第89話 鷲尾院の挙兵
地球はヘイアン――
「——院におかれましては、長年の隠岐での幽閉生活、真に
満仲が、少年と青年の間である鷲尾院を前に、
「……うむ」
鷲尾院が
「痛まれますかな?」
「
「左様ですか。それは宜しゅうございましたな」
「宜しゅう……? っふ。不動院、そなた、口だけで物を申すでない」
そう言うと、鷲尾院は立ち上がり、満仲の前まで歩み寄った。さっと平伏する姿勢を見せた満仲の
「
「……院、何を……?」
鷲尾院の指が満仲の左目に伸びる。思わず満仲は身体を引くも、動くことを許さないという面持ちで、鷲尾院が、じっと見降ろしてくる。
「そなたは美しいのう、不動院。あの甥の、
鷲尾院の指で左目を押し潰されそうになるも、ぐっと満仲は耐えた。鷲尾院が屈み、満仲の耳元で囁く。
「冗談じゃ。不動院、そなたも朕と同じ、破壊の道を
満仲が息を呑む。
「……
「その働き、期待しておるぞ、不動院」
「……は」
平伏する満仲の後ろに現れた、一人の僧侶姿の男。顔布を当て、決して言葉を発しない。しかしその瞳は赤く、扱う武器の壊滅的な破壊力から、鷲尾院に従う重臣らからは、“怪僧”と恐れられた。
「新たな戦力は整うたか? あるての」
鷲尾院の問いに、アルテノと呼ばれた男が、ゆっくりと頷いた。背後の“怪僧”に、満仲が、そっと視線を向ける。
「機は熟した。
「おお!」
群臣らの雄たけびに、満足気な表情を浮かべる鷲尾院。その鷲尾院が、じっと見据える先に、雲一つない望月がある。
「国を二分する戦に
左目を繃帯で覆っている以外は、眉目秀麗で美しい顔立ちをしている鷲尾院だが、朱鷺に対する禍々しい憎悪は、左目に隠す病より醜いものがある――。そう満仲は、幼子から青年へと変わりゆく鷲尾院を分析した。
鷲尾院の挙兵により、
鷲尾院による統治が宣言された筑紫島では、日夜『
「——
鷲尾の
朝日を背に、満仲がじっと、河川敷に掲げられた何十人もの死体を見つめる。傍らの
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