第27話 敵だけど敵ではない、よく似た2人が出会った
カタリナの実家でメイド
彼女は何度も何度も、カタリナと
サーシャは満面の笑みで2人を見ていた。
(お嬢様。ほんとうによかった。お隣の守護騎士様は、とても優しくて誠実そうな方ですね。神はよく見ている。不幸は必ず救済されるのですね)
「あの―――― カタリナさん。さっき、『私はかまいません』と‥‥‥‥ 」
「はい。そう言いました。たぶん、心の声が出てしまったのですね。悟さんは、心の声を外には出さないのですか? 」
「‥‥‥‥ 恥ずかしがり屋なのです。でも、でも。やがて、時がくれば、勇気を出して、心の声を必ず」
2人は、人通りの多いメインストリートを進んだ。
そして、ゲルト王国の王都の中心に近づいた。
すると、王城が見えてきた。
不思議なことに王城の前には大変広い広場があり、多くのテントが張られていた。
「これらのテントは? 」
「たぶん。この国に駐屯している魔界の軍団ですね。広大な王城自体を占領していないのですね」
「悟さんは。この国に駐屯している暗黒騎士ゾルゲのことを、どう思いますか? 」
「はい。1回戦っただけですけれど、とても真剣な勝負でした。そして、彼のことはよく分りました。たぶん、私とよく似ている似た者同士なのでしょう」
「ふふふふ そうすると、私も必ず好きになれるでしょうね」
「‥‥ カタリナさん。また‥‥ 」
「そうですよ。心の声です!! 」
整然と並んでいるテントは静まり返っていた。
2人がそのまま進んでいると、突然、多くの人々の歓声が聞こえてきた。
とても楽しそうな歓声――
「えっ、なんでしょうか」
「みんな楽しそうですね」
やがて、2人にはその理由がわかった。
テントが張られていないスペースで、何かボールを蹴るゲームがされていた。
敵味方に分かれて、相手のゴールのポストにボールを蹴り込むゲームだった。
一方のチームは、身長がとても高い大人、見かけは人間に見えた
「あれは、暗黒騎士ですね」
もう一方は、あきらかに人間の子供達だった。
さらに、子供達の親達がたくさん応援していた。
暗黒騎士のゴールには、立て続けに何回もボールを蹴り込まれていた。
「なんで、暗黒騎士達が、人間の子供達にキリキリマイさせられているのでしょうか? 」
「当然ですが、暗黒騎士達は本気を出していません。でも、暗黒騎士達の心の中からは、大きな幸福感が感じられます」
「どうしょうか。カタリナさん。このまま通り過ぎて、王都を離れロメル帝国に向いますか」
「そうですね‥‥ 」
その時だった。異変が起きた。
ゲームが行われていた空間に緊張感が走った。
暗黒騎士達の心が極限にまで緊張した。
そして、ゲームの中でボールキープしていた1人の暗黒騎士の行動も支配された。
その暗黒騎士は、人間の小さな子供が守るゴールポストに向かって、全力でボールを蹴った。
敵の戦士を倒すために、戦場で出すような力が加わっていた。
「危ない」
たくさんの声が上がった。
威力最大のボールは、信じられないくらいの速いスピードで、ゴールポストに向かった。
さらに運の悪いことに、そのコースの先には人間の子供のゴールキーパーがいた。
「あの場所へ」
かって彼は恒星の鎖で動きを制限されていたが、今は全力で動くことができた。
そのため、悟は瞬間敵にゴールポストの全面、ボールの軌道の全面に出た。
そして彼は、いかにも簡単にボールをキャッチした。
一瞬誰もが、何が起きたのかわからなかった。
「お兄さん。ありがとう」
ゴールを守っていた小さな子供が無邪気にお礼を言った。
「よかった」
「当然だよ。これで10:0で、僕のチームが大量リードさ」
子供は無邪気だった。
それを聞くと、
試合に出ていた暗黒騎士達は、ことの重大さにその場で凍り付いていた。
やがて、凍り付いていた暗黒騎士達がつぎつぎとひざまずき始めた。
誰か、とてつもないオーラを秘めた人物がこちらに向かって歩いてきたのだ。
少し離れて見ていたカタリナが言った。
「とてつもないオーラですね、だけど敵意は全く感じられません、むしろ、悟さんへの尊敬が感じられます」
悟も気が付いていた。
「これは、暗黒騎士ゾルゲさん!! 」
やがて、暗黒騎士ゾルゲは悟のすぐ前に来ると深々と頭を下げた。
「
「ゾルゲ様。どうなんでしょうか。今はやむを得ないと思います。たぶん失敗してしまったあなたの部下は、あなたのオーラを感じてしまったのですね」
「しかし、我のオーラを感じただけで、あんなに動じるとは面目ないことだ」
「あなたは、自分が思われている以上の強いオーラをまとっているのです。そのオーラに反応するのは仕方がないことです。自分のことはわからないものです」
「そうなのだろうか? 」
「私も自分が他人に与える影響をしっかりと知りません。だから、いつも心がけています」
「ほう。
「自分に厳しく、他人に甘くです」
「確かに。良い心がけだな。今後、絶対に忘れまい」
「それでは」
「うん。今回、ボールを強く蹴ってしまった部下は『おとがめなし』にしよう」
「やっぱり、お2人はよく似ていらっしゃいますね」
カタリナがが2人のすぐそばに近づいていた。
「聖女か。しばらく見ないうちに、かなりの力を蓄えられたな。もう聖女、白魔女として、黒魔女のローザとも十分に戦い、勝てるだろうな」
「ローザは今どこに? 」
「1人二役をしている。人間界にいる時は、ロメル帝国マクミラン皇帝の妃、魔界にいる時は魔王リューベ様の王妃のようだ」
「そうなんですか。私に対して婚約破棄してひどいことをしたマクミラン皇帝陛下のことは、もう関わりたくありませんが、悲惨な状態なのですね」
「聖女よ。リューベ様への我が忠誠は少しも変らないが、批判はしても良いと思っている。あなたに対する仕打ちはやってはならないことだった」
「そう言っていただき、ありがとうございました」
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