第14話 確認
昨日は投稿出来ず申し訳ないです。
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———特に何事もなく一週間が過ぎた。
脇腹の痛みも薬のお陰で引いてきた。
医者からも「もう退院しても大丈夫」との太鼓判を押されたこともあり、今日からバイトの再開である。
「———やあ、やっと復帰だね」
「うす、店長。一週間欠勤してすいません」
今回は完全に俺が悪い。
勝手に戦って勝手に怪我したんだから。
今はクビにされないように謝るしかない。
俺はそんな気持ちで来たのだが……店長は朗らかな笑みを浮かべて俺の肩にポンっと手を置いた。
「気にしないでいいよ。絵里奈たんから話は聞いてるしね」
それに、と店長が肩から手を離し、真剣な表情で此方を見た。
「快斗君———ウチの絵里奈を助けてくれて本当にありがとう」
そう言って頭を下げてくる。
俺はまさか頭を下げられるとまでは思っていなかったので慌てる。
「て、店長!? これは俺の勝手で……!」
「でも、快斗君のお陰で絵里奈ちゃんは今までよりどこか……表情が柔らかくなったんだよね」
「———てんちょー、何言ってるの?」
「あ……絵里奈たん……」
店長がぎこちない笑みを浮かべて後ろを振り返ると……そこには訝しげに俺達を見つめる絵里奈ちゃんの姿があった。
「だからたん付けはアレほどやめてって……はぁ、もう良い、面倒だし。それと……」
絵里奈ちゃんは少し恥ずかしそうに頬を染め、目を俺から逸らしながら言った。
「た、退院おめでとう、か、快斗……!」
…………ふぇ?
俺の思考が停止する。
い、今なんて……?
俺の聞き間違いじゃなければ快斗って言ったよな……?
あの絵里奈ちゃんが俺の下の名前を……!
「さ、佐倉さ———」
「———絵里奈」
「え?」
「絵里奈、でいいから……そ、それだけ!」
かぁぁぁ……っと耳まで完全に顔を真っ赤にした絵里奈ちゃんは逃げるように部屋を出て行った。
俺と店長だけが残る部屋で、俺は深刻げに呟いた。
「…………絵里奈ちゃんが可愛過ぎる件について」
「…………うん、私も強く同意するよ」
ちょっと嬉し過ぎて、テンションバグってるかもしんない。
「やっぱり暇だ……いや、絵里奈ちゃんを見てれば暇じゃないんだけど」
勿論俺が暇だと言ったのは、仕事のこと。
この前のようなことがそう毎日起こるわけでもないのは当たり前だし、ない方がいいに決まっている。
ただ……何もせずコーヒーを飲んでるだけでめちゃくちゃ高い時給を貰うってのも何か気が引けるのだ。
「それにしても……この店の人達、皆んな仲良いな」
俺は色んなところで仲良さそうなコミュニケーションを取り合う従業員達を見ながら溢す。
絵里奈ちゃんも此処では、店長以外には物凄く表情が柔らかい。
まあ……あんな態度なのも店長が弄るのが原因だと思うけど。
それに、此処に来る人達はちゃんと分別が出来ている。
自分が客で相手は従業員。
その店のルールは守る。
当たり前だが、この世にはそれが分からない、出来ない連中が一定数居る。
『
『だから
まぁ……極端な話だとこんな人も中には居るわけだ。
あとはお触り禁止なのに触ったり、外に連れ出そうとしたり……などなど。
しかし、店長曰く、そう言った輩は元から店に入れないようにしているらしい。
だから、この店では笑顔で溢れている。
……うーん、ホワイト。
ホワイト過ぎて逆に裏があるのではと疑ってしまうくらいだ。
まぁ探偵が言うにはこの店に後ろめたい事はないらしいけどな。
なんて無意識に脇腹をさすりながらぼんやり考えていると……。
「———やっぱりまだ痛いんだ」
休憩の時間になったらしい絵里奈ちゃんが対面に座ってジーッと俺を見て言った。
その視線は俺の手が押さえた脇腹に向けられている。
「いや、別に痛くないんですよ」
「じゃあ何で?」
「うーん、何か癖付いた、としか」
初めの頃は動く度に脇腹押さえて動いていたせいか、僅か一週間で何と癖になっていた。
まぁただ長年の癖でもないので、少し意識すればその内治るだろう。
「ところで絵里奈……さん、学校はどうですか?」
声を潜めて周りに聴かれない様に尋ねる。
呼び捨てで呼ぼうと思ったのだが……まぁ案の定無理だった。
てか、こんなイケメンでもない非モテの非リアが女の子を下の名前で呼べるわけない。
「……うん、大分良くなった。少しだけど、私への態度も軟化した様な気がする」
それを聞いて俺は少しホッとする。
恐らく浅村がクラスメイト達に遠回しに佐倉絵里奈に関わるな、とでも言っていたのだろう。
なんて思って———。
「———まあ男子だけ、だけど」
…………つまり、女子からは相変わらずほぼ無視状態というわけか。
まぁ何となく予想はしてたけど、
女子は男子以上に結束力というか……同調圧力が強い傾向があるらしい。
男子は浅村が居なくなったけど、女子はまだ絵里奈ちゃんを嵌めた奴らが未だのさばっている。
反吐が出る。
それに———一つ疑問がある。
「絵里奈さんは
「え? 誰それ。あ、もしかして……快斗の彼女……?」
絵里奈ちゃんがほんの少し不安に瞳を揺らして恐る恐る聞いてくる。
そんな絵里奈ちゃんに俺は堂々と答えた。
「俺に、彼女は居ないです。今まで一度も!」
「…………何か、ごめん」
絵里奈ちゃんは俺の返答を聞き、気まずそうに目を逸らしてジュースに口を付けた。
その姿も絵になっており、とても可愛い。
それにしても……。
「気になるな、黒枝小百合」
絵里奈ちゃんが虐めた、とされる少女にして、現学年一のイケメンの彼女である少女。
何か……きな臭い。
アイツには何かある気がする。
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