第58話 「地球産の万能薬」再び!
三人は動きやすい
「
「左様にございまするな。すぐに怪我人の手当を致しまする。
「はっ……
我に返った安孫が、急いで重症人の下へと駆けて行った。その背中をじっと目で追う水影に、「
「
「ほーむしっく、とな? そなた、一段とこちらが世の言葉を習得しておるようだが……、よもや、安孫に掛けたとかいう呪い、そのほーむしっくとやらが、原因か?」
「ふっ……、何となし、にございますれば」
「まあた
「左様にございまする。其れこそ、このうちゅうとやらの、一等にございますれば」
「ふっ、
朱鷺に冷やかされ、「怖や怖や」と、水影も冗談を言った。
安孫が重症人を運び、朱鷺と水影が次々と治療していく。そこに、大方王宮内の復旧を終えたエルヴァら衛兵らも応援に駆けつけ、何とか怪我人の手当に終わりが見えてきた。そうしてすべてが片付いた後、朱鷺らは、ようやく一息つけた。
「ようやっと怪我人の手当が済んだのう。朝から何も食べてはおらぬゆえ、腹が減ってならぬ」
「おうあんちゃん、お疲れのようだねい」
そこに姿を現したのは、ボロボロの作業服姿の中年男。羽衣商売で財を成した、下町の仕立て屋社長。昨晩の襲撃でケガをし、腕に包帯を巻いている。
「おお、
「なあに。日頃から食っているコレのお陰で、骨折せずに済んだんでねぇ。かすり傷程度さね」
社長が手に持っていた小壺を、そっと朱鷺に差し出した。
「おお! それは我が故郷の梅干しですなぁ! いやぁ、懐かしゅう!」
それは、羽衣装束三十着の工程代と引き換えに渡した、ヘイアンより持参した薬。
「あれから梅の木は、芽を出しましたかな?」
「少しずつな。それよりも、疲れてるんだろう? アンタらもこいつを食って、英気を養ってくれ。それから、怪我人にもコイツを食わせてやってくれ」
「ありがたき、お恵み」
そう言って、朱鷺が梅干しを一つ口に運んだ。
「ふうう。懐かしゅう酸味。されど、疲れは飛びまするな」
安孫や水影、衛兵らも口にし、それを怪我人にも渡していく。
「なぁに。この『地球産の万能薬』の効能を分からせ、新たな商売で儲けようという腹さね」
「流石は商売人! 危機的状況に
嫌味ではなく、清々しい表情で朱鷺が言った。
「とまぁ、冗談はここまでにして。……宇宙人なんざ、本当にいるんだねい」
「ああ。SFの世界だけだと思っていたが」
エルヴァも神妙な面持ちで言う。
「されど、月が世に於いて、壊滅寸でのところまで追いやられた今、
朱鷺が水影に視線を送る。
「……肝となるは、昨晩我らの前に現れし、一人の
「あの御仁、何者にございましょうや?」
安孫が腕を組んで、うーんと考察する構えを見せる。
「さっぱり分からぬ!」
そう言って「がはは!」と豪快に笑った安孫が、ずーんと落ち込んだ。
「
「どうしたんだい、あんちゃん。こんな男だったか?」
「放っておいてくだされ、社長殿。ただの巨漢が、呪いに抗っておるだけゆえ」
「貴殿のせいですぞ、水影どのおおおお!」
夕暮れの照明下、安孫の悲痛の叫びがこだました。
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