第71話 出航
「ノクティス様、最後の力を使って春陽さんに託したんだね 」
「ああ、でもそのおかげで次の目的地が決まったな! 」
「……そっか。 兄さんがそんなことを……。 うん、わかった。ボクも落ち込んでいる場合じゃないね! 」
セレスティアはどうやら俺が寝込んでいる時にしっかり立ち直ったみたいだな。
いや……無理して立ち直ったようにしているのかもしれない。
心做しか笑顔が引きつってるように見えるし。
「ティア……大丈夫か? 」
「うん、ボクは大丈夫だよ! たしかに兄さんを亡くしたのは辛い……。 けど春陽が目を覚ました時、とっても安心した。 その時にね、ボクはひとりじゃない。そう思ったんだ。 だからボクはもう大丈夫っ! 」
彼女には、俺含めミアやカイルそういった仲間がいる。
それが支えになったのであれば光栄なことだ。
なら俺たちは前に進むだけ。
次の目的地について考えよう。
「そうだな、ティアには俺たちがついている 」
「そうだぞ!神様!! 」
「……は、はい、セレスティア様! 私もついています 」
「うん、みんな……ありがとう 」
「それでティア、次の目的地なんだが…… 」
「あ〜うん、ウォーターグレイスだよね? たしかこのアークスカイからは飛行船で行けるはずだよ 」
飛行船?
そんなものがあるのか。
すごい、さすが異世界。
これはギルドを見た時以来の衝撃というやつだ。
いや……この衝撃は実際に見た時のために置いておこう。
「ああ、飛行船はアークスカイを中心に活動している! 」
「春陽さん……物珍しそうな顔をしてますけど、飛行船は初めてですか? 」
「そうだな、俺が住んでいたところにはなかったよ 」
「それなら楽しみですね。 ……えっとカイルくん、たしかウォーターグレイスへの便って何本あったっけ? 」
「ん、全く覚えとらんっ! はっはっは〜! 」
たしかにいくら地元といっても便の本数や時間など覚えているのは難しいよな。
俺だって地元のバスや電車の時間なんて覚えていないし。
……なら直接向かうのが1番か。
◇
飛行船の発着場はアークスカイの最北端にある。
そして俺たち4人はすでにその発着場で飛行船を待っている。
あの後飛行船の時間を調べたら、最短で次の日の昼頃だったためさっそく準備してここまで来たというわけだ。
やはりこちらの飛行船も現実世界の飛行機と同じように飛ぶ時の助走必要で、そのため発着場は広い作りとなっているようだ。
肝心の飛行船だが、あれは飛行船というよりかは豪華客船だな。
現実世界では海で走っていたものが空を飛ぶのか。
違和感がすごいが、乗り心地は良さそうだ。
「おおぉぉぉっ! 久しぶりにきたが、やはり飛行船場は広いもんだなぁっ! 」
「うん、そうだねぇ〜。 なんか地元に帰ってきたなって感じがするっ! 」
2人からすると、飛行船とは昔を思い出すほど懐かしいものなのだろう。
つまりこの街にとって大事なものなんだな。
「うんうん、こんな立派な船に乗れるなんてボクもテンションあげあげだよ〜!! みんな! 早く乗ろうよっ!! 」
……神様からみてもテンション上がるもののようだ。
羽をパタパタしてもう早く乗りたく仕方がない、そんな様子をみせている。
「おいティア、そんな早く行ってもまだ乗れないんじゃ……あれ? もう乗れるのか? 」
先程まで何もなかった船と陸地の間に搭乗用の階段が掛けられている。
そしてスタッフらしい人が船の近くで、
『皆様、お待たせしましたっ! ただいまより搭乗可能となりましたのでご予約された方はどうぞいつでもお乗り下さい 』
そんなアナウンスをしていた。
「おっもう乗れるぞっ。 春陽! ミア! 神様! 早く行こう! 」
「ちょっと、カイルくん! そんな急いで行かないでよ! 」
カイルは一目散に船へ駆け出し、それを追うようにミアも続いていった。
カイルは置いておいて、思いのほかミアもかなり楽しんでいるみたいだ。
「ちょっと2人とも速いって! ティア、俺たちも……っていない!? 」
よくみるとセレスティアはカイルに並んで船へ向かっている。
どうも置いていかれたのは俺だけのようだ。
……まぁ少しの間、豪華客船でのクルーズを楽しむか。
そして俺たちはウォーターグレイスへ向かったのだった。
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これで3章は完結となります!
ここまでお付き合い頂きありがとうございました✨️
4章も引き続きよろしくお願いします!
この作品は最終話までストックし終えておりますので、完結まで走り抜けていきます🏃♂️
度々ではございますが、長編2作品目『ハローワークで見つけた冒険者業が天職だった件〜ハズレ職業である武闘家から始まった冒険者人生、最上位職のマジックブレイカーに転職したので駆け上がっていきます〜』も執筆しておりますので、ぜひお手隙の際にご覧頂けますと幸いです🥺
1話はこちら⬇️
https://kakuyomu.jp/works/16818093073943603521/episodes/16818093073944654777
これからも3ヶ月にひとつを目標に長編新作を書き上げたいと思っていますので、ぜひとも作者フォローなどして頂けると嬉しいです🎶
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