無双

 大量にいる敵軍の前に並び立った僕とリノ。


「行くか」


 僕は自分の隣にいるリノへと声をかける。


「えぇ……よく考えてみますと、ルノ様とこうして二人。本気を出して戦うのは初めてかもしれないですね」


「初めての共同作業、かな?頑張っていこうか」


「えぇ!もちろんにございます!前の方はお任せください!」


 僕の言葉を受け、リノが元気よく陽剣を輝かせながら大量にいる敵軍の方へと突撃していく。


「……僕もやるか」


 前線はリノがたった一人で張り、僕の方へと兵士がこないように頑張ってくれている。

 僕は余裕のある中で魔法の詠唱を唱え、大量の魔法を連発して敵兵を焼き焦がしていく。


 そして、リノを狙って魔法を発動させようとする魔法使いは優先して狩っていき、彼女の元に飛んでいく大量の弓矢もすべて風を起こしてガードさせてやる。


「ふぅー」


 ここが正念場であろう。

 相手は大量の兵士と戦術級の魔法使いを導入している。

 本気でこの砦を落としに来ている今が正念場……僕は今後のことも考えずに惜しみなく魔法を連発していく。


「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」


「あ、あんな奴に……勝てるかよ」


「……おとさぁぁぁぁぁん、おかさぁぁぁぁぁん!」


 既に敵軍は壊滅間近といったような状況。

 そもそととして僕が率いる騎士たちの突貫によって浮足たっている中での僕とリノの無双である。

 これを前にして士気を保てる兵士がいるわけない。


「……クソっ!撤退、徹底だぁ!!!」


 戦闘開始から数分足らずで敵軍の指揮官は撤退を決断し、魔法で拡散した大声を全体に知れ渡させる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」


「やめろっ!押すなっ、やめぇ!」


「あぁぁぁぁぁ!?」


 脱兎の如き逃走。

 圧死するような人も出てくる中での逃亡劇が広がっている中。

 リノは深追いせず素直に砦の方へと戻り、僕は僕で少しの間追撃として魔法を浴びせた後に彼女を追って砦の中へと戻っていくのだった。

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