第125話 双六盤上の真剣勝負
「——果たして、はくれい殿は、真に大罪人か」
「あの御仁は、初めから、こうなることを予見されていたように存じまする。我らを処刑せんとした折、左様な節が見受けられましたゆえ」
水影が、投獄されたばかりのハクレイとの面会を思い出し、そう答えた。
『——ただ、我らを処刑せんとした折、今の貴殿を拘束する鉄ではなく、縄でもって我らを縛り上げた因果は、巡り巡うて何時の日か、貴殿に舞い戻って参りましょう。その因果は、貴殿が非道になりきれぬ性分だったがゆえの、正しき応報となりまする』
「……
「
朱鷺が二つの賽を振り、四と二が出たことに、ふうっと頭を抱える。その不吉な並びに、首を横に振る。
「……はくれい殿が認めた罪は、大きく五つ。ばるさむ前国王が暗殺、衛兵五十人の処刑、
「左様にございまするな。
水影が
「此度が朝裁に於いては、白黒つけぬとは、いかぬだろうのう。死罪か、良くて残りの人生を暗く狭い牢獄で過ごさねばならぬ、終身の刑よ。次の審議まで、残り五日。我らとしても、せらい殿がためとも思うが……。親子ではないと、あの場にて、はっきりと申されたでな」
朱鷺の言葉に、水影が双六盤上から視線を逸らす。考察の構えで、じっと考える。
「……真に、あのお二人が親子関係にあらぬと、朱鷺様は思われまするか?」
「それが、りいえぬ何とかという結果として、顕著に示されたのであろう? ならば、酷であろうとも、そうだと言わざるを得まいよ」
水影が賽を振る。「ふむ……」と、それでも違和感が拭えない。
「ハクレイ殿はセライ殿に、
「便宜、のう。
朱鷺が賽を振る。
「一層のこと、新国王が『すべての罪を赦す』と言わば、万事解決しようものを。此れがあちらが世の朝裁であらば、俺の鶴の一声で、このもやもやとしたものも、消えよう……」
「
水影が賽の目に沿って、黒駒を動かしていく。
「そなたの申す通りぞ、水影。だが、
そう言って、朱鷺が賽を振った。その目に沿って白駒を動かし、笑った。
「此れにて勝敗が決したのう、水影。
白黒勝敗がついたことに、水影も観念したように笑った。
「ゆえに、此度は俺の意見に
「御意」
水影が
「五つの罪の内、最も疑わしきは、やはり、ばるさむ前国王の暗殺が件。此の件について、再度洗い直したい。王宮内に
朱鷺が水影を意味深く見つめる。水影もまた、主の意を汲み取った。二人同時に、その名を口にする。
「——えとりあ(エトリア)王妃」
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