『じゅうでんしんじ』 その6


 ぼくたち3人は、やっとこさ、奥社に入ったのである。


 ようやく、身なりを整えた神官さまは、ぼくとひなこさんの前に座った。


 『ここは、余人を迎えることの無い場所です。人間が入ることは許されない場所ですが、神官と限られた巫女は、もはやこの世のものとは認識されません。従って、さまざまな、戒律を課されます。あなたさまは、今夜の『じゅうでんしんじ』の、捧げ物として選ばれました。生きてここを出るかどうかは、もはや、天に任されました。まあ、これは、余談ですが、さきほどのことからしても、あなたさまは、ある意味、まさに、選ばれたのです。でありますゆえ、今日これまでのこと、さらに、これから起こることは、すべて、他言無用。もし、しゃべったら。』


 『ごっくん。』


 『わたくしが、直ではなくして、代理にて、殺しに参りますゆえ。』


 『こわー💨!』


 『ほほほ。さて、よろしいですか? あなたさまは、今夜9時から、このさきのお堂にて、お籠りとなります。お手洗いだけは、お堂のすみにあるお手洗いを使えますが、それ以外は、一切、その場から動いてはなりませぬ。10時になると、自動的に、『じゅうでんしんじ 』、がはじまります。それからは、一切動いてはなりませぬ。それがなにかは、誰も知りません。しかし、お堂の奥の神殿に、赤い明かりが点ります。すると、そこは、もはや、この世ではありません。あらゆる、魑魅魍魎、妖怪百鬼、怨霊たちが、お堂の中を暴れまわりますのです。動かずに、じっとしておれば、害はありませんが、もし、じんわりとでも、動こうものならば……………。』


 『ものならば?』


 『あなたさまは、八つ裂きにされますのです。』


 『あひゃあ。』


 『午前0時となり、新年となりましたらば、赤い光は、青に変わります。そうして、わたくしが、扉を開き、いずれの事態であろうが、邪気を払い、お堂の片付けを、巫女たちがいたしまする。たった、2時間ですから。』


 『あなたが、ばらばらであろうが、なかろうが。』


 ひなこさんが、そう、付け加えた。


 『おそろしやあ〰️〰️〰️😅』


 『まさに。しかし、無事、生き延びましたらば、無病息災が、得られましょうぞ。』


 『はい?』


 『無病息災です。』


 『ぼくは。たくさん、病気を抱えています。良くなりますか?』


 『まあ、なる。それなりに。』


 『それなりに。ですか?』


 『さよう。……ま、これは、村一番の神事ですから、そのおつもりで。』


 『なお。昨年までの、当たり男たちで、生き延びたものは、ありません。悪しからず。』


 みなこさんが、付け加えたのである。


      🙇


 そうして、やがて、午後7時になると、ぼくは、わりに華やかな夕食を頂き、御神酒も頂いたのである。


 8時になり、せっかくのスーツを、白装束に、着替えをした。


 そうして。


 午後9時。


 ぼくは、不可思議な歴史を秘めた、そのまさしく、不気味なお堂に、ひとり、籠ったのであった。



       🧎


 


 

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