2-14 図書館から逃げよう

 書架の間から金色の瞳と目が合ってしまった。もしかしてこれって・・・


「閉館時間です。」


 そう声が聞こえて、私は慌てて借りる手続きをした。薄暗い旧館を、私は本を抱えて早足で歩く。周りに人はおらず私の足音だけが不気味に響く。


 出口はどっちだったかな・・・


 焦って来た道を間違えたらしい。落ち着こう。まずは案内表示を探そう。

 緊張で心臓がバクバクする。きょろきょろとしているとまたあの甘い香りがした。


「み・・・た。」

 

 ひっ!!


 耳元で誰かの声が聞こえた。少年の悪戯っぽい声だ。思わず体が硬直する。


 私は、ホラーが大の・・大の苦手だ!!

 振り向かず、近くに有った階段を思いっきり駆け下りた。一階に着くと同時に―――


 ―――ボーン・ボーン・ボーン・・・・


 時計が時を知らせる鐘の音が聞こえた。


「もう!なんでこんなタイミングよく鳴るの。やめてよ!怖い!!」


 廊下は走るなと教えられてきたが、今日は許してほしい。

 本気で怖い!!出口らしきものが見えたのでそこに向かって無我夢中で走った。もう少しのところで、膝が笑っているのか足を取られて転ぶが、前回り受け身で転がりその勢いで起き上がった時には表に出ていた。


「で・・・出られた・・・・。」


 私はよろよろと立ちあがり、近くのベンチに座った。

 全力疾走で息切れしている。息が整い脚が動くようになるのを確認すると早足に研究室へと向かった。


 旧館の外は幸いなことに、まだ人がいた。


 ・・・本を返しに行くの怖いんですけど。返しに行くときは誰かと一緒に行こう・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る