第40話 エピローグ
『最強神選手が新世代の最強プレイヤーを下しました。見事な逆転勝利です』
国内最強の紗音を春雪が倒したことで、彼に賞賛の声が上がり始める。今までの不人気ぶりが嘘のような歓声であった。
「……負けたよ。悔しいけど、最強神さんの強さを認めざるを得ないね」
「まだ一回勝っただけだ。お前には負け越しているし、これで格付けが済んだとは思ってない」
「当然だよ。もう一回やったら絶対僕が勝つだろうし。一度勝ったくらいで調子に乗らないでよ」
「……本当に可愛げのないガキだな」
「可愛げのないガキで悪かったね」
紗音が春雪に抱いていたわだかまりも、今回の戦いを経てなくなりつつあった。
生意気なのは変わらないが、紗音は自分を倒した相手に敬意やライバル心が芽生えていた。
「最強神さんはこれからも大会に出るんだろうけど、予選落ちとかは二度としないでよ。僕の格まで落ちちゃうからね」
(……負けたのに偉そうだな)
「決闘の報酬で俺が入れ替わりできもすぎゲーミングに入るが、お前はこれからどうするつもりなんだ?」
「僕をスカウトしてくるチームなんて腐るほどいるから問題ないよ」
国内最強で世界でも上位の元プロゲーマー。実力も実績も申し分なく、紗音の言うようにチームから抜けた後も引く手数多だろう。
「……お前なら俺と違って新しいチームも選び放題だろうな」
「そういうこと」
リボルトの全試合が終了すると、上位まで残った選手に表彰式が行われる。
こうして長かった大会が幕を閉じたのだった。
リボルトから三ヶ月後――。
チームから脱退した紗音は、数多くの大手チームからのスカウトを断り、あるチームに入った。
他のチームを蹴って、紗音が入ったチームは香子が界隈の発展のために新しく立ち上げた『ルーローゲーミング』であった。
春雪はきもすぎゲーミングに復帰して、チームの看板を背負うプロ選手として再び活動していた。
(上位プレイヤーを何人も倒してリボルト優勝したのに、国内ランキングは一位じゃないだね。ていうか、トップテンにも入らないんだ)
リボルトなど直近の大会の結果を踏まえたランキングが本日発表されたが、春雪の国内ランキングは二十位であった。ランキング圏外から二十位は大躍進ではあるが、彁は不満そうにしていた。
「国内ランキングは大会で上位を取るだけじゃなくて、安定した結果を出し続けることも重要だからな」
ある大会で優勝しても、別の大会で結果が振るわないなどよくある話だ。春雪がランキング上位に入るかは、これからの結果次第であった。
(国内ランキング一位も遠いみたいだし、マスターが世界最強になる道はまだまだ険しいみたいだね)
「国内だけでもまだ倒してない上位勢もいるし先は長いな」
(ねぇマスター、私と対戦しない?)
「別に構わないが、俺と彁が試合になるとは思えんな」
(舐めてかかると痛い目見るよ。私、博士や葵ちゃんに鍛えてもらってるからね)
(春雪さん、油断しない方がいいですよ。彁ちゃん、昔より上手くなってますから)
春雪が知っている彁は、初心者の頃の連敗していた彼女だ。葵や香子に指導された後の彼女の実力は知らなかった。
「彁、それだけ自信満々に言うんだから、俺を楽しませてくれるんだろうな?」
「ボッコボコにしてあげるから。私に負けても泣かないでよ」
「生意気抜かしやがって。それはこっちの台詞だっての」
世界最強の夢はまだ半ばだが、死神と死神と契約した男の本気の対決が始まろうとしていた。
オワコンプロゲーマーが死神の力を借りて世界最強ゲーマーを目指すようです 八雲千秋 @chihirochan
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