第158話 進路
「まず一つが、都内でも1.2を争う強豪校。長い歴史もある伝統のある学校ですが、近年は指導法にやや問題があるように見受けられますね。常にアップグレードされていく指導法についていけてない印象があります。一応候補として挙げさせて頂きましたが、正直あまりおすすめはしません」
父さんが資料を見せながら説明する。
ふんふん? 昔からずっと強い高校ではあるけど、なんて言うか、バリバリの体育会系って感じ? 上下関係も厳しくて、実力があっても1年生のうちから試合に出るなんて事ほほとんどないとか。
ちょっとここは俺ならパスかなぁ。甘えなんてのは無さそうだから、人間的には強くなれるかもしれないけど。ボクシングの実力向上って面では、飛躍的アップは望めないかもしれん。言い方は悪いけど、指導者の人も古い人間ってタイプの人らしいし。
「そしてもう一つが、先程の高校と鎬を削ってるライバル校。こちらは指導者が比較的若めではありますが、その分柔軟な思考をしていて、一つ目の高校よりはやり易いんじゃないかと思います。しかし、設備が少し古いようですね。難点としてはその程度でしょう」
ほむほむ? こっちは良いんじゃない? 確かに設備は古そうだけど、それでもさっきの高校よりは、良いんじゃないかって思える。しっかりレベルアップも出来そうだ。
「そして最後の高校ですが。ここはボクシング部が出来て、まだ二年少しと歴史の浅い高校です」
二個目が良いじゃんと思ってたけど、最後は変わり種が来たな。でも父さんが紹介するって事はそれなりに理由があるはず。
「スポーツに力を入れてる高校でしてね。進学コースの偏差値も高いので、文武両道の高校と言えるでしょう。少し前に甲子園にも出て、プロ野球で活躍する選手も輩出していますよ。名前ぐらいは聞いた事があるのではないでしょうか?」
あー。知ってる知ってる。少し前に滅茶苦茶甲子園が人気な時があったよね。なんか一つの世代にスターが集まりまくってたんだ。今はメジャーでバリバリ活躍してる選手達が何人もこの高校に居たんだよな。
「この高校にボクシング部が出来たのは、うちの拳聖も関係してるんですよ」
「ふぇ?」
俺? 何もしてないけど?
「拳聖が高校生でプロボクサーとして活躍するのを見て、ボクシングブームが再燃すると思ったみたいで。部活を作ってそれに乗っかろうとしたみたいです」
「ほえー」
そんな事があったのか。二年前って言うと、俺がまだプロとしてデビューしたぐらいか? 作ろうと思った人は中々先見の明があるようですな。是非仲良くしたい。
「設備も最新のモノが取り入れられていて、指導者は元OPBFフェザー級チャンピオンの成海って人がやってます。元ボクサーの人が指導者として、良い人かは分かりませんが、この人の指導法は悪くないと思いますね。知り合いなので、少し贔屓目に見てるかもしれませんが」
ベタ褒めじゃん。父さんからすると本命はこの高校なんだろうか? 今までの二つの高校とはプレゼンの力の入れ方が違う。
あ、成海って人、あれじゃん。現役の時に父さんと戦った事がある人だ。動画サイトに今もあるよ。父さんが勝ったけど、倒し切れなくて、判定勝ちになった試合。
判定勝ちだけど、今でも父さんのベストバウトに挙げられる試合の一つだ。
「この高校の難点は、まだ歴史の浅い高校という事もあって、ボクシング部としての知名度がありません。孤南君が成長する為には、環境や指導者もそうですが、身近に切磋琢磨し合えるライバルが必要です。果たしてこの高校にそういう子が入ってくるか。そこだけが気掛かりですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます