2-10 催眠(後編)
王の部屋を抜け出し表に出ると、聖女の塔の上に金色の影があった。
あれは―――。
「おーい!モロー!」
モロは
彼は金髪碧眼で色白細マッチョ、白い角と翼と尻尾を持つ美男子だ。サキュバスとインキュバス同志で気軽に話しかけてしまう。
しかし今日の彼には違和感があった。私に気付いた彼が声を掛けてくる。
「よう!マヤお久しぶり。」
その違和感は彼の纏う服だ。
「・・・服どうしたの?・・・心境の変化?・・・大丈夫?」
アイデンティティではなかったのか?私は驚きを隠せず、彼を凝視した。
「服ぐらいでそんな驚くなよ。お前だって布が増えたじゃないか?寒くなってきたから当たり前だろう?リーリが俺を見て寒くないかって心配するから変えたんだ。」
そうだ、私も殆ど露出していない。
いやいやいや・・・私の場合、露出度高めでないと偵察の時は逆に目立つのだ。だからあの時は布面積が少ないのだ。
リーリの真意は分からないが・・・妖精の体は気温の影響を受けないから、暑くも寒くもない。しかし肌寒くなってきたので見ている方は心配になる気持ちも分かる。むぅ・・・どっちだろう。リーリ。
「なるほど。前も良かったけど、今も凄く似合ってるよ。・・・ミステリアスな感じがいいね!」
隠されたことによりミステリアスになったのは確かだ。何を着ても似合うのは羨ましい。
「そうか?そうしたら夏もこの服のままで居よう。それよりマヤ、何でこんな所に居るんだ?」
「国王陛下に用事が有ってね、もう終わって帰る所。」
「そうかお疲れ。―――そうだ!マヤに聞きたい事が有るんだ。マヤは人間の体の時にも妖精に触れたよな?どうやったらできた?」
人間は妖精に触れないのだけれど、私はある時から妖精が触れるようになった。
真夜の君分かる?
(むぅ。わたしが目覚めてからだろう?具体的にはわからないのう・・・)
「・・・どうしてだろう?私も理由が分からなくて、それがどうして?」
「いや、俺も人間に触れるようになったらいいなと思って。前の戦いで、俺リーリに何もしてやれなかったから・・・。」
いつも笑顔のモロの顔が曇った。これは、真剣に悩んでいる・・・。
好きな人には夢以外でも触れられるようになりたい。触ろうとして何も掴めず手が通り過ぎてしまう、その気持ちは分かる。
「そうか・・・。好きな人に触れないってつらいよね・・・。魔術学院で調べてみるよ。すぐに力になれなくてごめんね。」
「いや、ありがとな!忙しい所悪いな。急ぎじゃないから思い出した時にでもよろしくな。そうだ!リーリが寂しがっているから、遊べる日は連絡すんだぞ。あとマヤは妖精歴が浅いから知らないだろうけど・・・今月末の“結星の日”は気をつけろよ。変なのがうじゃうじゃ湧くから。じゃあな。」
そう言って彼は聖女の塔へと戻って行った。
学院の講座と図書館も当たってみよう。それに結星の日って恋のジンクスの日だけではないんだ。モロが言う位だから注意するに越したことない。
むぅ。最近忙しくて頭がパンクしそうだ。とりあえず今日はもう眠ろう。
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