ネイルの意味
「今日は有栖にとっても大事なお願いがあるの。」
大きなポーチや箱をクローゼットから引っ張りだしていた。
「ネイル、してくれる?」
「今まで自分でやってたんだけど、やっぱり限界あってさ。折角だったら有栖にお願いしたいんだけど…。」
サロンに行ってネイリストさんに頼めばいいのだが、そこまでの金銭的余裕と余力はない。
「璃杏の頼みとあらば。」
有栖はあっさりと了承してくれた。
ネイル道具の説明をしようとするも、その必要はないと言われた。
「璃杏の爪を見て興味がでてな。実はリサーチ済みだ。」
こういうところが好きなところだ。世間で言うスーパーダーリン。そのまんま言ったら卒倒しそうだからやめておこう。
「何がきっかけで始めたんだ?」
サロンさながら、ネイリストさんは雑談してくれるようだ。
「高校上がって、周りの女の子たちがやってて気になったの。」
始めはポリッシュで。黒く染めた。
次にジェルネイルを始めた。道具は100均でかき集めて、UVライトは通販でポチった。
「学校いけてない時期があったんだけどね、その時におうちでできる趣味みたいなのがネイルで。」
「ということは、璃杏がやることに意味があるんじゃないのか?」
つやつやに光る爪を見つめる。
「エンドレスにやらなきゃ、やらなきゃって思ってたら辛くなっちゃって。」
自分でも楽しい趣味の一環でやりたかった。それでも、他の綺麗な爪を見ていると、セルフでは好きになれなかった。
「俺は楽しいがな。」
ピンクベージュで彩られた爪はシンプルで、可愛らしかった。
「長くとも短くとも。下手でも上手でも、璃杏が楽しむことが一番だろう。」
そう言って、有栖は集中し始めた。
「…本当に、そういうところだよ。」
何故か照れてしまい、首の向きを変えるのだった。
吸血鬼には、爪紅の文化はない。しては、いけない。それは吸血鬼という存在をより現実に引っ張ってしまうものだから。俺たちの存在を、より強めてしまうものだから。
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