第102話 当然の結果

 学校に行ったら、春香ちゃんに


「週末の咲さんと萬田君の結婚式どうする?」


 教室でそう訊かれたので


「どうって……行くけど」


 そう答えると


「……衣装どうするの?」


 そう言われてハッとした。

 ……あー。


 お葬式だったらセーラー服で出たら良いけど。

 結婚式は別だよね。多分。


 聞いた話でしか無いけど、皆白い服を着てくるんだよね?


 セーラー服は黒。駄目じゃん。



 ……数日前、私と春香ちゃんの家に結婚式の案内状が届いた。

 咲さんは萬田君と結婚するらしい。


 ちなみに名字を変えるのは萬田君で。

萬田君は入籍して阿修羅智になるらしい。


 ……まあ、しょうがないよね。

 咲さんは阿比須族滅流の継承者で、一人っ子らしいし。

 お父さんは継承の儀で自分の手で倒したらしく、これ以上兄弟姉妹が増えることもないらしいしね。


 ……阿修羅の家ってえげつないよね。

 一子相伝で、阿比須族滅流を継承するときに、前の伝承者を次世代の伝承者が倒すことが宿命だなんて。


 咲さんはそのせいで一時期


「愛など要らぬ!」


 状態だったらしいけど。

 それが、夜道の1人歩きで萬田君と出会って、変わったって。


 ……何がそのときあったのか、聞いちゃいけない気がするから聞いてないけど。


 まあ、そんな咲さんが幸せになるんだ。

 祝福しないと。


「じゃあ、今日の放課後、アマノドーに白い服買いに行く?」


「そうしようか」


 ……腕力家になってから、月に20万円の俸給が国から出るようになったせいで、お金はあるんだよね。

 こんな収入、健全じゃ無いから毎月そのまま寄付してるんだけど。

 今月分は結婚式の衣装を買うのに使っちゃおうか。


 2人分くらい、20万あれば足りるよね?




 放課後にアマノドーにやって来た。


「白の服ってどのレベルなんだろう?」


「お父さんに聞いた話だけど、ネクタイが真っ白らしいよ」


「へえ」


 言いながら服を選ぶ。

 ネクタイが白ってすごいな。

 ネクタイは普通色がついてるのに。


 ……じゃあ、全部真っ白レベルが理想なんだろうか?


 普通のJCは友人が結婚するからと服を選ばないといけない状況って無いからね。


 純白の服……しかも、公に着て行って良いやつ……


 そういう観点で服を探すと……なかなか無い。


 しょうがないので、店員さんに


「すみません。結婚式で着て良い服ってありますか?」


 そう訊くと


「お客様。失礼ですが中学生ですよね? ……だったら制服で良いですよ」


「……え?」


 黒なのに?

 そこが疑問だったから


「セーラー服は黒なのに、それでいいんですか?」


「セーラー服は万能のフォーマル衣装です」


 ……断言された。

 そーなんだ。


 じゃあ、今月も俸給は全額寄付かぁ……。


 そんなこんなで、その日の私たちの買い物計画は終わってしまった。




 そしてアマノドーを出た直後。


 私はカフェでノートパソコンを叩いている凛々しい高校生のお兄さん。

 シンヤさんを見かけた。


 あ! シンヤさんだ!


 挨拶しよう!


「シンヤさんこんにちは!」


 私が挨拶をしに近づくと


「あ……閻魔花蓮……」


 シンヤさんは、私を能面のような目で見つめて。


「こんにちは。ごめんね。ちょっと急いでいるんだ。じゃあね」


 微笑んで。

 ノートパソコンを片付けて、立ち去って行ってしまった。


 ……?


 何だろう?


 シンヤさんの今の態度。

 そっけなかったというか……


 私との関係性を拒否してるみたいな。


 そんな感じがしたんだけど……


 私、何かした……?


 そのときだった。


「兄を狙っても無駄だから。当然の結果よね」


「何を考えとんやろうなぁ。常識無いんやな腕力家サマは」


 ……信じられないことが起こったんだ。

 ベガ立ちの天野先輩と、飛馬先輩が私たちの前に現れて、そんなことを言ったんだよね。

 ……冷笑を浮かべながら。

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