第十二話

謎の場所


勇斗「う〜ん…ここどこ?」


あたりは暗く、先が見通せない。


勇斗「お〜い、皆どこ行っちゃったんだ〜?…あ、もしかして…これって…今俺1人だけなのこれ?

とりあえず…歩いてみるか…」


勇斗「足元は見えるけど…なんか、変な色だなぁ…ふごっ!なん…あ、壁か…そうだ、壁伝いに歩いてみよう。そうすれば何か見つかるかも…」


壁伝いに歩いていく。


勇斗「…ん?あそこにいるのは女の子?…お〜い!そこにいるのは誰だ〜!?」

???「おにいちゃん、誰?」

勇斗「俺?俺は…勇斗だ。」

???「ゆうと…?」

勇斗「ああ。んで、お前の名前は?」

???「…言いたくない。」

勇斗「どうして?」

???「…またいじめられる。」

勇斗「え?お前いじめられてるのか?」

???「うん…ゆうとは、私の事いじめない?」

勇斗「当然だろ!何せ俺は勇者…あ」

???「ゆうしゃ…?」

勇斗「あ〜…気にしないでくれ…」

???「…そっか。忘れない。」

勇斗「あ〜…ああ…分かったよ…そうだ、お前は

どうしていじめられてるんだ?」

???「…名前のせい。」

勇斗「名前のせい?」

???「うん…そのせいで…いじめられるんだ…

それで…最後は相手に酷い怪我をさせちゃって…」

勇斗「待て待て待てい、最終的にお前がいじめてる奴をボコボコにしてるじゃないか。」

???「うん…わたしは生まれた時から強い魔力を持ってるって…お父さんが言ってた。」

勇斗(魔力?という事は…俺たちが元いた世界の人なのか?というか…)

???「元いた世界って…?」

勇斗(!?心が読まれている…?)

???「うん…でも、心が読めても良い事なんて

無い。皆にいじめられるだけ。」

勇斗「…でも、最終的には返り討ちにしてるよな?だったら良いじゃないか。」

???「…良くない。私は…皆に信頼されなきゃ

いけないのに…」

勇斗「信頼を得なければいけない理由があるのか?お前をいじめてる奴らなのに?」

???「…そろそろ帰った方が良いよ。帰り道は

来た道を辿って帰れば良い。」

勇斗「…え?あ、帰った方が良いか?」

???「うん。お話してくれてありがとう。」

勇斗「おう…また来て良いか?」

???「良いけど…来れたらね。」

勇斗「?」

???「…じゃあね。」


そう言うと、少女は暗闇の中へと消えていった…


勇斗「行っちゃった…帰るか。」


勇者も来た道を戻る。


勇斗「俺が目覚めたのって大体このへんか?…お?なんかあるな?あ、これってあの禍々しい石か!

掲げたら帰れるのか?」


石を掲げる。


勇斗「う〜ん…ここどこ?」

魔由美「あっ、勇者!」

戦弥「どこ行ってたんだ!?」

僧子「急に消えちゃうから心配したんだよ!」

勇斗「お、おう…あ、あの石は?」

魔由美「地面に落ちて割れちゃったわよ…幸い、

何も起こらなかったから良かったけど…」

勇斗(来れたらって…こういう事か。)

僧子「どうしたの?なんか難しい顔してるけど…」

勇斗「実はな…」


勇者は3人に謎の場所で起こった出来事を話した。


魔由美「へぇ…私も行ってみたかったわ…」

戦弥「…俺は暗所が苦手だから嫌だな。」

僧子「その女の子、なんだかかわいそうだね…」

勇斗「ああ…でも、そいつの話聞いてると妙に不安と安心感が同時に来る…みたいな?なんか変な感覚になったんだよ…」

戦弥「…どういう事だ?」

勇斗「俺にもよく分からねぇよ…」


そんな話をしていると突然女神が語りかけてきた。


女神「勇者たちよ…聞こえますか?」

勇斗「あ、女神様!」

魔由美「女神様、どうされましたか?」

女神「大変です…今すぐに神の石を掲げ、こちらの世界へと戻ってきてください…!」

僧子「神の石と言うと…あの光る石ですか?」

女神「はい…急いでください…」

勇斗「石…石…あ、ポケットに入ってた!それじゃ掲げるぞ!」


勇者たちは再び元の世界へと戻る。


勇者「…ここは、A国教会か?」

魔法使い「どうやらそのようね…あ、テレパシーの魔法が切れてる…」

戦士「またかけ直してくれないか?あれ、意外と

便利なんだよ。」

魔法使い「はいはい。チクッとするわよ〜」


グサッ!


勇者「いでぇってだから…」

戦士「というか普通に唱えれば良かっただろ…」

僧侶「もう…あ、女神様の声が頭の中に…」

女神「勇者たちよ。聞こえますか。あなたたちに

伝えたい事があります。たった今、魔王がF国を

滅ぼさんとしているのです。」

戦士「魔王!?でも魔王は今あっちの世界に!」

女神「原因は分かりませんが…今、こちらの世界とあちらの世界で同時に魔王が存在しているのです…私はあちらの世界の魔王を監視しているので、今はそちらの世界の魔王を止めるのです!」

僧子「分かりました!」

勇者「よし!行くぞ!」


F国へと向かう勇者一行。


魔王「…国を攻めれば必ず奴らはやってくる。」

勇者「魔王〜!スト〜ップ!」

魔王「…読み通りだ。」

戦士「魔王!騙し討ちなんかしやがって!ここで

お前を倒す!」

魔王「…やはり来たか。あの時、あと一歩で貴様らを捕らえられたのだがな…その時貴様らは、謎の

光る石を掲げ…あたりが光に包まれたと思うと、

貴様らはいつの間にか消えていた…何故転移魔法を使わなかった?転移魔法は使えるはずだろう?」

勇者「…存在を忘れていただけだ!」

戦士(多分本当の事言ってるんだろうなこれ…)

魔王「…クックック、そういえば前まで私の呪いで魔法が唱えられないんだったな?それで転移魔法の存在を忘れていたと…なるほどな?」

勇者「そういう事だ!とにかくお前を倒す!」

僧侶(恥ずかしさを隠そうと声量で誤魔化してるねこれ…)

勇者(誤魔化してない!ほら構えろ!)

魔王「先の戦いでは全力を出し損ねたからな…今回は初めから全力で行くぞ!」


魔王が無数の火球を漂わせる。

戦士「くっ…近付けそうにないぞ!」

魔法使い「ここで私の出番!」


魔法使いが無数の火球を氷結魔法で打ち消す。


勇者「これ氷の方が先に溶けそうな気がするけど…細かい事は気にしないッ!」


勇者が魔王めがけて放つ渾身の勇剣技。


勇者「アルティメットスペシャルウルトラスーパーミラクルファビュラススマートファイナルヒーロースラッシュ!」

魔王「アルティメットスペシャルウルトラスーパーミラクルファビュラススマートファイナルデビル

ダークネスブラッディスマッシュ!」


魔法使い「…ど、どうなったの!?」

戦士「超スピード…?いや、そんな次元じゃない!速度というものを超越している!」

僧侶「…あ!」

勇者「ぐっ…!?」

魔王「…前に心を読んだ所、ふざけた名前の技を

使っていたようだからな。貴様のネーミングセンスは絶望的だが、真似させてもらったぞ。」

勇者「へっ…真似してくれて嬉しいねぇ!」

魔王「クックック…技名を喋っている間だけまわりの時が止まる技、便利だ。文字数さえ伸ばせば更に長い時間を止めていられるようだしな?」

勇者「はは…お前の方が1〜2秒ぐらい長く止めて

いられるみたいだったしな…お前の方がよっぽど

ネーミングセンス絶望的だと思うぞ?」

魔王「…このネーミングセンスは、憎き父から遺伝したのだろう。…はぁっ!」

勇者「ぎぃっ!危ないってだ〜か〜らっ…よっ!…おい3人とも何やってんだよ!助けてくれ〜!」

戦士「よしきた!…死刻斬!」

魔王「効かぬわ!であっ!」


ベキィッ!


戦士「ご…はっ…!もろに食らった…」

僧侶「戦士!…ホワイトヒール!」

戦士「ふう…僧侶、助かった!…まだまだ行くぞ!魔王!!覚悟しろ!!!」

勇者(しめしめ、この声量に紛れて背後から…)

魔王「後ろにいるのは分かっている!」

勇者「それが分かってる事は分かってるんだよ!」

魔王「それが分かっている事が分かっている事を

分かっている!二方向から同時に来ても無駄だ!」


キキィン!


勇者「ちっ…」

戦士「ぐむむ…!」

魔王「…それだけか?」

魔法使い「それだけじゃないわよ!バルーン!」

魔王「…現状、身体に魔力を集中させる以外の対処方法が思い付かない。だが、それだけの対処で十分だ!はァッ!!」


魔法使いに向けて指先から無数の光線が放たれるのと同時に、両腕で勇者と戦士を吹き飛ばす。


勇者「よっ…と!」

戦士「やはり…強い!」

魔法使い「熱線…だけじゃ防戦一方!氷結魔法を

応用して…!」


魔法使いの前に巨大な氷の壁が現れる。


魔法使い「僧侶!これに防護魔法をかけて!」

僧侶「よし…防護魔法!」


僧侶が氷の壁に防護魔法をかける。


魔王「む…なるほど?」


魔法使い「ただの壁じゃないわよ!それ!」


魔法使いが氷の壁を遠隔で持ち上げ、振り回す。


勇者「おいおいそんな事も出来るのかよあいつ!

こりゃ負けていられないな!」

魔王「ぐ…厄介だ…防護魔法がかかっているせいで破壊が難しい…それでいて素早く正確に振り回してくるとは…バリア!」

僧侶「ディバインスペル!」

魔王「な…!くそ…バリアが剥がれた…!」

僧侶「実はこんな魔法も使えるんですよ。さあ勇者さん!決めてください!」

勇者「魔法使い!俺に当てないように頼むぞ!」

魔法使い「早くしなさい…!こっちはもう結構魔力使ってるのよ!」

勇者「あいよ!だあぁっ!」

魔王「…アルティ」


割愛。


魔法使い「ぐぁっ…」

僧侶「う…!」

戦士「がっ…!」

勇者「…!3人がやられてる!でも…あれを使ったって事だよな!?魔王!」

魔王「…バリア!」

勇者「勇者オーラ!」

魔王「なんだそれは…!バリアが…!」

勇者「アルティ」


割愛!


魔王「ぐぬあぁぁぁ!」

勇者「…俺のまわりに魔法がかけられている物や人は全て良い効果も悪い効果も全部消滅するんだ。

マジで使えないと思って封印してた技だったけど、こんな所で役立つなんてな…」

魔王「ぐ…ぬぬ…!技の引き出しを探っておくべきだった…!く…そ…!」

勇者「もう同情の余地は無い。あの世で皆に詫びてくるんだな!でやっ!」

魔王「ぐ…ふ…はぁっ…!あ…ふ…」

勇者「…ひとまず3人を回復させねぇとな。」


勇者が3人を回復させる。


魔法使い「…はっ!魔王は!?」

勇者「倒した。…倒して良かったよな?」

魔法使い「良かった。…良かった〜!」

戦士「俺は大した活躍が出来なかったな…」

勇者「まあそんな都合よく全員に見せ場が来るわけじゃないんだよ。いつか見せ場が来るって。」

戦士「そうだろうか…まあ、そう信じよう。」

僧侶「…ところで、あっちの世界の魔王は?」

勇者「あ、忘れてた…女神様〜!」


………


勇者「あれ、女神様〜!?」

魔法使い「…?おかしいわね…普通ならすぐに返事くれるのに…まさか、女神様の身に何か…」

僧侶「流石にそんな事は無いよ…多分。」

戦士「だ、だが…実際返事が無いわけだ…あちらの世界に戻ってみても良いんじゃないか?」

勇者「そうだな…とりあえず行ってみよう!」


勇者が転送石を掲げる。


東京 渋谷


勇斗「…なんか空暗くね?」

魔由美「現在時刻は…まだ15時前ね…この暗さは

いったい何なの?」

戦弥「夜でもないのに妙だな…そうだ、魔王…あ、魔瀬樹だったな。連絡してみたらどうだ?」

僧子「そうだね。何があったのか聞いてみよう。」


LI◯E グループチャット


僧子[魔瀬樹さん、いますか?]

魔瀬樹[いる]

勇斗[ちょっと聞きたいことがあるんだよ]

魔瀬樹[なんだ]

戦弥[何故空が異様に暗いのか知っているか?]

魔瀬樹[しっている]

魔由美[教えてくれない?]

魔瀬樹[きさまらがたよってきためがみをころしたからだ。これでせいなるひかりはとどかない。]

勇斗(なん…何言ってんだこいつ!?)

魔瀬樹[さっきのこうさてんにこい]

僧子(もしかして…記憶を取り戻した!?)

魔由美[分かった…待ってなさい。]


東京 渋谷


勇斗「ヤバいって…どうする!?」

魔由美「…絶対に魔王は記憶を取り戻してる。」

僧子「ど、どうしよう…こっちの世界じゃ私たちは非力だし…」

戦弥「いや、それは魔王も同じなんじゃないか?」

魔由美「でも女神様が倒されてるのよ?魔王は絶対に力も取り戻してるはずよ。」

戦弥「そ、そうだな…どうする?あたりに人や鳥も見当たらないが…」

勇斗「…女神の加護が消えている可能性もある。皆、慎重に行動してくれ。…スクランブル交差点に行く前にまずは道具を集めよう。今の魔王も耐久性は人間と変わっていない…はずだ。」


勇者たちは魔王を倒せる可能性がありそうな道具を集めていくのだった…


次回に続く

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