第26話 もしかして、私の時代が来ました?(錯覚です)
翌朝、目が覚めた私は顔を洗う為にクリエイトウォーターの魔法を使おうとして思いとどまり、水生成スキルを使って水を出す。
戦闘用でない魔法はMPを無駄遣いしない為にもスキルの方が良いと思ったからだ。
顔を洗った後で魔法の袋からお婆ちゃん達に貰った乳液を出して、それを肌に塗る。
『中級化粧スキルを取得しました』
『中級美肌スキルを取得しました』
『中級美貌スキルを取得しました』
なんかスキルが生えた。
「この世界、本当になんでもスキルなんだなぁ」
まさか化粧品を使っただけでスキルが生えるとは。
しかも初級を飛び越えていきなり中級な事に苦笑してしまう。
初めてゲットした中級スキルが美肌や化粧とかって……
「あ、でももしかしたらルドラアースの化粧品がこっちの世界に比べて品質が良いからかも」
お婆ちゃん達が孫に買い与えるノリで面白半分に買ってきたものだし、もしかしたら奮発して結構良い品だったのかもしれない。
「中級って事はそうなんだろうなぁ」
私なんかにお金使わずに本当の孫にお金を使えばいいのに。
とりあえず向こうの世界に戻ったら、改めて何かお土産を持っていかないとなぁ。
「あっ、こっちの世界の珍しい品をお土産にするのもありかも」
何せここはガチの異世界だ。こっちで当たり前の品でも向こうじゃ見たことも無い不思議な品扱いされる可能性は高い。うん、面白いかも。
「そうなると早いところ地上に出ないとね」
◆
朝食を終えた私は、隠し部屋を出て地上への出口を求めてさ迷う。
その際に何体かの魔物と戦った事で、『跳躍』と『初級盾術』『パリィ』のスキルを取得できた。
『跳躍』は回数ありでジャンプ力を上げるスキル、『初級盾術』は盾の扱いが上手くなって盾で受けた際の防御力がやや上がるスキルだった。
そして『パリィ』は使用すると敵の攻撃を盾で受けた際に自動的に体を動かして逸らしてくれる地味に便利なスキルだった。
ただ便利なだけに回数制限があるけど。
簡単にスキルを覚えれるから、スキルを覚える為の試行錯誤が楽しい。
「おっ、ゴブリン発見」
そんな時、私は物陰に隠れたゴブリンの姿に気付いた。
ゴブリンは瓦礫の陰に隠れているつもりっぽいけど、手にした棍棒が隠れきれておらず、瓦礫の上から覗いてゆらゆら揺れていたのだ。
頭隠して何とやらという奴である。
「なら、『火弾』!」
私は障害物を迂回してゴブリンを攻撃するように、曲がる火弾をイメージしてスキルを発動させる。
「あれ?」
けれど私の放った火弾は弧を描いで回り込むことなく、真っすぐ進んでゴブリンの隠れている瓦礫に命中した。
「ギャギャッ!?」
突然の攻撃にゴブリンがビックリして物陰から飛び出す。
「って、何で!?」
おかしい、私は確かに魔力を込めて……
「ギャギャーッ!!」
などと考えていたら、ゴブリンが棍棒を振り回して向かってきた。そりゃそうだ。
私は小剣を構えてゴブリンを迎撃……しようと思って止める。
ゴブリンの攻撃を避けるとその背中を蹴り飛ばし、反動と跳躍スキルで後ろに大きく跳躍する。
「って、うおぉぉ!?」
意外と結構な距離を跳んでビックリした。
「これ、下手したら天井にぶつかって危ないなぁ」
使いどころを考えないとね。
ともあれ、私は呪文を詠唱すると明後日の方向に手を翳してファイアブリッドを放つ。
「『火花より生まれし者よ 我が敵を焼き尽くせ ファイアブリッド』」
その際に魔力を込めて威力を上げ、更に追尾性能を持たせる。
もしかしたらこの世界では魔法に魔力を込めても威力や性能を変化されされないかもしれないからだ。
その場合は戦い方を大きく変えないといけなくなる。
けれど私の予想に反して、明後日の方向に向けて放った火弾は望んだとおり大きく曲がると、ゴブリンに命中しその体を消し炭へと変えた。
『曲射スキルを取得しました』
『初級攻撃魔法増強スキルを取得しました』
「あれ? なんか覚えた!?」
予想外の状況に困惑しつつも、私はステータスを開いて入手したスキルを確認する。
『曲射:魔法、弓などの飛び道具を使った攻撃を行う際に自在に軌道を変える事が出来る』
『初級攻撃魔法増強:攻撃魔法の威力をやや向上させる』
「これって私が魔法に込めた効果……」
それを見た私はあることを思いつき、それを確認する為に火弾スキルを確認する。
『火弾:炎の弾を射出する 9/10』
「やっぱり、スキルの説明に炎の弾を射出するとしか書かれてない」
つまりこのスキルだけでは、発射した炎の弾をまっすぐ飛ばすだけで、軌道を曲げたり威力をあげたりできないのだ。
「成程、魔法系のスキルは詠唱の手間がかからない代わりに性能に制限があるんだね」
だから色々試して多くのスキルを取得しないと、魔法と同じ性能は得られないようだ。
「ってことは、一度はクリエイトウォーターでお湯を沸かしたりとかする必要があるのか」
なかなかにこの世界、融通が利かない。
「でも一度覚えればかなり強いよね。これとか回数制限が無いから、常時魔法の威力があがるみたいだし」
初級攻撃魔法増強とか、ルドラアースに戻ったらとんでもなく便利だよ。
何せ魔力を込めなくても魔法の威力が上がるんだから。
それどころから、スキルと魔法を組み合わせて威力を二重に向上できるかもしれない。
「うーん、こっちの世界に来てからめっちゃパワーアップしてるよね私。これはあれだね。私の異世界無双が始まっちゃうんじゃない!?」
二つの世界の力を併せ持ったスーパーヒロインアユミちゃん爆誕ですよ!!
「キャーッ、誰か助けてー!」
そして都合よく絹を裂くような乙女の悲鳴が響き渡る。
「なんか前にもあったような展開だけど、待ってろ! 今私が助けに行く!!」
私は『風駆』スキルで速度を上げて悲鳴の聞こえる方向へと駆け抜ける。
「いやーっ! 私なんか食べても美味しくないから! 食いでもないわよー!」
「そこまでだ!」
通路を曲がり、救いを求める乙女の下へとたどり着いた私が見たのは、
「お願い助けてぇぇぇぇっ!!」
実に全長10メートル近い巨体をした、恐ろしい怪獣だった。
「……わぁお」
異世界無双じゃなくて異世界転生しちゃいそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます