【英雄採用担当着任編】第11話 魔槍
先ずは指から行こうか。ある程度血液を採取したら分析器にかけて血液構造を把握しよう。その次は角でも切り落としてみるか。こいつ確か攻撃する時に角が少し光るよな。よしそうしよう。その次は——。
芳賀はナイフを振り下ろそうとする中でそんな事を考えていた。
時間はある。他の英雄達もほぼコイツに殺されているだろうし、魔族の量も半端じゃない。ここに来るまでは時間はかかるだろう。ゆっくりと確実に事を成すだけだ。
笑いが止まらない。これでやっと会えるかもしれない。みんな。
凶刃が正にゼットフォーの体に触れようとした時だった。
「マスター!!!!!!!!下がって」
ナビが大声で叫んだ。同時に心臓を鷲掴みにされるような不快感が芳賀を包み込む。
頭上だ。空から何かが降ってくる。
その正体を確認する間もなく芳賀は直感で後退した。刹那、大きな衝撃と共に地面に何かが突き刺さり、地面が抉れ粉塵が舞い上がる。衝撃で芳賀は吹っ飛んだ。
反応が1秒でも遅れていたら確実に死んでいただろう。
膝立ちしながらゼットフォーの居る場所を見る。徐々に視界が開けいく。
目に見えたものを見て芳賀は絶望した。
「———そんな。拘束具が」
ゼットフォーが立っていた。何に縛られる事もなく。
拘束具が完全に破壊され、足元に肥大化したまま光を失った指輪の破片が落ちている。そしてもう一つ。ゼットフォーの足元には2mほどの槍が突き刺さっていた。
紫色のそれは黒い光を放ちながら唸り声のようなものを上げていた。
その槍は見覚えがあった。かつての八英雄の一席を屠った魔槍。
「———ゼットワン」
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