと感じた。



コンコンとノックして、ドアが半分開いた。

「桂吾、俺そろそろ行くけど」

と、桜井龍聖が顔を覗かせた。


「わっ!RYUSEI さん!!」

俺は、立ち上がって大きな声をあげた。


「あっ、どうも。ゆきちゃんの旦那さんだって?」

そう言って、桜井龍聖が部屋に入ってきた。


「あっ、はい!彼女をご存知ですか?」


「花を買いに行かせてもらったよ。1回だけだけどね」


「そうなんですか!あの、俺、エレン・レヴァントの大ファンで、あなたのファンでもあります!」

エレン・レヴァントはoneのボーカル。


「へぇ!俺もエレン大好きだよ!」


「ですよね!oneのライブでのRYUSEI さんのコーラス最高でした!

in the shadowとGet up!get up!get up! 

両方とも、素晴らしかったです!!」

なんか、興奮して話した。


「ありがとう」


「あの、握手してもらえますか!!」


「あ、はい。

あははっ、ゆきちゃん、いい人と結婚したな。

じゃ、桂吾、俺 先に行ってんね!」


「あぁ」


「ありがとうございます!」


俺は立ったまま、桜井龍聖の後ろ姿を見送って、ソファに腰をおろした。

見上げるくらいの身長だった。

俺の胸くらいに腰があるんじゃないか?ってくらいの足の長さ。

めちゃめちゃ、かっこよかった!!

須藤桂吾とはまた違ったかっこよさを持っている。


「RYUSEI さんて、あんなにフレンドリーな方だったんですか?イメージ違った!

笑ったところ、初めて見ました!」

俺は前のめりになっていた。


「なんだかな?普段、握手なんてめったにしないし、人見知りなんだけどな。

キミのことは、いいらしいな」


「あっ、ちゃんと名乗ってなかったですね。

倉田です」

そう言って、俺は名刺を差し出した。


「えっ?神奈川県警?警察官なの?」


「あ、はい」


「マジか!怖え~な~!別件逮捕されないようにしなきゃ!あはははは!」


「白バイなので、別件逮捕はしませんが、スピードだけ とりあえず気をつけていただければ。

運転お好きなんですよね?」


「うん。俺、横横(横浜横須賀道路)とか すげーとばしちゃうから気をつけなきゃ。

あの辺で はってる?」


「あ、それは言えないんですけど、横浜でkeigoさんの車は何度か見かけてます。

白のスープラですよね?」


「え~~~~!!マジで怖いわ!」

笑いながらそう言った。


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