2-08 オリエンテーション(後編)
そう、ルルには少し気になる同期が居ると、以前聞いたことが有る。
ニンマリとしたチャトが動き始めた。席を詰めて自分の隣に座れと座面を叩く。
「ハイ、アレックスここ座って~。」
不思議がりながらも、彼はチャトの隣に座る。そして、あのおっとりでゆっくりのチャトが早口に話し出す。
「アレックスよ・・・もう一押しだね。今月末の“
普段、のんびりした彼女がここまで早口になるとは。チャトはアレックスに名刺を渡して解放した。彼は名刺とチャトを交互に見ながらも「わかりました。ありがとうございます。」と言って去って行った。ルルが呆れながらも感心していた。
「チャトの商魂たまに見るけど、もう別人よね。」
「あんなに早口のチャト初めて見た・・・。アクセサリーオーダー?そういえばさっき言っていた“
チャトがニヤリと上機嫌に話す
「今年は丁度・・・短期講義、最終日に“結星の日”と呼ばれる日が有って、流星群がよく見える日なんだ。星が大地と空を結ぶように見えるから、その日に好きな人にアクセサリーを送って告白すると永遠に結ばれるっていうジンクスがあるんだよ~。まぁ、学校の伝説の1つだね~。そして、そのアクセサリー作成を魔法装具科の一部の生徒が担っているのダヨ。」
「まったく、人の気持ちを逆手にとって・・・」
「え~!人聞き悪いな~。悩める子羊の気持ちを後押ししていると言って欲しいな。作る職人によって成功率が違うとも言われているんだよ~。最近、僕も人気作家と言われるようになってきたんだよ~。何組のカップルが成立したことか~。二人も依頼が有ったら早めにね。」
この学院にもジンクスや伝説が有るんだ。どこに行っても有るものだな。私が学生の時にも沢山あったっけ?トイレに出る幽霊とか、音楽室で偉人の肖像画の目が光るとか。
「他にどんなジンクスがあるの?」
「他にはねぇ・・・『時計の中に居る妖精』でしょ~?後、『月の塔の上に現れる怪人』、『学校の地下迷宮』・・・。」
「あんた、よくそんなに知っているわね。」
「知らないと~、何がチャンスになるか分からないでしょう~?」
とても楽しい昼下がりを過ごした。
◇◇◇
午後の授業が有るらしく二人とは別れ、私は研究室に戻る。先生に貸しだされた研究室だ。その一角に、
「大丈夫ですか?また何か問題が・・・?」
「ああ、昨日『催眠』をかけたろう?あれが良かったらしい。」
「あら、いいことじゃないですか?」
「それがだな、あと2週間ほど通ってもらえないかと、魔術医からシャルに話が来たらしい」
「いいじゃないですか。」
「・・・毎日通えるか?それにシャルがお前にちょっかい出すし。」
「あ~。」
先生の本音は後者だろう。
確かに、子犬のように絡んでくる
「妖精体なら、大丈夫じゃないですか?人間は妖精に触れませんし、バレずに城に入れます。」
先生がハッとして、更に悩み始めた。私は幽体離脱をすることで妖精に成れるのだ。
これは・・・判断が揺らいでる。もう一押しだ。私の催眠で国王陛下の健康が守られるなら、もちろん協力した方がいい。
「陛下の体調が良くならないと、先生の仕事が増えますし・・・先生が王宮に通う数が増えますよ。それに私も彼の体調が良くならないと対価が受け取れません。」
「・・・わかった、妖精体で頼む。シャルには行かないと伝えるが、兄貴には妖精体でマヤが行くと伝える。兄貴は妖精が見えるから大丈夫だろう。はぁ・・・。」
悩んだ末、決定が出た。以前ほど危険な事ではないのでいいのだが、暫くは忙しくなりそうだ。休みの日になったら街でおいしいものを食べて気合を入れよう。
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