第11話 旅立ちの日
「さて、リセ。順調に適合、成長していてくれてパパは嬉しいよ。
で、だ。独り立ちできるようになったら、何をしたいかな?やりたい事はあるかい?
何でも言ってごらん!パパが、何でも、叶えてあげるから!
そうだ!人間の国でも滅ぼしてみようか!
パパに掛かれば人間の国の一つや二つ、簡単に滅ぼしてあげられるよ!」
「そういうのは、いらない。パパ、め!
身体も会話も自由になったし……。折角のふぁんたじー世界だから――」
「冒険者おう――じゃなくていいけど――に、わたしはなる!」
アルカディウスとの会話の中、『独り立ちできるようになったら何をやりたいか』と問われた璃星は、冒険者になる事を希望した。そこで、森で生活を始めて数ヶ月が過ぎ、新しい身体にも慣れ、ある程度の知識と力が得られた頃を見計らい、近くにある中立国の街へと旅立つ事となった。
旅立ちの日、中立国の都市に最も近い森の端には愉快な仲間たちが集結していた。
「……え?これをくれるの?
バスでは送っていけないので、代わりに、って?この世界、バスってあるのかな?おっきいねこさんならぎりぎり――、アウト?
ありがとう、おっきいモフモフさん!」
ミミズクっぽい何かからは選別として木彫りのペンダントを受け取る。太古より生き長らえて魔力を蓄えた大樹の枝を、爪?で削って作った手製のお守りである。何の造形かはぱっと見分からなかったが、何となく猫の顔のようにも見えない事もない。
「定命の者への施しである。有難く受け取るがよい。」
悠久の時を生きていそうな大きな鳥からは、その尾羽を受け取る。
「ありがとう!まっかなとりさん!
何となく、戦闘不能から復帰出来そうなアイテムだけど……。ソロじゃ役に立たないかも?」
「安心せよ。所有者が倒れると自動発動するようにしてあるのでな。」
「それじゃあ、パパからはこの剣と紹介状だ。
街に着いたら、まずは冒険者ギルドに向かい、受付にこの紹介状を渡す。いいね。」
璃星は、得物について色々と悩んだ末、結局剣を扱う事にしていた。『鎌とかにも心惹かれるけど……。ダンジョンとかでは使い難そう?な気がするのです。』というのがその理由である。そして、渡された剣はアルカディウス特製の品で、紹介状と合わせて不思議な意匠が施されていた。
「パパ、ありがとう!大切にするね!
それと、モフモフさん以外にもおともだちがいたんだね!安心した!」
森の仲間たち?に見送られて去っていく璃星の姿が視界から消えたところで、ミミズクっぽい何かがアルカディウスに近づく。
「何?折角再会出来たのに手放してしまっていいのか、だって?
――子供はいつか旅立つものだよ。一回目に続き今回も余りに早くはあるが……、今生の別れという訳ではない。
今回はいつでも会えるさ。」
「――それに最近はどこもきな臭いからね。可愛い娘の為に火種を摘んでおく。それも出来るパパの役割というものだ。
あいつも、友の形見をないがしろにはしないだろう。だから安心して送り出せる。」
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